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ディサイデッド~我が道を進むファンタジー物語~  作者: スパイラル
始まりの事件
6/74

決断

 その少年はゆっくりとリジェイルたちの方に体を向ける。

 「っ……!」

 リジェイルたちは目の前にいるその少年を驚きに包まれながら凝視していた。青白い肌、赤い瞳、そして口からは短い二本の牙が生えている。そんな特徴を持った存在などリジェイルは一つしか知らなかった。

 「吸血鬼だ」

 リジェイルはうめき、警戒する。目の前にいるまだ幼い子どもはリジェイルが知る中で一番危険だと言われている不死者(アンデット)なのだ。

 (なぜこんなところに……。なぜこんな子どもが……)

 リジェイルがそんなことを考えていると後ろにいたスティードとオーギンがリジェイルを押しのけて前へ出る。ミレルは息をのんで呆然としていた。ラティーヌも悲痛な顔でその子を見ている。

 「倒すべきか?」

 オーギンがやや戸惑い気味に尋ねる。

 「待ってくれ。ここで何が起きたかは知りたい。それに吸血鬼だ。油断はできないよ」

 リジェイルが即座に返答する。リジェイルが言った言葉は本心だがお告げの事を考えると慎重にならざるを得なかった。吸血鬼は理性のある不死者(アンデット)だ。話しが通じない相手ではない。しかし少年はこちらを見つけるなりいきなり襲い掛かってきた。

 「ぐあぁぁぁぁぁ!」

 奇声を上げながら先頭の二人に向かって牙をたてる。吸血する気だ!

 「吸血にだけは当たってはいけない!」

 リジェイルは慌てて声を上げる、直接吸血されるとされた側も吸血鬼にされてしまうのだ。しかしオーギンもスティードも肉弾戦は得意である。吸血鬼になってスピードが上がっているとはいえ子どもの攻撃にあたるほど弱くはない。余裕をもって攻撃をかわすとオーギンが剣も使わず蹴り飛ばした。

 「がああああ!」

 「相手は子どもです。どうかやりすぎないようにしてください」

 ラティーヌが祈るように言う。

 「そういわれてもなあ」

 「難しい注文ですね」

 険しい表情でオーギンとスティードが返した。

 その言葉を受けてリジェイルは対象を縛り付ける魔力縄(マジックバインド)の魔法を唱え始めた。ミレルも風の精霊を召喚して少年の行動を妨害していた。スティードが少年を気絶させようと近づいた。そのとき少年の眼が赤い光を放った。スティードは心が激しい恐怖を覚えるのを感じた。吸血鬼の能力の邪眼の一種だ。そのまま逃げだしたい衝動に駆られるのをなんとかおさえるが手足がしびれてしまった。たまらず倒れ伏してしまう。

 「くぅ……」

 ラティーヌはその様子を見てスティードに平常心を取り戻す魔法をかける。そこでリジェイルの魔法が発動し少年は見えない縄で縛り付けられた。

 「とどめだ!」

 なおも暴れている少年のみぞおちを全力で殴りつけながらオーギンが叫んだ。さすがに耐えられなかったのか少年は静かになった。

 「眼を塞いでくれ」

 リジェイルが指示するとオーギンが頷き包帯で少年の眼を塞ぐ。リジェイル自身は息を切らしながらも周りに誰かいないかを確認する魔法を唱える。今日は魔法を唱えっぱなしなのでさすがのリジェイルも疲れていた。

