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ディサイデッド~我が道を進むファンタジー物語~  作者: スパイラル
始まりの事件
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光の柱~こちらの世界へ

ラルテリシアの最東端に位置する光の柱。この世界の住民ならばこの柱を使うことはおろか見る事さえないだろう。その柱へとリジェイルたちは船を出していた。

外の世界へ行くために用いられる光の柱は今となってはほとんど機能していない。もちろんリジェイルたちも使うのは初めてだ。「外の世界へ行く」という事がどれだけの危険があるかもわからず地図すら持ってない五人はいつもより口数が少なかった。

「今更だけどこの船はどうやって動いてんだよ」

そんな重い空気に耐えられなくなったオーギンが口を開く。

「出航の時にも説明したけどね。この船の動力が魔力だって事は」

リジェイルが呆れたように解説する。船には五人しか乗ってなくて五人とも操船の経験などなかったためそこそこ無理を言って借りたものなのだ。

そこからは誰もが無言で時は過ぎ光の柱の前までやってきた。

「とうとうですか」

ラティーヌが重い口を開く。今回の旅は彼女が発端なのだ。

「リジェイルお願いします」

光の柱は精神魔法を使わなければ世界を超える事はできない。スティードは冷静に促した。それを受けたリジェイルが解放の呪文を唱える。

すると青白い光を発していた光の柱は緑色に変わり一行(いっこう)を飲み込んだ。あまりの眩しさに一行は目を閉じる。



一瞬の出来事だった。再び目を開くとそこは普通の海の上であまり景色は変わっていない。リジェイルはすぐさま魔法を唱え自分たちが出てきた場所を記録した。こちらの世界からは光の柱は見えないのでこうしないと帰れなくなるのだ。

