第一話
「貴方はつい先ほど、死んだ」
金髪の少女が呟く。十代後半くらいの年齢に見えた。純白のワンピースに身を包んでいる。
一つのライトに照らされただけの、真っ暗な部屋。
一組の男女がそこに立っている格好だ。
死亡を告げられた男――橘大悟は答える。
「やっぱり俺、死んだのか。手術は失敗……?」
彼は原因不明の病に冒されていた。二か月ほど入院生活を送り、その間は好きなゲームや漫画を読んで病気の恐怖を紛らわしていた。
そしてつい先ほど手術室に運ばれたはずだった。そこから先は麻酔のせいで記憶はなかった。
「ダイゴさん。難病に冒された貴方の体は、手術に耐えうることなく死んでしまったの」
「そうか……。なら、何でここにいる? ここはどこだ?」
「本来であれば、死んだ人間の魂と肉体は別れ、消滅する。でも、生前の君の強い想いが、私に通じたのよ。自分のような弱者を守る生き方がしたい、まだ終わりたくない、ってね」
「君は誰だ――?」
眼を細めて尋ねる。
「――私はアイ。此処ではないもう一つの世界へと貴方を導く女神。私は貴方のその想いに心を打たれた。その魂を消すことなく、新たな世界で活躍しませんか」
彼女は、ダイゴの不安を吹き飛ばすほどの極上の笑顔でそう提案した。
「そこはどういう世界なんだ」
「貴方のような強い想いがあれば、暮らしていける世界です」
死んだ実感はなかったが、この部屋もこの世のものではないように思える。それならば、とダイゴは決意した。
「ありがとう。もしもまだチャンスがあるのなら。今度こそ生きてやる」
「――よく言えました」
アイはその豊満な胸でダイゴを抱きしめる。
刹那、彼の視界は真っ白な光に包まれ、視界は暗転した。