 「私の精神力を渡しますね」

 そんなリジェイルの様子を見てラティーヌが神聖魔法で精神力を渡す。

 「ありがとう。だいぶ楽になったよ」

 リジェイルは体が軽くなるのを感じて礼を言った。

 「それで何の魔法を唱えたの?」

 ミレルが問う。

 「簡単な探知魔法さ。今この近くには私たち以外の動物はいないみたいだ」

 リジェイルは安心した様子で魔法の結果を答える。それを聞いた四人も警戒を少し緩める。

 「しっかしなんだってこんなところに吸血鬼がいやがんだよ」

 オーギンが肩をすくめながら言う。

 「実際にいたとしか言えませんそれよりもいろいろ話し合うべきことがあります。まずこの子どもの正体についてです」

 スティードが話を切り出す。

 「吸血鬼だろ」

 オーギンがどうでもいいことのように言う。

 「吸血鬼にもいろいろいるのです。真祖のヴァンパイア、レッサーヴァンパイア、不死王(アンデットロード)の三種類が」

 「レッサーヴァンパイアだけはないわ」

 ミレルが断言する。こういう時ミレルはあまり意見を出さないので四人は驚く。

 「レッサーヴァンパイア程度ではあの炎を耐えられる訳がない。だからレッサーヴァンパイアの可能性は切っていいわよ」

 そんな四人の反応に傷ついたように理由を説明した。

 「私もレッサーだけはないと思うよ。ミレルの説明もそうかもしれないけどレッサーは吸血されて作られる吸血鬼。親の真祖か不死者(アンデットロード)がいないとそもそも存在しないからね」

 リジェイルが補足で説明をする。

 「ですが上位の二種類のうちだと言うなら納得できないことがいくつかあります。まずあの少年が理性を失っているように見えたこと、それとあの少年自身に吸血鬼になる魔法が使えるとはとても思わないという点です」

 スティードが戦っていて気になった点を挙げていく。

 「それは……訊いてみるしかないだろうね」

 吸血鬼化の魔法についてはリジェイル自身もわからない事なのでそう答えるしかない。

 「その子どもにか?答えてくれねえんじゃねえの?」

 「その子は理性を失っているのよ!」

 案の定反対の声が上がるが、リジェイルには一つ思うことがあった。

 「理性を失っている事に関しては心当たりがあるんだ。だから話を聞いてみよう」

 そう言い杖をゆっくりと振るいながら唱えた。『痛覚遮断(ダメージキャンセレーション)』その後でナイフと小瓶を取り出し自身の手首を切った。

 「何してるの!?」

 ミレルが怒ったように声を上げたが手で制し、小瓶に流れ出た血を入れる。リジェイルが唱えた魔法はとても高度なもので痛みは全く感じていなかった。

 「ラティーヌ、すまないが癒しの魔法をかけてくれないかい」

 苦笑しながらリジェイルは頼んだ。

 「自分を傷つけるなど褒められた行いではありませんよ」

 ラティーヌも怒っているようだったが短く祈りの言葉を唱えるとリジェイルの手首の傷はあっという間にふさがった。

 「どういうことか説明してくれませんか?」

 スティードが腑に落ちないという顔で訊く。

 「人間でも極限状態まで空腹になれば理性を失うだろう?それと同じで吸血鬼も圧倒的に血が足りないと理性を失うらしいんだ」

 そういいながらリジェイルは気絶している少年の口に小瓶の中の血を流し込んだ。

 「私の考えが正しければこれで正気にもどるはずさ」

 「だけど危険じゃないの?」

 ミレルが不安そうに問いかけてくる。

 「ラティーヌが聞いたお告げの内容を覚えてないのかい?」

 リジェイルは自信たっぷりといった様子で言った。

 「確か『魔に落とされてしまう罪なき者を救いなさい』でしたか?」

 スティードが自信なさそうに答える。

 「ええ、あっています」

 ラティーヌが頷く。

 「つまりね、この子が『魔に落とされてしまう罪なき者』なんだと思うんだ。だからこの子が危険ではないと思うんだよ」

 「確かに、そうとも考えられます。いや、その可能性が高いですね」

 リジェイルの意見にスティードが賛成する。

 「だからみんなに精神抵抗力が上がる魔法をかけた後にこの子を起こして話を聞いてみたいと思うんだがいいかな?」

 リジェイルの今までの言葉は推理にすぎない。この子どもが悪人であった場合に一番厄介な邪眼を抑える魔法だけはかけておきたかった。空に浮かび上がる浮遊で逃げられるのも怖いがなんとかなるだろうとリジェイルは考えたのだ。

