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転生者がいっぱい  作者: 白石めぐみ
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第五話・転生者の処遇

複数の大人に守られる形で書庫に連れてこられた私たちは子供用に用意されていた椅子に座らされた。

「どのような書物をご希望されますか?」

座ったまま書庫を見回している私たちに、マーシャの問いかける。

私はさきほど読んだ本のタイトルを伝え、それ以外でこの世界を知ることのできる本を依頼した。サフィールは絵の多い冒険物語を希望する。

「かしこまりました」

返答の一瞬後、私の前には本の山が築き上げられた。気になったのは、世界をめぐる旅人が記した『国による転生者対応の相違』『世界の気候風土』『伝承を旅する』『各国おいしいお店』『国別喜ばれるおいしいお土産』。いや、後ろの2冊はあきらかに違うだろ。これって将来海外視察が入った際には屋敷の侍従・侍女たち分を買ってきてねと無言の威圧だ。

他には……なぜここに『貴族銘鑑』が?当家の領地に対する資料が?父上の保有物だと思われる『公爵夫人の午後 いけない奥様と絶倫な旦那様』という官能小説本が?

ごくりと唾を飲み込むと私は父上保有のお宝(たぶん十八禁の小説)に手を伸ばした。前世ではあまり所持できなかった『それ』へと。

「あらアレキサンドル様には早すぎますね」

私の目の前でにこやかな笑顔のカーチェが本をさらっていく。

「すみません、侍女長。それは奥様より旦那様のベットの枕元に潜ませておくよう指示された本でした」

父上の所有物ですらなかった。それにしても母上……あなたは。

マーシャは本を受け取ると、素早く部屋から出て行く。

仕方ないので一番最初に気になった転生者の扱いの本を開く。やはり文字は問題なく読めそうだ。

まず大雑把な世界地図と、だいたいの国の位置が書かれている。

まず、転生者を優遇している国の筆頭は私が転生したグレンフィア王国。国への報告義務があるが、よほどバカな言動を取らなければ普通の生活が保障されている。また、希望すればグレンフィア王立魔法学院にて無償で学ぶことができる。この学院の無償保証は同盟国の転生者に関しても適用される。

また子供が魂魄希薄者だと判明したら転生神殿から介護魔法の使い手が派遣されるだけでなく、補助として平民の月収並み以上の金額が支給される。

学院に通わせる時も家族への補助が出る上に、卒業後の就職が優遇されるので、お金がない貴族や平民などは生まれた子供が転生者かを嬉々として調べ報告してくる。

逆に転生者に対して排斥する傾向があるのが、バルアランド帝国である。

高位貴族で転生者だと判れば継承権を剥奪される。魂魄希薄者や赤ん坊で転生者と判明した者が育てられる事がなく、10歳以上で転生に目覚めた者は本来の子供を殺したとして犯罪奴隷に落とされる事が多々ある。

帝国の初代帝国皇帝は転生者だった。しかし皇帝となった彼の両親と親戚と幼馴染たちが自分を重用しない彼に不満をもち、皇帝の息子に『あなたの父上は前世の人格によって乗っ取られ殺された。乗っ取った人格は自分と同じ転生者である第二皇子を跡継ぎにし、あなたを排除しようとしている』と吹き込んだ。

結果、第一皇子は自分の父親を弑逆し、弟の第二皇子を処刑してしまう。更には転生者を排除する法律までつくる。

だがここで皮肉なことが起こる。皇帝になった彼のこどもは父親を殺す前に生まれた皇女以外、全員転生者だった。さらには子供を次々に殺された事により、彼の妻の殆どが発狂してしまった。

これを転生者が産まれたことによる呪いとして、転生者への排斥が高まる、という負のスパイラルに陥ってしまう。

現在、帝国は4代目に入っている。建国当時は王国と肩を並べていたが、今の帝国にその力はない。

帝国の同盟国も形ばかりは帝国に従っているが、神の怒りを買わないために、転生者を王国側の親戚に預けたり、王国の貧乏貴族に養子に出したりしている。

(王国の高位貴族に生まれたのは僥倖ということだろうな)

少なくとも殺される事も、家族との間を引き裂かれる事もないだろう。

「カーチェ、この屋敷にどれぐらい転生者っているんだ?」

本から顔を上げ尋ねる。侍女頭は私の机の上にある本の山から書類を引きずり出す。この家に努める人間のリストのようだ。名前と素性・転生者かどうかが記されている。

「ご家族では奥様とパメラ様です。仕えているものでは裏方で16名、表の侍従・侍女では約3名。アレキサンドル様にお目通りしている勤め人ということでしたら、私が転生者です」

「あなたもかいっ!!」

思わずツッコミを入れた私は悪くないと思う。

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