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ディサイデッド~我が道を進むファンタジー物語~  作者: スパイラル
自分がどうなるべきか
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道中

リジェイル導師の授業は臨時というだけあって他の導師たちと比べるとたどたどしい説明ではあった。陽義はリジェイルと共に生活しているのでリジェイルに魔法のことを個人的に教えてもらっているのだがそのときはわかりやすいのだ。マンツーマンと複数人に教えるのはやはり違うってことなのだろう。そもそも他の導師たちはリジェイルよりも二十から三十くらい年上なので教え方を比べる事がいけないのかもしれない。

それよりも陽義はリジェイル導師の授業を受けている人数が異様に少ないことに驚いた。陽義とディルを含めても七人ほどしか受けていない。リジェイル導師は年齢はともかく魔法の実力についてはこの国でも屈指だと聞かされているからだ。それに男は陽義達の二人だけしかいない。女子たちについても他の導師よりも若くイケメンなリジェイル導師目当てといった感じで参加している。


(まさか俺と繋がりがあるから受けなかったのかな?すいませんリジェイル導師)


そんな可能性にいきつき心の中でリジェイルに対して謝罪する。陽義のそんな思いをよそに授業は進んでいた。


「みんなも知っての通り精神魔法には術者の心が魔法の良し悪しに大きく関係する。その心と魔力を繋げるのが詠唱のときに使うルーン字なのだが、その心と魔力を集中が解かれるまで常に繋ぎ続けてくれるルーン字が存在する・・・・。」


前半の授業内容は既にリジェイル導師から教わっているものだった。リジェイル導師は確か精神魔力接続状態と呼んでいた状態だ。この状態だと一部の例外を除く魔法の詠唱がとても短く済むらしい。陽義も練習してはいるが二回魔法を唱えた時点で集中力が切れこの状態が解除されてしまう。リジェイル導師によれば二連続で唱ええるだけでもすごい事らしいが、導師自身はこの状態を切らすことなく数時間持つらしいので陽義に言わせれば全然である。

後半は魔法の授業というよりも魔法使いの将来についての話であった。


「君たちは将来魔法をある程度極めた後、人である以上は職を得なければならない。多くの人は宮廷魔術師や魔法ギルドの導師なんかを目指すだろうけど他にもいろいろ道があることもわかってもらいたい・・・・」


講義が終わりリジェイル導師や女子たちが教室を出ていくなか陽義は少し気が滅入っていた。将来の事なんて何も考えていなかった。


「どうした?帰らねえのか?」


そんな陽義を不思議そうに見ていたディルが声をかける。


「ディルは将来の事って何か考えているのか?」


思わずそんな言葉が出てきてしまった。


「んなもん家を出られればなんでもいいさ。だが宮廷魔術師って響きはいいもんだねえ」


どうやらあまり深くは考えていないようだ。だが陽義もディルとはおそらく違う理由だが家を出なければならない。いつまでもリジェイル導師たちに甘えているわけにはいかなかった。