 「私は小さい頃から悪人である人などいないと考えています。それにお告げとなんら関係がなかったとしてもその子を助けたいと思います」

 ラティーヌが賛成の意を示した。他の四人も異論はないようであった。

 「警戒だけはおこたらないように」

 リジェイルはそういうと水袋の水を少年にかけた。少年がはっとしたように意識を取り戻す。どうやら理性は取り戻したらしい。リジェイルはまずは安心したが少年はリジェイルたちの知らない言語で何かを叫んでいる。どうやらリジェイルたちに敵意は抱いているようだ。リジェイルが翻訳の魔法を使おうと杖を取り出すとさらに厳しい表情になる。しかし縛られているせいで何もできないためリジェイルは唱えた。『翻訳(タング)

 「お前たちもあの男の仲間か!」

 少年が怒りの声を上げる。

 「君がいう男が誰を指すのかはわからないがたぶん違うよ」

 リジェイルが静かにそう答える。しかし少年は信じられないというように言葉を続ける。「嘘つけ!ならお前が持っている杖はなんだ!お前も魔法使いなんだろう!」

 「魔法使いになにかされたのかい?」

 「なにかされたか……だって?睦人も父さんも母さんもあの魔法使いが殺したんじゃないか!」

 目に涙をためながらそう叫ぶ少年を見て五人は悲しく思った。

 「私たちはその魔法使いとは関係ありません!私はあなたのことを救いたい!」

 我慢できないといった表情でラティーヌが声をあげる。その様子をみて少年が少しおとなしくなる。だが代わりに涙がこぼれていた。

 それからしばらくの間は少年が泣き止むまで沈黙が続いた。リジェイルはそんな少年の様子をみて悲しい気持ちになったが、同時に疑問もたくさんうかんでいた。

 「あなたたちはなぜここに来たんですか?」

 少し落ち着いた様子の少年が尋ねる。態度もいくぶんかましになっていた。

 「ここで魔法の反応がしたからだよ」

 リジェイルが答える。お告げのことなど話してもわからないだろう。答えを聞いた少年は黙ってしまう。

 「こちらも質問してもいいかい?君の名前とどうしてこんな山の奥深くにいるのかを」

 「……自分の名前は朝宗陽義……です。どうしてここにいるのかはわかりません。魔法で眠らされて気づいたときにはここでした」

 陽義は混乱していた。目の前にいる人たちがなんなのか。少なくとも依代の仲間ではなさそうだ。それ以前に自分はナイフで首を貫かれたはずだ。

 「ここは天国かなにかじゃないんですか?」

 そこまで考えたとき不意にそんな言葉が出た。

 「なんでここが天国だと思うんだい?」

 依代と似たような杖を持っている男が訊いてくる。陽義は自身がナイフで首を刺されて意識を失ったことを話した。

 (天国ならまたみんなに会えるかもしれない)

 そんなことを考えてしまうが、

 「ここは死後の世界ではないよ」

 杖を持った男に否定されてしまう。そんなことを期待するのは間違いだと陽義自身もわかっていた。自分がいつまでも座り込んでいると気づいた陽義が立ち上がろうとすると何かで縛られたように身動きが取れなかった。

 「どうなってるんですか?」

 再び生まれた不信感を上手く隠せずに強い口調で言ってしまう。その言葉に杖を持った男が困ったように陽義の知らない言葉で他の四人と話し出す。しばらく話し合っていたが結論がでたのかそれでもなお答えずらそうに言う。

 「……君はさっきまで暴れていたんだよ」

 「暴れてたってどういうことですか?」

 相手の言っている意味が分からない。陽義にはそんな記憶はない。

 「自分の目で確認してもらった方が早いかな」

 そう言うと鏡を陽義に向けてくる。

 「なんだこれは!?」

 そこに映っているのは間違いなく陽義自身だ。でもいつもよりも肌が青白く、目も赤い、短い牙さえ生えている。(これが俺だって?)陽義の頭は混乱する。その様子を見て杖を持った男は安心したように、

 「その様子だと君自身も状況がわかっていないようだね。そうとわかれば君にかけておいた捕縛の魔法を解こう。私の名はリジェイルだ。他の四人の名は君から向かって左からオーギン、スティード、ミレル、ラティーヌというんだ」

