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転生者がいっぱい  作者: 白石めぐみ
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第二十話・夕食後の会議

なんで妾なのに養子なんか入れてるんだろう。

娘と入れ替えるために?なんで?それに入れ替えるにしても派遣されている神官がいるから、すぐにバレるだろ。

「派遣されている神官は?」

少し声色が低くなった父上に、難しい顔をする。

「真面目な女性神官が一人で対応しています。他の人が行っても家の中にすら入れてもらえない状態で仕方なく彼女のみで対応しているようです。

ただその神官から『アリエラに危険が迫ったいます。もし、私の行方がわからなくなり、アリエラの魂が目覚めたとなったら、鑑定をしたください。嫌がったなら、今までの分の資金も含めて引き上げると脅してください』とまでの訴えがあったようです」

アリエラ……だと?

ゲームでは名前のデフォルトがなかった。それなのに彼女が使用しているのと同じ名前の『主人公(ヒロイン)』が生まれてる。それもあきらかに私と同じ転生者として。

彼女(ヒロイン)』は『彼女(親友)』なのか?

そのうえ、その彼女に危険が迫っている。

「母親の実家であるナッソス子爵家は王国では珍しい帝国教義の主神教徒です。転生者に対して良からぬことをする可能性があります」

執事の報告が淡々と続く。

余りにも芳しくない状況に、すぐにでも駆けつけたいのに実行することができない。五歳児でしかない自分の身体が煩わしく感じる。

焦りに拳を握ると、私と同じ考えに至ったパメラが不安そうにこちらを見ていた。

「その()が貴方達の知り合いの可能性は高いですね」

私達が首肯する母上も眉間に皺を寄せた。

「何かが起きる前に手筈を組みたいが、その娘の誕生日は?」

「明日です」

ブライアンの言葉に私とパメラが同時に立ち上がる。

悠長に構えてる暇なんてないじゃないか。

しかし、その肩は使用人達が抑えられた。

「しかし、不思議なのですが、かの家が出している日付と転生神殿に記載されている日付に2日ほどの差異があるのです」

その言葉に私達が不思議そうな顔をすると執事は私見ですがと、前置きした。

「下位の貴族家ですと適当に書類を提出する傾向があります。そういう場合は調査に入った転生神殿の神官が訂正を入れるのですが、彼女は最初から危険を察知し、訂正しなかったのではないでしょうか。

ただそうなると彼女は今日には目覚める可能性があることになります」

それは良かったことになるのだろうか。

沈黙が訪れた部屋に、こちらへ向かってくる足音が響いた。

飛び込んできたのはブライアンに何時も付いている侍従の一人だった。

「皆さま!神官が動きました。『例の少女』を連れてこちらに向かう辻馬車に乗りました」

今度は父上と母上が立ち上がる。

「どうやって誤魔化したのかはわかりませんが、大きなカバンの中に入って屋敷を出ました。巡回の辻馬車に乗る手前でカバンから出て、同時刻に妾の家で騒ぎが起きました。

現在、辻馬車を追手が騎馬で追いかけています。いかがしますか?」

いくら先に距離があるにしても巡回の辻馬車では我が家に着く前に追いつかれる可能性がある。

「差し出がましいかもしれませんが、私とアレキサンドル様で対応させていただけませんか?」

私の肩を抑えていたマーシャの申し出に父上、母上、そしてカーチェが厳しい目を向ける。

「策はあるのですか?」

確認してくるカーチェに、彼女はニッコリ笑う。

「まずは旦那様、公爵家発行の偽造身分証をおねがいします。一つは、公爵家血筋の神官にして、もう一つは今年5歳になった私の妹という形でお願いします。

あと、辻馬車に向けて公爵家の家紋の入った馬車を発車させてください」

その言葉に、カーチェが指示を出す。

そして、こうならなくても発行しようとしていたのか、後は名前と父上のサインだけとなっている書類が執事より差し出された。

「神官の名前は亡き伯母の名ヴィスチェ・ノーヴルズで行こう。少女の名は……アレク、何にする?」

「「アイリス」」

私とパメラの声が重なった。

「親友の名前、愛理だったし」

「アイリスなら、及川さんでなくても、へんじゃないですから」

どうやら妹も同じ考えのようだ。

父上は私達の様子に苦笑すると、書類にサインをし私に手渡した。

「アイリス・オブライエンとヴィスチェ・ノーヴルズの証明書だ。頼むぞ」

「「はい」」

マーシャは証明書を抱えた私を抱き上げた。

「馬車には貴女のスキルで先に辿りつくとして、その後はどうするの?」

母上の問い掛けに、作戦を披露する。

「同じ馬車に私とアレキサンドラ様で乗り込みます。いくら誤魔化したとは言え、アリエラ様は寝巻きでしょうから、子供用の侍女服を着せます。

その上で、後見役の付き添いのもと急遽アレキサンドラ様が王都に訪れた、という状況を作ります。

アレキサンドル様、貴女の演技に少女達の命運がかかってますので、宜しくお願いします」

「お、おう」

女装は嫌だけど、そうも言ってられないな。了承した私は、マーシャの服をしっかり握った。

「では迎えの馬車に誰も乗っていないのは不自然か。俺たちは家族で迎えに出よう」

おい、父上!完璧に状況楽しんでるだろ!!

母上も「うふふ」と笑わない!!

弟!!妹!!楽しそうに「「おー!!」」と拳を上げない!!

文句を言おうとした声はマーシャのスキルが起こした暴風の中に消えていった。

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