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抱きついて赤ちゃんになった朝食後

バブみを感じなくもないので、読まなくても大丈夫です。


あと、10,000PVありがとうごさいます。

 いただきまして、トリィです。


 寮食は薄味ではありましたが、普通に満足できる料理でした。

 朝からこれだけしっかりした料理が食べれるのも、実際贅沢なんですが、なんてったって王立の施設ですからね。遠慮なくいかなければ罰当たりってもんです。


「ふふっ、トリィちゃんゆっくり食べなよ。ご飯は逃げないからさ」


「はぐっ、ん、……皆さんの食べるのが早すぎなんですよ!」


「んー、ごめんね。急かしちゃったかな?」


 そう言って私を待ってくれているのはニアちゃんだけです。

 食堂でニアちゃんと合流して、ご飯を食べ始めたのは良いんですが、三人とも10分かからずに食べ終わってしまって、決して量が多い食事ではありませんでしたが少しびっくりしてしまいました。

 女の体になって口が小さくなってしまったのか、私はどうしても食べるのがゆっくりになってしまってて、食べ終わるのにかれこれ20分はかかっています。


 アイリスとアレクは準備をするために一足早く食堂を出ていきましたが、ニアちゃんは既に準備オッケーみたいなので残ってくれている訳です。


「…にしても入学式かぁ。僕、長い話とか苦手なんだよねぇ」


「確かに、今年度は王族の方がご入学されるはずですし、例年省略されるところもちゃんとやるらしいですね」


「例年て…。トリィちゃん、初めてなんでしょ?何だってそんな詳しいのさ」


「ふふふ……、カンナさんに聞きました!」


 たぶんゲームだった頃にちゃんとプロローグを見てれば知ってたんでしょうが、あいにく私はプロローグをスキップする派なので。

 さらに言えば、説明書も基本操作以外は見ません。なので前世でやったゲームの数々は、システム的な部分は覚えていても、ストーリーはあんまり頭に入ってなかったりして、そういうプレイスタイルだったので、友達にも不思議がられることもありました。


 さて、やっとこさ最後のスープを飲みきり、食事を終えたので一度部屋に帰るとします。

 ここで気づいたのですが、ニアちゃんは向かいの三人部屋だったようです。アレクと同部屋っぽいですが、ニアちゃんはパッと見女の子なので、よからぬことが起きるのではと心配したのですが、そこは大丈夫だとニアちゃんが強調するので、今はその言葉を信じておきます。


「でも、何かされたら遠慮なく私の部屋に逃げ込んで下さいね!」


「あ、ありがとう、トリィちゃん。でも、正直僕はトリィちゃんの方が心配なんだけどな……」


 ?どういうことでしょうか。

 まあ、とりあえず今は良いでしょう。


 ニアちゃんが部屋に入るのを見届けてから、私も自室のドアノブに手をかけ、扉を開けます。そして、ふと左に視線を向けると──


「…あ……」


 白、艶やかな肌色に輝く白色が目に入って、私はたまらず目を瞑り部屋を出ようとします。


「!ご、ごめんなさい、ごめんなさい!」


 一瞬真っ白になった頭に謝罪の二文字が浮かび、とにかく謝りながら扉を閉めようとしたら、フッと弱い風が吹いた気がしたあと、ドアノブを握る右手が強く引っ張られました。


「ひゃっ!」


 思わず開いた視界には、輝く白色に包まれた瑞々しく実る肌色がいっぱいに映っていて、体勢が崩れている私がそこに飛び込むのは確定事項でした。


「わぷっ!?」


「んっ」


 ふにゃりと形を変え私を受け止めたソレは、不思議な甘い匂いがして、パニクった脳内を静めていきます。

 ソレの中に私を抱き込むように。後頭部に腕が回され、さらに押し付けられます。顔には布のさらさらとした感触と、少し湿り気を帯びて肌に吸い付くような柔らかい感触が入り交じり、その匂いと共に私の頭をまるで溶かしていくようです。

 髪をが撫でられるのを感じながら、もはや抵抗を忘れ呆けた私は、しかし次に投げ掛けられた言葉て急速に覚醒したのです。


「んふ、……トリィのえっち」


「!」


 ななな、何をしてるんですか私はっ!?こんな、変態みたいな事、アイリスの胸に顔を突っ込んで……。

 し、しかも勝手に下着姿も見ちゃって……。


 というかこれ、息ができません!