 と言い陽義の手足は自由になった。

 「いったいなんで俺はこんな姿になってるんですか?俺はどうなってしまったんです?」

 驚きと不安で胸が張り裂けそうな陽義はさっきまで怒っていたことも忘れていた。

 「一旦落ち着いてください。私たちもあなたの身に何が起こったのかはわかりません。落ち着いたらなにがあったのかを話してくれませんか?私たちはあなたの味方です」

 ラティーヌが前に進み出て陽義の手を握りながら言う。陽義は混乱する心を抑えようと深呼吸した。(自分には何もわからない。今はこの人たちに頼るしかない)陽義は自分の身に起きた出来事を一つずつ話した。睦人が魔法使いになったこと。その父である依代によってここに連れてこられたこと。自分の父と母が死んでいたこと。この時点で再び涙が流れてきたが陽義は話し続けた。自分は首を貫かれて死んでいるはずということ。

 「……自分が話せるのは以上です」

 それらを言い終えたときの五人の表情は様々だった。オーギンとスティードは苦い顔をしていた。ミレルは泣きそうな顔をしていたし、ラティーヌに至っては陽義と同じように泣いていた。リジェイルだけは顔面蒼白といった感じで、

 「そんなばかな……」

 と呟いた。

 「なにかわかったのですか?」

 それを見逃さなかったスティードが尋ねる。それに答える前にリジェイルは杖を構え何事かを唱えた。唱え終わると再び陽義に向かい合った。

 「もう一度だけ聞くよ。『はい』か『いいえ』で答えてくれないかい?」

 「わかりました」

 とても真剣な表情で言うのでそう答えるしかない。

 「今君が話したことに嘘はないんだね?」

 「はい」

 「君自身は魔法は使えないんだね?」

 「はい」

 そう言い終わると愕然とした表情に変わる。

 「今の質問の意図はなんです?いったい何に気づいたのですか?」

 スティードが再び尋ねる。陽義も自分に関することなので是非知りたかった。

 「……陽義君は作られた吸血鬼である可能性が高いです」

 “今なんて言ったんだ?吸血鬼?”陽義は血の気が引いた。自分の事なのか?

 「作られた吸血鬼とは?吸血鬼とは生物が魔法を使ってなろうとする不死に近い存在なのでは?」

 スティードが理解できないという風に聞く。

 「……そうだね。吸血鬼とは欲の深い人が不死の存在になろうとしてなるもの。もっというならば魔法使い自身がなろうとするものだね。でも成功する確率は1%未満であり、失敗したら命を失うハイリスクハイリターンな儀式なんだ」

 ここまで聞いた時点でスティードは納得したようだ。

 「つまり陽義君は、依代という魔法使いの手によって吸血鬼にされてしまった可能性が高いということですか」

 「そういうことだね……」

 「そういうことってどういうことなんです!?吸血鬼っていったいなんなんですか!?」

 たまらずに叫ぶように陽義が尋ねる。訳が分からない。なんでこんなことになってるんだ。自分はいったいどうなってしまうのだろう。

 「陽義君落ち着いて聞いてほしい。君は吸血鬼と呼ばれる存在になったんだ」

 リジェイルが断言する。陽義は信じたくなかった。けど鏡に映る自分の姿を確認してしまっている。

 「落ち着いて、心配しないで……」

 ラティーヌが強く陽義の手を握り安心させるように繰り返す。(少なくともこの人は悪人じゃない)そう判断した陽義は話の続きを待った。

 「どういうことかさっぱりわからねえな。つまりこの子はレッサーヴァンパイアだって事か?」

 話に全くついてこれなかったオーギンがもどかしいように訊く。

 「どういう目的があったかわからないがその依代という男は陽義君を真祖のヴァンパイアか不死王(アンデットロード)に変えたのだろうという事だよ。依代は神聖魔法を使ってないようだから神聖魔法を使ってなる真祖のヴァンパイアというよりは精神魔法を使ってなる不死王の可能性が高いだろうね」

