第六話・ステータスの確認
積み上げられた本から気になるものだけをチョイスし、速読で読み終える。
国の事情、文化水準、階級制度、礼儀作法、宗教と神殿・神職、観光スポットとグルメ、当家に勤める人物の略歴、領地の収支、父と母の馴れ初め、男性を手玉にとる方法、などなど本当に多岐に渡る知識を頭に押し込まれた。
うん、もうツッコミは入れない。
次は身体の状態の確認をしよう。
「ステータス、ピクト」
最初の本に載っていた呪文を唱える。
と、同時に目の前にゲームのような半透明のステータス表示画面が現れた。
アレキサンドル・パージェンシー(5歳)レベル1
【職業】公爵令息(嫡男)・転生者
生命力 1057
魔力 2265
体力 1587
知能 3150
精神力 8241
免疫力 1364
攻撃力 物理 1127 魔法 2854
防御力 物理 982 魔法 1633
器用 1099
芸術 525
運 1789
容姿 4589
【称号】
魂魄融合者、武術の達人、知識の探求者、神を面白がらせた者、奇妙なオブジェ製作者、
芸術への冒涜、審美眼だけ持つ者、公爵令嬢(擬)
【魔法適性】
火・風・土・水・雷・氷・時空・神聖・光・闇
【スキル】
空手(四段)、合気道(二段)、剣道(三段)、弓道(練士)、居合道(練士)、
異界の学術(高等学校・進学校)、速読術、女装、流し聞き
まずなんで表記が日本語なんだろう。
HPとかMPとかゲームとかに出てくるものが、ひとつもない。
それに内容的に普通の5歳児と比べていかがなものだろう。
なんで、こんなに精神力が高い。
称号にある『芸術への冒瀆』ってなんだ。
称号の『公爵令嬢(擬)』と『女装』は絶対に意識薄弱の時に行なわれた母上と侍女達によるお遊びが原因だろう!!
「ステータスの確認ですか?」
側で控えていたマーシャが尋ねてくる。
「ああ、これって、説明とか見れないのかな」
この内容を他人に見せるつもりは毛頭ない。
「気になる項目を長押しすると簡単ですが説明が表示されます」
言われたとおり、精神力の数字部分を押してみる。途端、別個のウインドウが開いた。
『精神力・どれだけ精神的に負荷のある話をされてもスルーし、同性にストーカーまがいの視線を送られてもスルーし、少し仲良くなった異性からレズとして告白されてもスルーし、外宇宙の生命のような奇妙なオブジェを作成し、上手く犬ができたと芸術の冒瀆に当たる言葉を吐き、各世界の主神全員を抱腹絶倒させると大幅に伸びる。
普通はだいたい子供で500〜1000、大人で2000程度である』
明らかに私個人に向けられた説明文に机の上に突っ伏した。
会う度にBLの話をしたかつての親友、そちらの気はないと言いながら気になる人ができる度に邪魔しに来た親友の兄、そしてなによりも前世の自分自身が最大の原因じゃないか。
第一、主神を抱腹絶倒させるオブジェなんて作った記憶ないっ!!
強くそう思った瞬間、ステータスボードが強く光り、精神力の値が8241から8341に増え、説明文が追加された。
『得てして本人には自覚がないものである。ああ、やっぱり人間観察って楽しい』
楽しんでんじゃねーよ!ていうか、仕事立て込んでんじゃなかったのかよ。
心からのツッコミを入れると再度画面が光る。
今度は称号に『神にツッコミを入れる者』が生えた。
恐る恐る新しく生えた称号をタップする。
『今、死にそうに忙しいのは転生神たち。僕はこの世界の主神だからそこまでじゃないよ。あ、君が転生する時に対応したのは僕だよ。君が僕の世界に来るって聞いたから、転生神の代わりに対応したんだww』
新しく開かれたウインドウには、明らかに説明文ぽくない言葉が表示された。
説明文に草をはやすな!私物化するなっ!
それにあん時対応したのは転生神じゃなく主神かい!
『あ、称号に一個付け忘れたから付けとくね。それからスキルに『神託(双方向通信機能付き)』も付けておくよ』
説明文が切り替わる。
ステータスボードの内容もついでに内容が増えた。主神が宣言していたスキルと新しい称号として『主神のお気に入り』と『転生神達の希望の星』が増えた。
まずは『主神のお気に入り』を見る。
『主神に気に入られた可哀想な人。運が微妙に精神力が大幅にあがる』
たしかに表示されている運が1789から1822に、精神力が8341から8524へ上がっている。
私の精神力はどこまであがるんだろう。なんか涙が出てきそうだ。
残りは『転生神達の希望の星』。震える指でタップしてみる。
『主神が貴方に興味を持ってる間、我々は仕事に専念することができます。時々でいいので神託で彼とお話しして下さい。転生神だって家族の待つ家に帰りたいんです。久しぶりに会う息子に知らない人が来たと泣かれたり、いらっしゃいと迎えられたり、次はいつ来るのと言われたくないんです。
取り敢えずこの称号の効果は貴方の前世に関わる人間たちの転生後の生活の保障します。して欲しい事があったら対応します。よろしくお願いします。
『『『『『お願いします』』』』』』
神達からの説明文を使った通信内容に目眩を覚えながら私はそっとステータスボードの右上にある×マークをタップし、画面を閉じた。
取り敢えず、転生神達のためにも主神と連絡してあげようと心に決めた。
閉じられるステータスボードから微かに感謝の声が届いたような気がした。
すみません書きためたストックがなくなったので1日置きの更新にさせてください。(今、書いてる分が間に合いませんでした)
次の更新は明日(11月14日)の21時です