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夢現闘争(更新停止中)  作者: ポピー
第一章
6/12

その人、身に誓って

お久しぶりです。ずいぶんと季節を跨いで、すこし涼しくなってまいりました。

それでは本編です。


 リスターを後にした2人は少し歩いたところにある訓練場に向かう。


 ウキウキな気分でノリノリの明日風は自分の気持ちが抑えきれないのか訓練場に進みながらクルクル回りだす。


 「あんまりはしゃぐなよ~また転ぶぞ~」

 「特訓場に着いてしまったらはしゃげなくなるからいいんですよぅ!」


 クルクル回っていた明日風は手を後ろに組んで後ろ歩きをしながら醒技を見つめる。


 「また転んだとしても醒技が受け止めてくれるから!」

 「次はちゃんと受け身を取れるようにな?」


 醒技は明日風の頭を右手で優しくポンポンと触る。


 「今日はな、『空見(そらみ)』はしなくていい」

 「じゃあ『波揺(なみゆら)』ですか?」

 「今日は銃を持ってもらう」

 「えっ!いいんですか?」


 明日風はもう一度クルリと回って醒技の後ろに着く。


 「銃器は危ないから集中するんだぞ、いいな?」

 「はい!」


 2人は訓練場に着く。芝生が一面に広がっており、的が3つ立っている向こうには砂浜が見える。人が1人もいないどころか普段は醒技と明日風以外使っていないので少し寂れている。


 醒技はコートの中から銃を取り出し台に置く。


 「お前もいつも見ているだろうが……まぁしっかり見といてくれ」


 醒技は片手で銃を持ち真上に構える。そしてそのまま静かに右腕を降ろし、鋭い眼光で的を見つめる。大空を(なび)く雲の動き、風に揺れる木々の揺らめき、波の鼓動。その全てを全身に感じる……。


 ――引き金を引く。


 ――その一発。周囲に轟く銃声は穏やかな空気を裂く。空を舞う弾丸は50mの距離を駆け抜け的の中心を凹ませる。


 一瞬時が止まったかのように思えるその強烈な一撃は止まることなく続けて引き金を引く。

 一発、もう一発と等間隔に撃ち続け、やがて5発撃ち終えると醒技は銃を下に降ろした。

 

 「おぉ!!」


 大気の震えを感じた明日風は両手を合わせて感服する。


 「全部真ん中!」

 「じゃあ説明するからな」

 「はい!」


 醒技は銃を台の上に置くと的を指差す。


 「まず、あれが『霞的』っていう的だ。本来は銃を試し撃ちするようの的じゃないが……精確に当てたいのならあれで十分だ」


 明日風はうんうんと頷く。


 「そして、この銃だが、実弾は使用していない。ゴム製の弾丸を使用している。」

 「誤射を防ぐ為ですよね!」

 「あぁ、それとお金がかかりすぎるからかな」


 醒技は台の上に乗った銃の横にゴム弾の入った弾薬箱を取り出すと銃に1つ1つ装填していく。


 「まぁ、色々説明したが試しに撃ってみてくれ」

 「よぉし……」


 銃を手にした明日風はそれを片手で構えて的に銃口を向ける。


 「明日風、最初は両手で構えようか」

 「あれ?さっき片手で撃ってませんでしたっけ?」

 「片手で撃つのは難しいぞ?まずは両手で撃って慣れてからな」


 銃を両手で構える明日風は引き金を引き弾丸を放つ。

 反動で身体が少し後ろに下がり、的を大きく逸れてゴム弾は浜辺にめり込んだ。


 「むずかしぃ~!!」

 「これから少しづつ慣れていけばいいさ」

 「もう一回やります!」


 今度は少し前のめりになり、片目を瞑って両手で構える。

 1発目、2発目は空に舞い上がり、海に落ちる。3発目は的の下を潜る。

 そしてとうとう4発目で的の左下に当たった弾は地面にポテッと落ちる。


 「やった!当たりました!」


 喜ぶ明日風は銃を握ったままピョンピョン飛び跳ねて両手を高く上げ左右に振り回す。


 「こらこら、銃を持ったままはしゃぐんじゃない」

 

