第02話 第一異世界人、発見
「おーい」
さて、どうしたものかと思っていた矢先。
目の前にバンダナを巻いた海賊風の男の姿が見えてきた。
さすがにアイパッチまではしていないが。
第一異世界人発見。
現実世界の人間と変わらぬ姿で、こちらへ走ってくる。
その走ってくる姿を見て、オレは少し安堵する。
「お前ここで何やってんだ?」
「えーと……、少し人生について考えていました」
さすがにこの返答は想定になかったのか、男は少し困惑するが顔色を変えず言葉を続けた。
「???
まあいい、少し手伝ってほしいことがあるんだ。欠員が出てしまってな……
報酬もきちんと払うが、どうだろうか」
オレは見知らぬこの世界に転移してしまい、右も左もわからない状況だ。
少しでも情報が欲しい。
なので、この男のお願いを聞くことにした。
「わかった、承知しました。こちらもお金が欲しい、手伝う分には構いません。
ただ……、この近くに鏡ってあります?」
「???
ああ、作業小屋の中にあることはあるが……。一体何に使うんだ?」
「……自分の外見を確認したいんです」
「???
外見って、お前普通の人間だろ?
服装だってそこらの町人と同じような格好してるじゃないか。
……まあいい、小屋まで案内する。作業の内容はそこで話す」
「わかりました」
どうやらオレは会話の内容から察するに、いわゆる市井のどこにでもいるような人間のようだ。
「あ、そういえば名前がまだだったな。俺はドミンゴ、今から案内する作業に従事してる者のまとめ役をやっている」
名前。そうだ名前だ。
どうやらここはファンタジー風の世界みたいなので、自分の名前を言っておくのが安牌か。
「オレの名前はケント、ケントっていいます」
「ケントというのか。いい名前だな」
(会う人みんなにそう言っているんだろうな……)
しかし、このドミンゴという男。
いかにも海賊という出で立ちで、強面な印象も受けるが話をしてみればかなり気さくである。
異世界で初めて会った人が、このドミンゴという男で良かった。
さて、案内された小屋が見えてきた。