「なんだあ?俺たちの世界とちっとも変わらねえじゃねえか」

オーギンが拍子抜けしたように言う。

「まだ海の上だからでしょう。陸に上がってみない事には何とも言えませんよ」

スティードが相槌を打つ。

「そういえば、割とプランなしでこちらに来てしまったけどラティーヌは神託の人物がどこにいるのかがわかるのかい?」

リジェイルが思い出したように尋ねるとラティーヌは申し訳なさそうな顔をして、

「神託には場所や人物の事については何とも聞いておりません」

と言った。そのあとすぐ毅然とした表情で、

「しかし神であるジセートが何の意味もなく私を選んでお告げをしたわけではないと思います。ですので必ず出会えるでしょう」

と続けた。

「ラティーヌの言葉を信じるしかないわね。ラティーヌとスティードは少なくとも今まで間違った選択をしたことがないのだから」

あきれ顔のオーギンを睨みつけながらミレルは言う。

「まるで私とオーギンが間違いだらけだとでも言いたげな言葉だね」

リジェイルが茶化すかのようにミレルの言葉にかみつく。

「事実そうでしょう?あなたたちの提案にのって痛い目を私は何度もみてるわよ?」

と見事に正論を返されてしまったのでリジェイルとオーギンは苦笑するしかなかった。

「しっかし手掛かりなしか、さすがにヤベーんじゃねーか?」

オーギンが困ったように言うと、

「手掛かりならあるかもしれませんよ」

スティードが落ち着きを払った声で言う。

「魔法の事かい?」

「ええ、その通りですよ」

リジェイルもスティードの言っていることに心当たりがあるようだった。話に置いてきぼりにされている三人は顔を見合わせるしかない。

「詳しく説明して頂戴」

 ミレルがせかすように尋ねる。

 「私の話なんて信用に値しないんじゃなかったのかい?」

 ここぞとばかりにリジェイルが言い返した。ミレルはにらみを利かせる。

 「私も教えていただきたいものです」

 ラティーヌも穏やかに尋ねてきた。リジェイルはもっとからかいたい気持ちを抑えてスティードに、

 「私から説明してもいいかい?」

 と断りを入れてからジセート神殿で聞いたお告げの内容から魔法が絡んでいる可能性が高いと自身とスティードが考えたということを説明した。

 「そんな事ってあるのか?」

 だがオーギンとミレルは首をかしげていた。魔法という知識がラルテリシア以外の場所から失われたという事実はラルテリシアの人間なら誰でも知っているくらい有名なのだ。

 「ラティーヌはどう思いますか」

 三人の反応を見ていたスティードが穏やかに問う。ラティーヌはむしろ納得したように、

 「魔法の知識を地上や魔界の住人から無くすべきと判断されたのはジセートであると聞いたことがあります。今回のことも魔法が絡んでる可能性はあると思います」

 と答えた。

 「魔法が絡んでいることが事実だったとしてもよお、それがどうしててがかりになんだ?」

 オーギンが呆れたように聞く。

 「魔法が関わっているのなら簡単に対象を探せるんですよ。そうですよね?リジェイル」

 スティードがリジェイルの方を見て答えた。

 「魔法(センス)探知(マジック)の魔法か?以前魔道具を探すときには役に立たないって言ってなかったか?」

 オーギンは以前のリジェイルの言葉を思い出しながら言う。

 「それはラルテリシアでの話だよ」

 とだけ言い詠唱を開始しようとしたので、

 「わかりやすく説明しなさいよ」

 説明がないことに怒ったようにミレルが言う。

 「リジェイルが詠唱に入りましたし私から説明しましょうか」

 スティードがたしなめるように言う。

 「だいたい、魔法なんてリジェイルなら一瞬で唱えられるんじゃないのか?」

 オーギンが不思議そうに聞くと、

 「あまり精神魔法について詳しいことはわかりませんが、難しい魔法や広範囲にかける魔法は詠唱も長くなると聞いたことがあります。それよりも今はスティードの説明を聞きましょう」

 ラティーヌが答え、スティードにもとの疑問を訊く。

 「そんなに難しい話じゃないですよ。こちらの世界に魔法がないのが一般的なので、魔法が絡んでいるなら魔法探知に引っかかるのはお告げの対象になるというだけです」

 「なるほど。確かにそうかもしれないわね」

 「そういう事でしたら少しの間待ってみましょうか」

 「そういうことは先に行ってくれよ」

 女性陣が感心している裏でオーギンは拗ねている様子だった。リジェイル以外の三人はそれを見て苦笑する。五人でいる時はいつもリジェイルとスティードが計画を練ることが多くやはり今回もそうなっている。そんな話をしているとリジェイルが詠唱を終える。

 「……一つだけ魔法の反応が返ってきた。他に当てもないことだしそこに向けて船を向かわせるって事でいいかい?」

 「どうやら仮説は当たっている可能性が高いようですね。私は異論ありません」

 スティードをはじめ全員賛成するようにうなずいていた。

 「ですが陸に近づくときは気づかれない魔法を展開してくださいね」

 「わかっているよ」

 外の世界には魔法の知識がないそれと同時にラルテリシアの知識も当然ない。それは神代の時代にこの世に存在する三神の内の二神であるジセートとカリスが地上と魔界の住人からその知識を消したのが原因とされている。それ以来テラウスに住まう人々は地上にはその知識を持ち込んでいない。もっとも悪神として知られるもう一つの神ディオスの信仰を許可しているダルムの国の人々が魔界に対して秘密を守っているかは怪しいものだが。

 リジェイルたちも当然こちらの世界に来るにあたって自分たちの存在を悟られないことを条件づけられていた。それだけに魔法の反応が返ってきたことにリジェイルは驚いていた。

それからしばらくの間は魔法の反応がした場所へ舵を取り船を向かわせた。五人で他愛のない会話などをしていたのだがその間もリジェイルは以前感じた不安が現実にならないことを願わずにはいられなかった。

 しかしその不安はリジェイルの願いを裏切る形で的中するのだった。


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