 醒技は明日風が握っている銃を取り上げて台の上に置く。


 「よくもまぁ、毎日飽きもせずに撃ち続けてんなぁ~」

 

 2人の元に1人の男がやってくる。黒いジャケットに、白いジャージを履いたその男はポッケに両手をつっこんで面倒くさそうにやってくる。


 「山寺さん!見てくださいこれ!私初めて撃ちましたよ!」


 山寺は的の左下の白い部分が少し黒ずんでいることを確認すると、台の上に置かれている銃に目をやった。


 「その銃で撃ったのか?」

 「はい!」


 自信満々で返事をする明日風から山寺は笑いながら醒技に目を向ける。


 「この感じだとお前もやったのか?」

 「あぁ、明日風は俺より撃つのが得意みたいだ」 


 醒技は腕を組んで平然と答えるも、明日風はキョトンとした顔をしている。


 「明日風ちゃん、そいつは『リボルバー』って言ってな。かなり改造しやすい銃なんだよ」

 「へぇ~すごい銃なんですね!」


 山寺はため息交じりで右手で頭を掻く。


 「中覗いてみ?」

 「うん?」


 明日風が銃口を覗くと中が少し曲がっており、普通に真っ直ぐ構えて引き金を引けば狙った場所よりも少し曲がって弾丸が飛ぶ構造になっていた。


 「……あれ?これ中ちょっと曲がってません?」


 半目で不満そうに醒技に詰め寄る。


 「あぁ、そういう風に改造したからな」

 

