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老人

世の中の人間はオレのようなモノを異常者と言うのだろう。

オレからしたら異常者ってのはオレ以外の全ての人間やつらの事だと思ってる。誰もが自分の気持ちをごまかして、他の奴らの人間の方が異常者だと思うが。

人間なんて欲の固まりだろう?

食いたい、眠りたい、ゲームしたい、セックスがしたい……。

オレは人を殺したい、非常に分かりやすい。

いつからそんな風に思ったか?

そんな野暮ったいこと考えた事も無い。

逆にお前等はいつから美味いモノが食べたいと思うようになった?

難しい事はよく分からないがこう言うのを自然の摂理と言うんじゃないのか?

欲望が成長の過程だと言うのならオレの考えは全く異常では無いだろう。

強い風が窓をカタカタと揺らしていた。

向かい側に暮らす一人の老人が通りに落ちた枯れ葉をホウキで履いていた。

人畜無害そうな老人はきっちり自分の家の前だけをキレイに履きさっさと家に入って行った。

彼女もオレと同類だ。

幼い頃オレは何度か彼女と言葉を交わした事があった。

誰に対しても笑顔で接して当たり障りの無い会話をする彼女のある異常行為を見るまではオレと彼女は違う人間だと思っていた。

あの日…、クラブ活動でいつもより帰りの遅くなったオレは消えかけの外灯が照らす夜道を一人で歩いていた。

あの日も風の強い日だった。


『ギャー』


と耳障りな甲高い獣の鳴き声が風に運ばれて耳に入った。

聞いた事の無いその声がオレの好奇心をくすぐった。

言うなればこの世の終わりを嘆くような断末魔のような叫び声。

胸がワクワクした。

その声は老人の庭から聞こえた。

家を囲っている生け垣からそっと覗くと老婆が先の鋭いナイフで壁に押し当てた仔猫の腹を何度も何度も刺していた。

もう事切れたのであろうぐったりしている仔猫の腹を何度も刺す老婆の手は赤く染まっていた。

この情景にオレはとても興奮していた。

それまで過ごした時間の中で一番生きていると感じた瞬間だった。

もっとよく見ようと身を乗り出したため生け垣の草木がバサバサと音を立て、老人がオレの気配に気付いた。

老人は別に驚いた様子も無くじっとこちらを見ていた。

その表情は今までの愛想のいい彼女から想像できない冷たい…、イヤ、これが人間なのか?本当に生きているモノなのかと思うほど何の感情も無い、無の表情かおだった。

やがて、彼女は低く湿った声で唸るような声を出した。


「お前は家の中に入ってきた虫を殺す時罪悪感をもつか?そんなの無いだろう?それと同じ事だ。コイツは私の庭に入ってきた、だから殺した」



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