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転生者がいっぱい  作者: 白石めぐみ
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第十六話・乙女ゲームとの相違5

「あらあら、当家の部分は殆どアレキサンドルにフラグが折られてしまったわね」

コロコロと楽しそうに笑う母に周りは「そうですねぇ」と賛同する。

「あ、あの……あ、ぶひ」

戸惑いを含んだ声を上げた(ジョルジオ)は向けられた視線に鳴き声に替えた。

「いいわ、キャリーの情報を話す間は人間語を話す事を許します」

威厳ある言葉に今並みに尻尾を振りながら、ジョルジオは話し始めた。

「ありがとうございます、御主人様(レイディ)

先程卑しい私めに与えて頂いたご教示の際に報告した通り、キャリーは私の恋人ではありません。

話をした時、面白いことを言っていたので、アガネット伯の作戦に利用しただけです」

母上の目が静かに細めらると豚は嬉しそうに身悶えながら先を繋げる。

「『もうすぐ自分は公爵夫人になる』や『アレではサフィールを虐めてたけど、私はそんなバカな事をせずに私の思い通りにしてみせる』など……後は『このために生を受けたの』と言ってました」

あ、じゃあ彼女も転生者なのか?でも、同じ時期に死んだのに生まれ変わるのに10年もの差異がでるものだろうか?

「母上、同じ時期ぐらいに死んだのに、生まれる時期に差異が生じる事例ってあるんですか?」

私の問いに「稀にあるわね」と軽く答えた。

「神にとって人の時の流れってあやふやなの。

あとは誰かを中心に転生の人間構図を作る際に関係ない人物を影響のない……物語で言うなら脇役に転生させたり、物語の展開に合わせて先に転生させる事案もあるわ。

不用品(キャリー)』が貴方たちの記憶している乙女ゲームを知っているなら、後者の方かしら……確かめておいた方が無難かしら」

母上は一つうなづき、ブライアンに視線を向けた。

「私の調教部屋(仕事場)から『キャリー(あの女)』連れてきてちょうだい。うるさく暴れたら体力のある侍従で担いで運んでも構わないわ」

静かに礼をとる執事は数人を連れて部屋を出た。しばらくしてギーギーと響く金切り声が、遠くから近づいてきた。

怖いのかパメラが、ギューっと私の腕を掴んだ。

扉が開かれ簀巻きにされた女が担がれて部屋に運び込まれた。

「この人非人!!私は神様に選ばられてこの世界に来たのよっ!公爵夫人になって、サフィールを私の子供として育てるの!!あの糞ゲーみたいなアレキサンドラなんて作らないっ!!アレキサンドルが生きてるんなら領地のアレキサンドラを殺せば辻褄が合う!!そうすれば全員幸せなっひぶ!!!」

うるさく叫ぶその顔に母上の強烈な扇ビンタが炸裂する。あまりの勢いに女はもんどりうって転がっていった。

母上は転がっていった女の側にしゃがむと、その前髪を掴み、キャリーの頭を持ちあげる。痛がり呻いているその様子に、母上はこれ以上にないぐらい綺麗な笑顔を作った。

「まぁだ、5歳の子供を殺すなんて、どちらが人非人なのかしらぁ?」

正論であるのだが、母上のやり方がヤクザ映画の若頭のようで、どちらが悪人なのかわからなくなる。

ぎゅーっ!

パメラに捕まっている反対側の腕に誰かが抱きつく。見るといつの間に起きてきたのか、サフィールが怯えた視線を私に向けていた。

大丈夫だと頭を撫でたいのだが、両手に天使で撫でれない。

仕方ないのでおでこにキスをすると、少し驚いた後、にぱぁっと笑った。パメラも羨ましそうにしてたので同じようにキスをすると、こちらも満開の笑顔で答えてくれた。

幸せな光景の向こうではヤクザも真っ青な迫力の母上が美しい顔を、薄汚れた顔に近づけた。

「第一、『選ばられて転生して特別』ねぇ?

ここに(あなた)以外に何人転生者がいるかわかって言っているのかしらぁ?」

母上の呆きれを含んだ物言いに、キャリーは探るようにぐるりと周りを見て、その視線を私に固定する。

「ああああああああ!!」

何、何だ?

女の目が酔いしれたように、高潮する。

ゾクゾクと背筋に嫌な悪寒が走る。

私はこの目を知ってる。この目は。

「やっぱり、運命なんだわ!公爵様はカッコいいけど年上すぎるもの!!貴方にまとわりついていたあの糞女(及川愛理)その兄貴(及川歩夢)も貴方が迷惑してるし、運命じゃないって言ってたけど、やっぱり巡り合う運命だったのよ!貴方と結婚して公爵夫人になればいいんだわ!!」

狂気に満ちた手紙を何度も寄越して、あまりに悪質ということで接近禁止措置を出してもらった……

「こいつ、前世の『私』の『ストーカー2号』だ!」

恐怖に満ちた私の叫びに、侍従たちが更に強固に女を押さえこんだ。

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