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転生者がいっぱい  作者: 白石めぐみ
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閑話1・息子の目覚め(オパール視点)

わたくしはバージェンシー公爵夫人オパール、転生者です。生前は『女王様』を職業としていました。

15歳の時に前世記憶を取り戻し、紆余曲折の末、前世である『わたくし』が主の人格となっております。

まぁ、男を見極める力の無い『オパール』に現実を教えたら身体を押し付けられたというのが実情です。

わたくしには運命の相手であるスーパーな旦那様と究極に可愛い三人の天使がいます。

旦那様の素晴らしさは語り切れないので割愛します。というよりも旦那様の素晴らしさはわたくしだけが知っていれば良いことでしょう。

こほん、それでは天使達を紹介しましょう。

まずは嫡男であるアレキサンドル。旦那様のお義母様に似た美しい顔立ちに、旦那様ゆずりの射干玉の黒髪と明るい翠の瞳を持つ美少女にも見紛う美少年。

生まれたときに魂魄鑑定士に見て頂いた結果、魂が薄いと判定されました。成長するにつれ、その症状は傍目からも見て取れるほど。移動・食事・排泄など全ての行動を介護魔法で促さなければなりません。

これは5歳で記憶を取り戻す転生者に現れる症状で、5歳の誕生日以降に魂が目覚めれば普通に生活が出来るようになると聞いています。

しかし条件期間で『魂の目覚め』を起こす前に、髪を切ったり怪我をさせるなど身体に変化を加えると、目覚める魂と身体との癒着が崩れ、死に至る事もあります。つい4日前に条件期間に入ったアレキサンドルには信頼のできる侍従・侍女・警備・忍者が24時間体制で見張りがついています。

次は次男のサフィール。素敵で無敵な旦那様をそのまま子供にしたような整った顔に、わたくしと同じ深い蒼の髪と瞳を持つ正統派な美少年。純真無垢で回りの人間の意見に少し振り回されてしまう傾向があります。専属メイドのアプリコットがいた時は良かったのですが少し心配です。

最後に長女のパメラ。わたくしゆずりの可愛い部類の顔に、お義母様ゆずりの淡い金色の髪にわたくしの父ゆずりのアメジストの瞳、本当に宗教画の天使です。

赤ん坊からの転生者のようで、齢3歳の時に見せた「腐腐腐腐腐腐(ふふふふふふ)(笑)」と笑う姿に一抹の不安を感じております。まあ、この程度ならば容姿と教育でなんとかなるでしょう。




ある日、帰ってきた旦那様に執務室へと呼ばれたわたくしは信じられない計画を打ち明けられました。

「それは本当ですの、旦那様?」

わたくしはいつもより低くなる声で詰問する。

執務を行う机の挟んで座っている旦那様・アダマンテは不本意だと眉根に皺を刻みながら「ああ」と返してきた。

「陛下も宰相も近衛騎士団長も!

わたくし達の宝を(間者)を誘き寄せるための餌にしろなどと!!同じ年頃の子を持つ親とは思えませんわ」

決定事項として告げられたのは現在、お付きの侍従・侍女のいないサフィールに帝国との繋がりを疑われているアガネット伯爵が推薦しているものをつけ、泳がせるというもの。

その上その者はサフィールを利用し、未だ魂が目覚めていなアレキサンドルの髪を切ろうとしているらしい。

激昂するわたくしに旦那様は静かに目を閉じる。

「我が家が選ばれたのは条件が合うという理由だけではない。すでにターゲットになっているからだ」

彼はゆっくりと目蓋を開く。その眼底にわたくし以上の怒りをたたえながら、低く心地よい声で話しを続ける。

「帝国はどうやっても王国が欲しいようだ。王国で一番の力を持つ公爵であり陛下の従妹である君を娶っている当家を切り崩したいようだ。

それに帝国は転生者やその予兆である魂魄稀薄者に対する嫌悪もあるのだろう」

コポリ……わたくしの心から深淵に潜む仄暗いものが湧き上がってくる。

「アレキサンドル亡き後に君を暗殺。

そして失意の俺に後添えを送り込むことまで計画に入れているそうだ。

その上でサフィールには帝国の貴族と添わせ、例の『アレキサンドラ』は第二王子へ、パメラは帝国皇帝の妾にするそうだ。なかなか穴だらけの夢物語を女狐(第二王妃)はみているらしい」

楽しく歌うような口調で第二王妃の計画を話す旦那様からわたくしと同じどす黒いオーラが吹き出している。

わたくしたちの傍に控えるブライアンとカーチェからも怒りの波動が溢れている。

「あのような者、第二王妃(メスブタ)で充分です」

「ああ、そうだな」

怒りを目に湛えたまま、口元だけ笑っているわたくし達に「少し宜しいでしょうか?」とカーチェが訊いてくる。

「アレキサンドル様の側には傍目にはマーシャだけがいるような形にした方が敵は油断すると思います。

あの子は生まれた時から忍びとして教育しておりますので、一般の侍従・侍女を複数配置(おく)よりも安全性はあがりましょう」

我が家の暗部を忍者集団に作り替えた彼女の言葉に旦那様は静かに頷き、「任せる」と許可を与えた。

「俺は外の敵を狩ってくるので、家の中は3人の采配で進めてくれ」

旦那様は立ち上がると執務室を出て行く。わたくし達はその背中をカーテシーで見送りました。




結局、家の中に入り込んだ害虫が事を起こす前にアレキサンドルは『目覚め』を迎えた。

意思が宿った彼はなにか武道を修めていたのだろう、美しい立ち姿で我々の前に降り立った。

少し言葉の選び方が悪く、空気を読まない部分があるが頭は良さそうだし、問題はなさそうです。

(あら、そういえばあの子、自分を『私』と言ってましたわね)

女の子なのかしら。口調は男の子のようでしたけど。

まあ、どちらにせよ愛する事にかわりはないわ。

「でもその前に」

わたくしは持っていた扇を控えていた侍従に渡し、バラムチを受け取る。前世から慣れ親しんだ皮の感触に口角が上がる。

「わたくしの仕事をしましょう」

さあ、調教(おしごと)を始めましょう。

お母様は女王様です

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