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夢現闘争(更新停止中)  作者: ポピー
第一章
7/12

その人、身に誓って2


 時を忘れて2人はしばらく撃ち続ける。

 数えきれない程の銃声を響かせ、数えきれない程の弾丸が的を撃つ。


 少し日が暮れた頃、山寺が醒技達を呼びに訓練所へと入ってきた。


 それに気づいた醒技は作業を終え、ふぅと一息吐くとゆっくりとコートの中に銃をしまった。


 「もう16時だ。あれから3時間も撃ち続けて疲れたか?」

 「明日風があんなに元気なんだ、疲れてられないさ」


 山寺は奥の方にいる明日風の方を見ると自分の目を疑った。


 明日風は素早く弾を込めると的をめがけて撃つ。

 (まば)らながらも的に命中させ続けるが、最後の1発が的を外れた。

 全ての弾を撃ち終えた明日風は再び弾を装填すると黙々と撃ち始めた。


 「あいつ、この3時間ずっとあの調子なのか?」

 「あぁ、2回手を休めてたがそれ以外はずっとあの調子だ」

 「銃を撃たせたことは?」

 「危ないからな、撃たせたことどころか持たせるのも初めてだ」


 明日風を呼ぶ為に2人は明日風に近づく。

 やがてどんどん近づいていき、3mぐらいの距離まで近づくとようやくこちらに気づいた。


 「あっ!もうそんな時間ですか?」

 「あぁ。疲れてないよな?」

 「大丈夫です!!」


 明日風は満足そうに返事をすると、澄んだ空を見上げてふ~と一息吐いた。


 「さぁ!行きましょうか!!」


 鼻歌を歌いながら両手を大きく挙げ、身体を右や左に揺らしながら出口の方へ歩いて行く。

 醒技と山寺はその後を付いていくが醒技は足元にある布袋に気づき足を止める。


 「あっ、そういえば酒を貰ってたんだったな……」


 醒技は地面に置いていた布袋を持ち上げると山寺は袋の中身を尋ねた。


 「おい、それなんなんだ?」

 「お前の大好きな酒だよ、酒」

 

 醒技が酒だと答えると、なんでもないこの応答を山寺は不思議なことを聞いたような反応を見せる。


 「酒……?お前酒なんか今まで避けてきただろう?」

 「麗香のやつが押し付けてきたんだよ……。初めての人にもオススメ出来る銘酒だとか言ってたんだが……」


 酒の話をするや否や、山寺は一気に調子付く。


 「なら俺が判断してやる。それこそ北の大陸から南の大陸まで全ての大陸の酒はこの頭ん中にある」


 今日で一番興味を持った顔をしながら、右手の人差し指でトントンと自分の頭を触る。

 醒技は布袋から桐箱を取り出すと、自由次第と書かれているのを見て山寺は目を丸くする。


 「自由次第!?自由次第だと!?」

 

 舞い上がる山寺に対して醒技はいまいち乗り気でない様子で聞き返す。


 「それで、結局これは北の大陸か南の大陸。どっちの大陸の物なんだ?」

 「そんなの知らねぇよ!」

 「頭ん中にあるって言わなかったか……そんなにレアな物なのか?」

 「レアなんてもんじゃねぇ!!俺も今まで飲んだこともない幻の酒だ!」


 山寺は恐る恐る桐箱を開けると、自由次第と書かれたラベルをしっかりとその目で確認する。


 「お前には似合いの酒なんだが……」


 山寺は肯定しながらもどこか納得しきれない表情で話す。


 「しかし……酒の味を知らない素人に飲ませるのは……どうしても……!」


 苦悶の表情を浮かべる山寺を横目に醒技は酒をしまうと、山寺は右手をグーにして左手をポンと叩いた。


 「そうだ!俺に一杯飲ませて……」

 「だと思ったよ、どうせいっぱい呑むんだろ」


 醒技は気に留めない様子で外に向かって歩き始めるも、山寺は諦めない。


 「なぁ、いいじゃねぇか?それはな俺が世界中の大陸から仕入れをする際に必ず情報を聞く。そんな酒なんだ!」


 それでも醒技は気に留めないが山寺はそれでも諦めない。


 「分かった!分かった!!いくらだ?いくら出せばいいんだ?」


 醒技はピタっと足を止めた後に少し考えて返事をする。


 「これはお前にとって夢みたいなもんなのか?」

 「そうだ!夢だよ!良いこと言うじゃねぇか!」


 山寺がそれは夢だと答えると、醒技は山寺の方にゆっくりと振り返る。


 「こいつがお前の夢だって言うなら俺は値段は付けられない。」

 「あ?」

 「人の夢に値段は付けられない。親友の夢ならなおさらだ。俺は例えいくら積まれてもこいつを手放す訳にはいかなくなった」

 

 山寺は醒技が何を言っているか分からなかった。

 しかし、少し考えると自分が誘導尋問をされていたことに気づいた。


 「お前嵌めやがったな!」

 「巡り合わせってのは不思議なもんでな。いつか必ずお前も巡り合うさ」


 そう言いながら再び振り返ると醒技は訓練場を出る。


 「お前の家に大量の鮭の卵でも積んでやろうか!!」


 山寺は大声でそう叫ぶも訓練場の中で空しく響くだけだった……。

 

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