 「自分自身じゃなくて他の人を作り変えるなんて!」

 ミレルは依代という人間に対して怒りを向けているようだった。それは他の全員も同じなのだがそれよりも先にやらなければならぬことがあった。

 「ラティーヌ、君は陽義君をどうするべきだと考えるんだい?」

 リジェイルは問いかける。

 「どうするべきとは?」

 「君は『救え』というお告げを受けてここに来た。救うことの選択肢は沢山あるはずだ。君の神聖魔法で浄化して消し去ってしまうことが救うということなのかもしれない」

 「自分はいてはいけない存在なんですか?」

 陽義が自信を無くしてしまったように訊く。

 「そんなことは……」

 ラティーヌが否定しようとするが、

 「さっき陽義君は理性を失って暴れていた。吸血鬼はどんな致命傷を負っても再生してしまう。今だってさっきオーギンに殴られた場所の痛みは消えているはずだ」

 陽義は驚いた自分は殴られて気絶していたことを今初めて知った。首を貫かれたのに今傷がないことも再生していたのだろうか。いや最初に睦人を助けようと起き上がったときも致命傷を受けていたのかもしれない。

 「君が理性を取り戻したのは私が君に血を飲ませたからだ。君は一定時間吸血してないと理性を失ってしまうんだよ。そして血を求めて暴れだす。さらに言えば君が直接吸血することによって吸血された人も吸血鬼化してしまうんだ。だから放っておくわけにはいかない」

 (そんな……)陽義は絶望して何も言えなくなってしまった。

 「それはわかっています。でもだからといって消し去るしかないなんてことはないはずです。この子に罪はありません!だから私はこの子が消えたくないと望むなら別の方法を探してそして救います!」

 叫ぶかのようにラティーヌは宣言する。

 「陽義君はどう思っているんだい?」

 ラティーヌの言葉を聞いて陽義は自分が消えたくないと強く思っていることがわかった。(睦人は最後なんて言ってたっけ?あいつは逃げなかった。俺がここで消えてしまったらあいつの死が無駄になってしまう。それだけはダメだ!)

 「俺は消えたくない。これまで俺を育ててくれた両親や最後まで逃げなかった睦人のためにもここで消えるわけにはいかない。たとえ俺が消えた方がいい存在だったとしても」

 はっきりと自分の思いを言葉にした。そうすることで迷いを断ち切った。自分の人生だ。だから自分で決断したい。たとえそれが間違いだとしても、つらく苦しい道だとしても。

 「二人の思いはわかったよ。実はね私には君たちがそう言ったときのためのことは考えていたんだ。吸血鬼である陽義君をこの地に放置するわけにはいかないけど……。私たちの国に連れて行って面倒をみることくらいはできると思うんだ」

 リジェイルはラティーヌと陽義の答えに満足したようだった。

 「吸血鬼は我々の国でも恐れられませんか?アラン王ならば許してくれるかもしれませんが……」

 スティードは少し自信なさげだ。

 「でもそれしか方法がないなら私は賛成です」

 ラティーヌが強く言う。他の三人は賛同できかねるといった様子だ。

 「悪だくみも魔法使いには必要なスキルさ。私に考えがあるから信じてもらえないかい?」

 リジェイルが彼にしては珍しく自信があるように言う。

 「なにかあったらすべての責任をリジェイルに押し付けましょうか」

 冗談めかしてミレルが言う。

 「わかったよ。危険な橋を渡るのはいつもの事だしお前を信じるぜ」

 「あなたがそこまで言うのでしたら」

 どうやら全員に納得してもらえたようなのでリジェイルは陽義に向き直って言った。

 「私たちに付いてきてくれるね?君はもうこちらの世界では暮らしていけないんだ。君自身で吸血衝動を抑えられない以上魔法に頼るしかない。私は君を救いたい。だから一緒に来てほしいんだ」

 リジェイルは陽義に問いかける。陽義の答えも決まっていた。

 「わかりました。少しでも自分が消えずに他の人にも迷惑かけずにすむ可能性があるならば、あなたたちに付いて行きます」


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