第二十三話・三下役者たちへの芝居2
すみません、今、書き終わりました。
神官さんと私の素性が揺るぎないものとなった状態となり、追手の皆さんは困惑している。
この馬車のみを止めたという事は、神官さんと親友が乗り込むところを誰かが見張っていたのだろう。親友は自分の足で鞄から這い出て、熊の精巧な着ぐるみのまま抱っこされて乗り込んだとのことだ。
なかなかファンシーだ。
「あ、あの鞄、誘拐犯が持っていたのと一緒だ!!」
追手の一人はそう叫ぶと同時に鞄の蓋を開けひっくり返した。
途端に広がるさまざまな下着。うわぁ、うわぁ、無茶苦茶セクシー路線!!
「きゃあああああ!!」
顔を真っ赤にして叫ぶエリシアさん。私の顔も赤く染まる。
『うわぁ、女の人の下着、ばら撒くなんて鬼畜だね』
主神が呆れたようにボードに文字を浮かばせる。
中から証拠の着ぐるみを取り出したと思った男は色とりどりのセクシーランジェリーに目を白黒させている。
「「失礼します!!」」
メイド服の二人は男の周りに散らばった下着や服を急ぎ鞄の中に入れると蛆虫でも見る視線で追手を蔑む。
「大丈夫ですよ、先生。好奇心で買ってまだ着用してないこと、きっと騎士様達なら解ってくださいます」
いや、それあんたのだろ。エリシアさんに押し付けるな。涙目になってるぞ。
騎士さん達は高速でこくこく頷いていた。
老騎士が「こほん」と一つ咳払いをすると、男のそばにいた騎士が、彼を拘束した。
『女の敵は見事に捕まったから、安心していいよ』
ボードはフヨフヨとエリシアの前に行くと慰める言葉を紡いだ。
「一つ聞いていいかね、その漂っているステータスボードを小さくしたものは何かね?」
老騎士がやっとボードについて尋ねてくれた。
って言うか、もっと早く訊かれるべきじゃないか?存在感、薄すぎじゃないか、主神。
「これは私の称号『主神のお気に入り』とスキル『神託(双方向通信)』のせいで出てる連絡板ですの。
今、出ている言葉は主神様が表示していますの」
『やあ、僕は主神・レーヴェルデルグだよ』
私の言葉に先に聞かされていた3人以外はあんぐりと口を開けている。
少しの沈黙の後、追手の一人、取り押さえられている男がワナワナと怒りに体を震わせ、顔を真っ赤にして「ふざけるなっ!!」と叫んだ。
「主神様だと?!王国のそれも転生者を何人も有している家にそんなもの生まれるものか!!」
男の主張に、残りの追手も「そうだ、そうだ」と同意する。
『僕に【様】をつける癖に僕を否定する?面白いね。それなら、自分のステータスボードを見てみなよ。それが答えだよ』
ああ、ボードの向こうに腹黒笑顔を浮かべた主神が見えるようだ。
男達は訝しみながら自分のステータスを確認した。
「ひいっ」
「これは」
「違うんです」
動揺し出した男たちに、騎士達は何がしたのかと、ボードを見た。
『僕を偽物と言った彼には『主神の怒りを買う者』同調した人間には『主神の嘲り対象』を称号につけただけだよ』
そりゃ、青ざめるわ。
恐らく『帝国の主神教』の教徒であろう彼らにとり、最悪の称号だろう。
「主神様、このボードを始めて見る方がお疑いになるのは仕方ないこと。皆様も主神様を信仰なさっているから、憤ったのです。大目に見て頂けませんか?」
取り敢えず、予定通りに救いの手を差し伸べてやる。
『えー……だって、その男はアレクの先生の下着までばら撒いた女性の敵だよ。あ、彼の称号に『下着ドロボウ』まだ着いちゃった』
楽しんでんなあ、主神。
それに引き換え三下の追手達はガタガタ震え出してる。
騎士達は男達を憐れみながらも、自分達に火の粉がかからないように口を噤んでいる。
「主神様、嫌いになりますわよ」
『はいはい、遊ぶのはこれでやめる。称号も書き変えるよ。『主神の怒りを買う者』は『主神に試練を受けた者』に、『主神の嘲り対象』は『主神と交流を持った者』に、ついでにおまけで『下着ドロボウ』は『やらかし君』に替えてあげるよ』
ボードの宣言通りに書き変わったのか、男達は信仰の目でこちらに祈りを捧げて来た。
おう、効果絶大です。
「私たちが乗り込むのと入れ違いに転生神殿の神官様が降りられました。お持ちのぬいぐるみに『かわいい』と言ったら抱っこもさせてくれまさしたのよ。
人形を操る魔法もできるみたいで、抱っこするように手を出すと手を伸ばしてくださいますの。
もしかして皆様がお探しなのはそちらの方では?
でも、あの方はお一人でしたし….….」
畳み掛けるようにまくし立てた私の言葉に便乗するように、アリエラ….…いやアイリスが追随する。
「そういえば、先生と同じ鞄をお持ちでしたね。クマちゃんも入るから便利だって、仰ってました」
子供二人の言葉に男達さ対象がすでに降りていると誤解し、へなへなとその場に座り込んだ。