 平然とした態度を崩すことなく当然のことのように話す。


 「そんなの当てられるわけないじゃないですか!どうして先に言ってくれないんですか!!」

 「悪かったよ、悪かった、1発当てれただろ?すごいじゃないか」


 明日風は不満そうに無言で頭をスッと前に出すと、醒技はその動作に返事をするように頭を撫でた。


 「今回だけですよ……」


 明日風は嬉しそうにそっぽを向く。


 「まぁこの銃以外は持ってないからなしばらくの間はそいつで練習してくれ」

 「いいや、その必要はない」


 そういった山寺は一丁の銃を左のポケットから取り出して、明日風と醒技に見せる。


 「明日風ちゃん、こいつをやるよ」

 「いいんですか!?」


 醒技はそのやり取りを静かに見ている。


 「ちょっと形が違いますけど……これは?」

 「それは『ピストル』だな」

 「それと何が違うんですか?」


 明日風はリボルバーを指差して首を傾げる。


 「そうだなぁ……これを……こうしてだなぁ……」


 醒技は明日風に弾倉を見せると、ピストルに装填する。


 「これで一応7発の弾が入った」

 「7発も撃てるんですね!」

 「あぁ、だがこのままじゃまだ撃てない」


 醒技は銃口を的に向け、2回引き金をカチカチと引くも、銃口から弾が発射されることは無かった。


 「まぁどのみち俺はこの銃は撃てないがな」


 醒技はリボルバーの横にピストルをゆっくりと置く。


 「どうして撃てないんですか?」

 「その銃の製作者はな、銃を製作する際に『安全性』を重視して製作した人なんだ」


 明日風は首を傾げて頭を悩ませる。


 「ん~……?じゃあ何かもう一つ手順を踏めば撃てるようになるとか?」

 「そうだ、その銃にはな『魔力反応型(チェーンマジック)用心金(トリガーガード)』というものが搭載されている」

 「おぉ!!」

 「この銃は魔力を消費することが弾を放つ条件になっている。だから俺はこいつは撃てない」

 「あっ……」


 明日風は気まずそうに下を向く。


 「……この銃はな、とある銃をベースにした改造銃なんだが、製造過程で問題が2つ発生したんだ」

 「問題……?」


 醒技は黙って頷いた。


 「1つは『装弾数の減少』。もう1つは『威力の低下』だ」

 「へぇ、初めて聞いたな、それ」


 今まで退屈そうに聞いていた山寺は始めて興味を示した。


 「何だ、知らなかったのか?」

 「商売のいろはだけ知ってりゃ良かったからな~。ま、黙って聞いておくさ」


 山寺は腕を組んで壁にゆっくりともたれかかると、醒技は話を続ける。


 「装弾数の減少は想定内だったんだ。ベースの銃が8発装弾出来るのに対して7発に抑えられたのは良かったらしい」


 明日風はうんうんと相槌を打つ。


 「ただ威力の低下は想定外だったんだ。色々と試してはいたんだが結局改善することが出来なかった」

 「ん……?」


 明日風は何かを疑問に思って、首を傾げる。


 「結果的に、その銃は安全性を重視するあまり、装弾数は減少、威力は低下、魔力を失えば弾が撃てなくなる……。その銃はな、そんな銃なんだ」


 改めて性能を説明した醒技はピストルに目を向ける。そして、少し笑うと小さく息を吐く。


 「ただ俺はその銃が好きだな」


 一息吸って仕切りなおすと話を再び戻す。


 「さて、その銃に関してはそんなところだ。何か聞きたいことはあるか?」

 「ええっと……まず、何か良くなったところはないんですか?」

 「ちょっとだけ軽くなったぞ」

 「装弾数が減ったからですか?」

 「それもそうなんだが、改造をした際に内部に少し余分に空間が残ったらしい。おそらくそれが影響してるんだろう」

 「なるほど……」


 そこまでは納得したと明日風は頷く。  


 「銃の事じゃないんですけど気になることがあります」

 「なんだ?」

 「どうしてそこまで詳しいんですか?直接見てきたみたいにすらすら話して……」

 「言っておくがその場にはお前も居たんだぞ?その様子だと覚えてないみたいだな」

 「えぇ!?いつ!?」

 「2歳の頃の話だ」


 明日風は必死に記憶を探る。


 「うっすらと思い出せるような思い出せないような……」

 「俺の銃もその時に作ってもらったものだ。で、それらを作ったのが……」


 そこまで話すと醒技は続きは任せたと山寺に目をやる。


 「俺の伯父ってわけだ」

 「おじ……?おじって何でしたっけ?」

 「あぁ……俺のお父さんのお兄さんだ」

 「お父さんの……お兄さん……おぉ!!すごいじゃないですか!!」


 気まずそうにそう答える山寺に明日風は笑顔で返した。

 

 「大切にさせていただきます!」

 「その銃ははっきり言って欠陥品だ。それを理解した上で、それでもいいんだな?」

 「はい!!」

 「そうか」


 そう答えた醒技は空を見上げどことなく嬉しそうな表情をしている。

 ふと、明日風はピストルを手に取ると何かに気づいた。


 「あっ、名前はないんですか?」

 「一応、バディガンって名前があるんだが、まぁ好きに決めればいいさ」

 「じゃあ『バディちゃん』にしよ!」


 即答で名前を決めた明日風のネーミングセンスに山寺は大笑いする。


 「アハハハハ!バディちゃん、バディちゃんね。くく……!」

 「何で笑うんですか!可愛いじゃないですか!!バディちゃん!!」

 「悪い、悪い明日風ちゃん。冗談、くくく……」


 笑うのを堪えている山寺の横で明日風は頬を膨らませる。


 「そこまでバカにしてするんですか!だったら醒技の銃はどういう名前をしているんですか!!」


 そう言って醒技のリボルバーを指さす。


 「『試製ゼラニウムP1895』だ」

 「まぁ、無難なところだよな。ちょっと長すぎる気がするが」

 「可愛くないもん!!1号と鋼丸(はがねまる)とバディちゃんでいいもん!!」

 「その1号と鋼丸ってのはなんなんだ?」

 「剣と盾の事です!!」


 ふん!と明日風はそっぽを向いた。


 「量産型の剣と量産型の盾に名前ねぇ」

 「醒技が付けろって言ったんですよ」


 山寺はふ~んと納得すると醒技に目を向ける。


 「そりゃまた何で?」

 「まぁ、色々あるさ。切れ味や性能に変化が起きるわけじゃないが……愛着も湧くし、呼称がないと不便なこともある。まぁ悪いことはないだろう」


 醒技はそろそろ話を終えようとP1895に弾を詰め始める。 


 「いずれにせよ日々の習練の積み重ねがないとどれだけ高性能なものを持っていても無駄だ。とりあえず、今日は1人でやって感覚を掴んでこい」

 「はい!」

 