 いや、思いっきり吸えばたぶん大丈夫なんですが、それをするとこの甘い匂いに脳みそが溶かされてしまいます!


「んっ、ふ。もう、トリィったら、息荒いよ?」


 息苦しくて、乱れた呼吸を指摘され、どうしようもない羞恥が私を襲ってきました。

 頭に血が上ってきて、くらくらしてきます。


「んふふ、トリィ、赤ちゃんみたいだね……。ほら、よしよし」


「うむぅぅぅ……」


 あぁぁ、溶けちゃうぅ……。


 何か考えようとすると、温かい手が髪を撫で、その思考が霧散していって、真っ白になった頭のなかに、ふわふわする甘い匂いが入ってきます。

 顔に触れる柔らかい感触の奥から、温かい鼓動を感じて、体中の力が抜けていきます。


 まるで、母親に甘える赤ちゃんのように、アイリスに寄りかかって、その温かさに包まれながら、私の意識はぼんやりとした白い靄に包まれていきました。



 ◇◇◇



 ハッとして、トリィです。


 うとうとしてしまったのでしょうか、ベッドに腰かけた状態で意識がスッキリしました。朝ごはんを食べてお腹が膨れたからなんでしょうか、まるで小さな子供のような自分を少し嫌悪してしまいました。


「よし、そろそろ行こっか、トリィ」


「あっ、はい」


 アイリスは既に制服を身に纏っていました。左胸には平民身分を示す銀のバッヂが取り付けられています。

 にしても、アイリスはどんな格好しても似合いますね。私は自分から見ても、制服に着られているとしか思えないのに…、少し身長を分けてもらっても、罰は当たらないと思います。


 ────


 さて、寮から出て目指すのは、正門から見えた校舎の裏側。屋内修練場、前世で言うところの体育館です。

 昨日よりも、はるかに配置される警護の騎士が多いので、誘導に沿って移動する新入生達の顔はガッチガチです。かくいう私も、平然そうなアイリスが隣に居なければ彼らと同じ顔をしていたことでしょう。


「……所詮は腑抜け、か」


「?アイリス、どうしたんですか?」


「んーん、何でもないよ、トリィ」


 煌めく鎧を身に纏う騎士たちに、アイリスが何やら溢した気がしましたが、どうしたんでしょうか。


 あ、これは憧れですね!きっとアイリスは騎士団に憧れてるから、剣を習っているのでしょう。

 ふふっ、推理が冴え渡るトリィですよ…!


 さて、修練場までの道のりはそう長くないのですが、実はまだ到着できていないのです。なぜかというと、私たちの前に行列ができているから。というのもあるんですが──


 ──ガラガラガラッ


「!ん、トリィ」


 アイリスが私を抱き締めるよう引き寄せる理由が、この行列の遅延を引き起こしているのです。

 その理由とはズバリ、貴族さまが乗った馬車のことです。

 平民の行列など眼中に無いが如く、十分な広さの無い道に我が物顔で馬車を通し、順番など知らぬと修練場に入ろうとした平民の新入生を押し退け、入り口の前に態々馬車を停めた後、ゆっくりと修練場に入っていくのです。


 実は貴族さまには別の入り口へ誘導されているはずなんですが、先程のお方のように、平民に対して嫌がらせをしたい貴族さまが迷惑行為を行っているのです。


「……はぁ、低脳な貴族さまは、ホントに毎日が愉しそうだね」


「て、低脳って…」


「低脳でしょ?今年は王族の方がいらっしゃるのに、態々覚えが悪くなるような振る舞いをするんだから」


 な、なるほど。確かに言われてみれば納得ですね。そう思うと少し苛立ちも収まる気がします。


 そんなこんなで、新入生が全員修練場に入るのは随分と遅くになってしまいました。


 アレクとニアちゃんを見つけ、誘導に従って列を作るとき、なぜか真剣な顔をしたアイリスに、


「トリィ、式中はニアから絶対離れないでね」


 と、言われたんですが、どういうことでしょうか。

 ニアのnear(近く)って、小粋な駄洒落で私の緊張を解そうってことですかね?




 え、何も起きないですよね?

ありがとうごさいました。

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