第十一話・彼女がやっていた乙女ゲーム
私とパメラが知っているゲームの内容を説明するため私たちはサロンに場所を移した。
「それではまず主人公の生い立ちから教えてくれるかしら?」
流石にパッケージと流し聴きしかしていない私では答えられない。
「名前はデフォルトのものはなく、及川さんは『アリエラ』ってつけてました。ブリメイラ伯爵家の庶子のはずです」
パメラの言葉にいつのまにか現れたブライアンが深く頷く。
「ブリメイラ伯爵家は前代の時代に、寄親から借金の一部免除と引き換えに年のいったコブ付きの侯爵家出身の妻を跡取りの正妻とするように押し付けられていたはずです。
跡取りは家族を捨てることも婚約者と別れることもできず、コブ付きを正妻に子爵令嬢だった婚約者を妾にしたと聞いております」
あれ?じゃあ、ヒロインは両親共に貴族じゃないか。
「子爵令嬢を貧乏伯爵家の跡取りがよく妾にできたものね」
確かに普通に令嬢として育ったのに下位貴族の妾にする親などいないだろう。第一、家格を落とすようなスキャンダルだ。
「侯爵家からの要請があったようです。完璧に別れさせようとすると逃亡の恐れと結婚前に侯爵家の無理強いが露呈する恐れがありましたので」
その言葉で母上の目がすぅっと細められた。
「もしかして侯爵家って雌豚の手先のランジェーン?それとも裏切り者のワグレットかしら」
「コブ付きは現ランジェーン侯爵の姉です。コブの親は帝国の男爵家の子息で兄・妹で父親が違い、両方とも子供が生まれる前に亡くなってます。
結婚もせずに生んだ子供は体が悪いとので、伯爵家に嫁ぐ際に伯爵の実子とさせられたそうです」
濃いいな。実際の貴族社会って、昼ドラ並みに濃い。それに命の軽さにドン引きする。
「子爵令嬢と伯爵の間に子供がいるか調べて」
「かしこまりました。それぞれの家の現状と共に夕食後にご報告いたします」
ブライアンが答えると、その場にいた侍従の半数がふっと消える。
なんですか?うちの侍従は忍者ですか?
「さあ、今度は攻略対象を教えて?」
母上は気にせずにパメラに話の先を求めた。
パメラの言葉を纏めると公式の攻略対象は6人+全ルート攻略後の隠しキャラ2人。
一人目は第2王子でありながら第一王位継承権を持つカルロス・プライオリ・グレンフィア。
母親は帝国皇帝の妹で、王国には無理矢理嫁いできたこともあり、両親の仲は冷え込んでいる。婚約者は王国で絶大な力を持つパージェンシー家の令嬢・アレキサンドラ。彼女の完璧な立ち居振る舞いにコンプレックスがある。
キラキラ王子様系らしい。
二人目は宰相の次男で跡取りのジェイムス・オーガニック。
兄よりも秀でてしまったため、次男なのに跡取り指名をされたため兄との仲が悪い。婚約者はダナム侯爵令嬢フィオラ。気位が高く、下位貴族を見下している。彼はそんな彼女に辟易としている。
クールなインテリ系だそうな。
三人目は公爵家の跡取りとして引き取られた、サフィール・パージェンシー。
公爵家に女性しか生まれなかったために公爵家の血縁から引き取られたことになっているが本当は公爵の庶子。パージェンシー家に嫁いできた後妻と折り合いが悪い。更に異母姉であるアレキサンドラと比べられ、自分の能力の無さを嘆いている。婚約者はおらず、ライバル令嬢はアレキサンドラになる。
ゲームの中ではネクラメガネからの素顔美少年。
四人目は近衛衛騎士団長の長男クロード・バレンアッティ。
カルロス王子のお目付役で幼馴染み。父親からの命令とはいえ小さな頃からの友達を見張る立場に悩んでいる。婚約者は伯爵令嬢・リリアナ。大人しく自分を出さない彼女との間に、見えない壁を感じている。
誰もが思い描くテンプレ騎士様だ。
五人目は城騎士団長の長男でマクシミリアン・グランド。
彼もカルロスの幼馴染みだがクロードと違い悪友といった感じだ。貴族社会の中では珍しく粗野でおり、またカルロスに従順で彼に言われて暴力を振るう事がある。婚約者はクロードの妹のエカテリーナ。彼女は女性王族に仕える近衛騎士で、日頃からマクシミリアンの行動に文句を言っている。
ワイルド系の剣士枠らしい。
六人目は子爵家の長男でミシェイル・バーネット。
魔術が得意で卒業後は魔術師団に就職する予定。可愛らしさを武器に周りを振り回していて、高位貴族の令嬢を嫌っている癖に貢がせている。
腹黒天使といったところか。
って、アレキサンドラが男の私になってる時点で二人ほど、内容に齟齬が生じているんだが。
最初からこのゲーム、破綻してないか?