 明日風は奥の方に弾薬箱を持って奥の方へ走っていくと1人で準備を始める。


 「そういや、いつもの空をボーッと眺めたり、海を眺めたりするのはいいのか?」

 「空見と波揺のことか?」

 「そんな名前があったのか……明日風ちゃんはお前が銃を撃っている間暇そうに空を眺めてるか、海岸に行って不定期に剣を振ってるかしかしてなかっただろう?」

 「あれにもちゃんとした意味はあるさ」


 山寺は少し間を置くと再び話始める。


 「余計な事言わないでくれて助かったよ」

 「良かったのか?あれは親父さんの……義二さんの……お前にとっても親形見だろう?」


 そう言われた山寺はやれやれと溜息をつく。


 「お前がそんなんだからもしあの子が親形見だって知ったら何かと理由を付けては断るんだろうが」 

 

 山寺は的に銃を構えた状態で静止する醒技に続けて話しかける。

 

 「それに大事な親友の娘の為だ。それが醒技だってんならなおさら親父も文句は言わないだろうよ」

 「そうか」


 さきほどまで銃を構えて静止していた醒技は銃を降ろす。


 「あれ以来銃を持ったことは?」

 「あぁ、何度かな」 


 醒技は山寺に持っていた銃を渡して撃ってみるよう促す。


 山寺は仕方なしに銃を受け取って構える。

 片目を閉じて狙いを定めるも、両手で構えるその手はブルブルと震えており照準を合わせるどころではない。

 震える手で必死に狙いを定めて引き金を引こうとするも何度か引き金に人差し指が当たるだけで引き金を引くには至らなかった。


 「もういい、もう十分だ」


 醒技は山寺から銃を取り上げると山寺の腕の震えは収まり、一息吐く。


 「何か、どうしてもな、なんでだろうな」


 山寺は横を見ると明日風が1人で黙々と集中して弾を撃ち続けている。

 何度も的に当てて何度か的を外すも気にせず弾を撃ち続けている。


 「明日風ちゃんがさ、バディちゃんって名付けたときにあのピストルの事をバディガンって名付けた時の親父の事を思い出してさ」


 山寺はどこか遠くを見るように海の方を見る。


 「さっきのお前の射撃見させてもらったよ」

 「あぁ、気づいてたよ。明日風は気づいてなかったみたいだが」

 「銃口の曲がった銃を片手で速射し続け、全弾ど真ん中に命中させるとはな」

 「まだ多少のブレがある。そこまで上手くなったつもりはないさ」

 「数ミリだろ?誤差の範囲じゃねぇか。お前はどこまで突き詰める気なんだ?」

 「限界が来るまでは撃ち続けるさ」

 「限界って?」

 「心臓が止まった時だ」


 醒技は再び、瞬時に構えると瞬く間に全弾撃ち尽くし、弾を装填する。

 改めてその技を間近で見た山寺は笑みが漏れる。


 「こりゃ、専用の銃を作って貰えるわけだ。……しかし、伯父さんは何で安全装置を付けなかったんだろうな?」

 「義一さん曰く『お前が心の引き金を引いた時、すでに弾が発射されているべきだ。安全装置が付いている方がよっぽど危険だろう』との事だ。」

 「あぁ、今ならなんとなく分かるぜ。しかしそれなら銃口が曲がっているのはなんなんだ?」

 「それは俺が頼んだんだ」

 「お前が?何でだ?」

 「銃口が曲がってるのを知ってるのは、俺とお前、明日風に義一さんと義二さんしかいない。それが理由だ」

 「それはよく分からんなぁ……まぁ、お前のことだ。何か考えがあるんだろう」

 「あぁ、その為にガンばってるのさ。銃だけにな?」


 2人は笑って拳を出すとコツっとぶつけた。


 「言ってくれるじゃねぇか」

 

 そういうと醒技に背を向け入り口の方に向かう。


 「邪魔して悪かったな、また夕方になったら迎えに来る」

 「あぁ、分かった」


 山寺がその場を去ると、醒技も明日風と共にひたすら撃ち続ける。

 場内には銃声が響き渡るも、静かな時が流れていた。






銃の事も全然知らず弓道もやったことがないので今回は少し大変でした。

期間も長いこと空いてしまいました……。

これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。


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