「そうか……」


「そんなもん今うじうじ考えたってしょうがねえだろ。そんなことよりも早く行かなくていいのかい?このままだとあの気の強そうな娘にどやされるんじゃないか?」


「あ……」


いつの間にか結構時間がたっていた。このままだとミーリアという娘にどやされるだけじゃなくオーギンとの約束に遅れてしまう。


「すまない。先に帰ってるな」


急いで荷物をかたずけてディルにそう声をかけてから教室を出た。リジェイル導師がいた私室に向かうとミーリアが少し不機嫌そうに待っていた。


「あなた遅くない?リジェイルさんがこの部屋を出ていってから既に十数分経っているんだけど」


「すまない。少し考え事をして遅くなった。リジェイル導師はもう次の予定に向かったのか……」


リジェイル導師相変わらず忙しいんだな。心の中で苦笑する。さっきの授業でリジェイル導師本人が言っていたのだがリジェイル導師は宮廷魔術師の内の一人らしい。


「……じゃあいこうか」


「ええ、わかったわ」


魔法ギルドを後にしてオーギンとの待ち合わせ場所である稽古場へ向かう。


「オーギンさんと何の約束をしているの?」


「剣技と体技の稽古だよ。君はオーギンと知り合いなのかい?」


質問の仕方がリジェイルに似てきた陽義である。


「ミレル師匠のところにも遊びに来たりするの。それよりも……」


ミーリアは少し意外そうな顔をして、


「あなた魔法使いなのに剣技や体技なんて教わってるのね」


「魔法使いが体を鍛えるのっておかしいのかな?」


ミーリアは頷きながらも見直したというような表情だ。


「精神魔法使いなんてそういうことをする人たちをばかにしてると思っていたから」


「まあほとんどが元貴族の集まりだからな」


彼らはたしかに力仕事なんかは平民の仕事だと考えていてもおかしくはない。同じ人間であるのに情けないと陽義は思う。


「あなたは元貴族じゃないの?」


「俺はリジェイル導師に……引き取られた孤児だからね」


答えながら少し冷や冷やしていた。陽義が吸血鬼であることは隠さなければならない。そしてリジェイル導師はこの娘に陽義のことを話したと言っていたが、どんな風に伝えたのかはわからないのでボロが出てないか不安だった。


「へぇ……そうだったの。ごめんなさい」


少し悲しげな表情になりながらミーリアは答える。どうやらボロは出ていなかったようだ。憐れまれているのかなと思ったがどうやらそんな感じではないらしい。これ以上危険な会話が続くと怖いので陽義は話題を変えた。


「気にしてないよ。そういえばミレルさんのことを師匠って呼んでたね。なぜだい?」


「普通にミレルさんって呼ぶときもあるけど、私が個人的に精霊魔法の使い方を教えてもらっているの。ある程度なら使えるようになったのよ」


ミーリアは得意げであった。陽義は精霊魔法についてはそんなに詳しくなかったが、自分と同じ年くらいなのにある程度操れるのは凄いのではないかと思った。


「そういえば君、歳いくつ?」


「女性に年齢聞くのは失礼じゃない?」


「別に失礼って年齢じゃないだろ。ふと思っただけだから答えたくなければ答えなくてもいいよ」


「……十三よ」


「一つ年上か」


その後は言い争いのようになったが会話が途切れることはなかった。初めはほとんど知らない女子と二人きりということでとても気まずい空気になるのではないかと危惧していた陽義であったが、意外にもミーリアが話題を振ってきていたので退屈はせずに済みホッとした。それにしても会話の中でミーリアがオーギンとの稽古に参加したいと言ってきたのには驚いた。そうこうしているうちに約束の場所までたどり着く。なんとか時間には間に合ったがいつもは陽義よりも後に来るオーギンが待っていた。


「よお、遅かったじゃねえか陽義。あれ?ミーリアはなんでまたこんな所にいるんだ?」


「ええっと」


「オーギンさんが陽義君に特別に稽古しているときいて私も参加したいなと思うのですがよろしいでしょうか?」


陽義が答えあぐねているとミーリアが勝手に話を進めた。


「それは別に構わねえが……。どこでそれを知ったんだ?」


「自分の付き添いだったので自分が話しました……」


陽義は言いながら“しまった”と思った。オーギンとの稽古はガチの斬り合いなのである。オーギンはどうかわからないが陽義は全力でオーギンを斬りにいっている。それでも攻撃が当たったのは数えるだけだ。しかしオーギンの攻撃は陽義に何度も当たっているのだ。不死王の性質である自動再生があるからそれ程気にはしていなかったのだが、他の人に見られるのはまずいのである。

(どうにかしなければ!)


「……オーギン、ちょっとこっちに来てください」


 陽義は慌ててオーギンをミーリアから引きはがすように呼び出した。


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