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異世界で胸を張って生きる方法  作者: 伊月 凛
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第二話

 気が付くと、ダイゴはアイの膝の上に横たわっていた。


「う……」


「目が覚めました? ここが貴方のいた世界とは異なる世界、グレートフロンティア」


「グレートフロンティア……」

 ダイゴはしみじみと、自分が新たな人生を歩み始めたことを感じた。


「想いを力に出来る世界。創造し、力を込めることで大抵のことはできるようになる」

 アイは力強くそう言った。

 

 体を起こすと、見たこともない街並みが広がっていた。空はどこまでも広がり、見知らぬ生き物がたくさんいた。

 

 おそらく人間以外の種族がたくさんいるのだろうことは簡単に予測できた。まるでゲームの世界に飛び込んだようだった。


「まずは装備をきちんとするために、そこのショップへ行きましょう。流石に丸腰では何もできないでしょう」


 アイはダイゴ連れ、歩き始める。


「この世界は今まで抑圧されていた欲望や擦り減ってきた魂を解放できる場所なのです。この世界で暮らすものの中には、あなたと同じく転移してきた人間もいますし、その中には悪事を働く者もいるでしょう。そういった者たちから、この世界を救って欲しいのです」


「確かに俺の暮らしてきた生活、現実は酷いものだった。他にもこの世界に来た人たちがいるってことなんだな」


「ええ。皆、人生のやり直しや新たなスタートを求めてここへ辿り着いた者ばかりなのです。そして、酷い現実に直面した人間だけが、とても低い確率ですがこの世界へ導く私のような使者と巡り合うことが出来るのです」


「この世界の冒険者として、暮らしていくということでいいのか?」


「そうなります。そして、貴方が生きた現実世界から来た人間は想いを力に変える能力が特化しているのです。私たちのような元来この世界に暮らす者も、ある程度の魔法や力は使えますが、想いの強さに勝る魔法などこの世界にはありません」

 アイはじっくりとダイゴの目を見つめながら言った。


「つまり、現実世界からやってきた俺たちは最強ってことになるじゃないか。そんなイージーモードなら誰だって最強の戦士になれちゃうんじゃないか」

 少し浮かれた様子でそんなことを言うダイゴ。


「想いとはいわば感情。貴方は怒ったら怒りっぱなしというわけじゃないでしょう。心の起伏というものが関係してくるのです。しかも、新たな生を受けたとはいえ、ここで死んだらもう終わり。すぐ死なれては困りますし、油断はだめですからね?」


「気をつけるよ。そうはいってもなにしたらいいのか、迷うな」


 いざ世界を救う、とはいうものの話のスケールが大きすぎるし、ダイゴは入院生活でなまった体で、どこまでやれるのかという不安があった。


「さ、着きましたよ。ここで装備を選択しましょう」


「いらっしゃい。冒険者さんかい。ゆっくり選んでってよ」

 店員が声をかけてきた。


 店内には、所狭しと武器や防具が並んでいた。剣、盾、鎧がずらり。

 どれを買うべきか見当もつかず、ううむ、と唸るダイゴ。

 これから世界を救おうなどという大きな目標を前に、どうしたらいいのか。そんな思いだった。


「慌てることはありません。今すぐ世界を救わないといけないわけじゃないんですから。小さなことから始めればいいんですよ。代金は私が立て替えておきますから、好きなものをどうぞ」


「それもそうだな。そうさせてもらうよ。俺はやっぱり剣が好きだから、こいつにするよ」


ダイゴが手にしたのは、光の剣『シャイニングセイバー』。

刀身が光の粒子で出来ていて持ち主の力に応じてその強さは増すという。


「いやあ、いい武器を選びましたね」


 店員も一押しの武器のようだった。


「では、それを買っていきます」


シャイニングセイバーを装備して店を出た。


ふと、ダイゴは自分の体の変化に気づいた。病気を患って以降、まともに外にも出れなかった身体で、自分は剣を持って歩いている。


「もしかして、ここに来た段階で身体能力の向上とかがあったのかな」


ダイゴはアイに尋ねる。


「こっちへ来た際に、その肉体は最適化された状態へと変化しています。ですので、視力や筋力は並以上になっています。病気もバッチリ治っているのです」


「そうか……まさか自分の病気が治って、武器まで持てるなんて。夢のようだよ」

 身体の弱さを呪っていたダイゴにとって、今の状態は本当にありがたかった。

 

 ダイゴは言いながら、ブン、と早速買った剣を振るってみる。光の粒子で出来たその剣は、思いのほか軽かった。


 さながらビー○サーベルのようでもある。


 これなら俺でも扱えそうだ、とダイゴはこの剣に頼もしさを感じていた。



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