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good night baby(part1)

《ラララ、ラーララ、ララ、(トゥルルル)

 ラララ、ラララ》


 時空間通信を通して船が目的地近くの特定電波をキャッチした。82.5MHz。連合未登録時代の超短波放送だ。


《ララララ、ラララール。(ラリル、ラーリルレ)》


 奇妙にしゃっちょこばった歌声が船内に響き渡る。目的地到着までの長い長い期間この歌声を聞き続けなければならないと考えると、我々人類なら気が狂いそうなところだろうが、この船の乗組員たちにはあまり関係がない。


《ラララ、ラーララ、ララ、(トゥルルル)

 ラララ、ラララ》


 目的地座標の修正が完了し、船の加速度が増した。乗組員の一人が計算機のモニターを、その感覚器官を利用して再確認すると、そのまま船のオートパイロットをオンにした。後は、目の間の恒星に向けて船が速度を上げ続けるのを見守るだけである。


《ララララ、ラララール。

 ダンーダンーダー》


 これから彼らの船がスイングバイに利用するあの恒星は、目的の惑星ではプレアデス・マイアと呼ばれている。しゃっちょこばった歌声のトーンが変わった。


《good night、good night、baby。

 ラララ、ララララー》


 船が恒星の公転方向の後ろに入った。元々の船の速度に恒星の公転速度が加わり、乗組員たちはそれぞれの耐圧カプセルの最終チェックを行なった。


《ララララ、ララララ、

 ララララ、good night》


 プレアデス・マイアの輝く毛髪が彼らの船を一瞬かすめそうになった。彼らの科学力で求める結果を出すためには、多大な電力と同時に恒星の重力を利用した加速度の上昇が必要になる。音楽がリフレインに入り、全体のボリュームを上げた。


《good night、good night、baby。

 ラララ、ララララー》


 増加し続ける速度とマイアが放ち続ける熱とで、彼らの船は今にも壊れかけ・熔けかけているように見えた瞬間、船の外壁に張り巡らされたチューブから幾筋もの雷光が放たれ、船は消えた。しゃっちょこばった歌声の残響だけが、少しの間、その場に取り残された。


《ララララ、ララララ、

 ララララ、good night》


 そうして、その残響も消え去ると、プレアデス・マイアの周囲には、再び、心地良い沈黙がもたらされた。

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