初めての殺人
そもそも罪悪感とは何だ?
自分が正しいと思ってる事をしているのに何故そんなものを持たなければならないんだ?
老人の行動を見て俺は確信した。
老人は何も間違った事を言っていない。
老人は自分の家に無断に入ってきた猫が許せなかった。
だから殺した。
それだけ。
久し振りに俺は自分の部屋を出た。
母親はパートに出ているため、家の中には誰もいない。
あと数時間は誰も帰って来ない。
完全に一人きり。
一人はいい。
一人でいるのが一番好きだった。
正直家族も邪魔だった。
自分の生活に何も言わないなら一緒に暮らしても文句ないのだが、時折、学校へ行けと言ってくる。
何故そんなところに行かなければならない?
この世は無駄な人間が増えすぎた。
小さな子供達の声が耳に入ってきた。
壁にかかっている時計を見て納得した。
小学生の下校時間なのだろう。
賑やかな声は途切れる事がない。
何人かが纏まって帰ってる中、ぼっちで帰ってる猫背の少年を見付けた。
一度コンビニですれ違った事があった。
辛気臭い年下のガキ。
たったそれだけの接点だったが、俺は、そのガキに決めた。
今日。俺は自分の欲望に正直になる。
家を出て、家に向かう途中のガキに声を掛けた。
「ちょっと遊ばないか?」
そう言うと明らかに不審げに俺を見上げた。
「ほら」
この間発売したばかりのゲームソフトを見せると、ガキの警戒心は無くなった。
簡単に自分の部屋に入ってきた。
何の警戒心も無い小さなガキを見て興奮してきた。
あと少しでコイツは自分のモノになる。
ゲームに熱中する後ろ姿を見ながら、机の引き出しから、ナイフとハンマーを取り出した。
どちらで殺るのがいい?
ハンマーで殴ってからナイフで一刺し?
部屋が汚れる。
思い切り殴って頭から何か出てきても片付けるのが面倒だ。
汗ばむ自分の手のひらに目を落とす。
手!
そうだ、手で殺そう。
初めての体験に勃起してきた。
ガキの背後から近付き、首を一気に締めた。
ガキは泣きながら訳の分からない声を出した。
両手両足をバタつかせ、自分の手を振りほどこうとしてきた。
楽しい!
自分の力の中で苦しむその姿を見て気持ちが昂る。
だが、なかなか動きが止まらない。
自分の力じゃこれが限界か?
少し疲れてきたな。
ガキのヨダレが手につき、思わず手を離してしまった。
「きたねーな!」
匍匐前進でドアに近づくガキの頭をハンマーで力強く殴ると動きが止まった。
胸に耳を充てると、まだ心臓が動いていた。
仕方ない…。
あの時の老人のようにナイフで何度も何度も刺した。
いつもの小動物とは違う。
こんなにも苦労するとは!
何て楽しいんだ!!
壁一面に鮮血が飛んだ。