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第3話:ミラス族の少女リリル

 リアルな死を放つ小鬼の死体から逃げるように前をいく銀髪の少女の背を追い、改めて少女を見ると、先ほどからいきなり襲われたりとんでもない美少女に見惚れたりと余裕がなかったが、目の前の少女は可愛い以上に普段――現代の日本では見られないような恰好をしていることに気が付く。


 小鬼(そして自分に対してもだが)に対して使用した剣だけではなく、身に着けている服などを見ても所謂ファンタジーの旅人のような恰好をしており、少女が先を歩く道も現代の日本にあるアスファルトの道路のようなものではなく、日本では見慣れない木々ばかりの森の道だ。


 本来であればこれは夢だと思ってしまうところだが、先ほどの真剣な少女の顔と小鬼から感じた死がその自らの考えを否定してくる。普段のニート生活で読むラノベなどで異世界転生ものは愛読していた啓吾ではあったが、いざ自身が(まだ確定した訳ではないが)日常から切り離され非日常を叩きつけられると、不安が身を震わし、現時点での唯一の頼りとも言える目の前の少女に抱き着きたい衝動にかられる。


 「ちょっと!! また近づいて変なことしようとしてるんじゃないんでしょうね? それに臭いからもう少し離れてよ」

 「ち、違うって! というか辛辣すぎるッ!? これでもうちの飼い犬が嬉しそうに毎日嗅いでくれるナイススメル持ちなんだぞ!」

 「貴方の普段の匂いなんか知らないわよ! じゃなくて、ゴブリンの血が臭いから言ってるのよ」


 異世界のような世界観に変なテンションになっていた啓吾だが、少女に言われてみると自分がとんでもない匂いを発していることに気が付いた。


 「確かにこりゃ酷い。どこかでこの汚れを落としたいが、なぁ、町までどれくらいかかるんだ? というか見たことない木々ばかりなんだけどここはどこなんだ? 」

 「文句ばっかり言う男ね、まったく! はぁ……クエストの帰りにとんでもない拾いものしちゃったもんだわ……自分の性格が嫌になるなぁ……」


 肩を落とし、溜息をつきながら己を呪うように少女が銀髪を左右に振る。


 「あー、いや、さっきから色々世話になった上に変なことしたり注文ばっかりつけて悪かった。でも俺も布団に入ったと思ったらこんな状況で混乱してるんだよ……というか、詳しい話は町にいってからしてもらったらいいんだけどさ、でも最低限確認したい事もあるし歩きながらでいいんで少しだけでも教えてもらえないか?」

 「まぁ私もそうだったから他人の事言えないけどさ、でも確かにこんな状況で何も聞かずついて来いは可哀そうかな。分かったわよ、まずは自己紹介からね。」


 立ち止まり、軽やかにこちらに振り返りながら腰に手を当てる。


 「私の名前はリリル、種族はミラス族よ。何が聞きたいの? 詳しい話が必要そうな話は町に行ってからだからね」


 (しっかし本当に可愛いな、それに一般的に考えて日本……いや地球での人種でこういった外見の人がいるんだろうか、というか名前も変だろ? 展開としては異世界転生……いや異世界転移ってヤツか? というかミラス族って何だ……?)


 改めてリリルの地球人離れした可愛さに戸惑いつつ、まず確認したいことを聞いてみる。


 「ここは、地球なのか?」


 リリルの碧眼が真っすぐに自分を射抜く。


 「……いいえ、ここは貴方のいう地球ではないわ、そしてさっきから言っているように(ゲンジツ)よ。もっとも、本当にこの世界は何なのかは私もよく分からないんだけどね。(ゲンジツ)については町についてから詳しく話すからね」


 伏し目がちに答えながら、どこか自嘲気味に答える。


 「分かった、(ゲンジツ)についてはその町に行ってから聞かせてくれ。じゃあ、地球じゃないっていうが、リリル――は名前からして地球人ぽい名前ではないし、外見も地球人とはどこか違うと思うんだけど地球人なのか? なんで地球の事を知っているんだ?」

 「それは私も貴方と同じ、ある日突然ここに飛ばされてきたからよ。そして名前はちゃんと地球人のものもあるけどこれはさっきも言ったようにここでは言っちゃダメだから教えられないわ。リリルって名前はこの世界で新しく『名付け』を行ってつけたのよ。それと外見が地球人ぽくないのはこれもこの世界にやってきたのが原因だと思うわ。ほら、これ」


 自分の質問の回答になっているようで、よく分からないリリルの回答に首をかしげながら聞いていた啓吾に、リリルが帽子とマントをとって『それ』を見せる。地球人にあるはずがなく、しかし地球人の一定の男子が焦がれてやまないものを――。


 「尻尾と……耳……?」


 呆然と呟きながら、銀髪碧眼の少女、リリルをじっと見つめる。


 「リリル……」

 「な、なによ……?」


 「その尻尾で俺のほっぺを試しにぶってくれないか?」


 『ゴッ!!』


 しっぽによる乾いた音ではなく、全力の右ストレートによる鈍い音が森に響いた。

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