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《バウ!》
私には夜だけ遊ぶ事のできる友達がいた。それは真っ黒な、影のような揺らめきを纏った犬だった。
何処に行くにも夜の間は付いてきて、私が疲れて眠り、光の差す朝の、目を覚ます頃にはいなくなる奇妙な友達。
夜道の先を行く黒い犬の後を追いかけた。黒い犬の好きな場所は私の好きな場所だった。
曇った闇夜も金色の双眸が光って道を先導した。何処とも知れない場所へ、誰もいない場所へ、影の影の中へ。
闇の先には赤い目をした黒い犬の群れがいて、こちらをじっと見つめているのだ。犬は馬ほどの大きさがあるようにも見え、小鳥ほど小さいようにも見えて奇妙だった。
私を見下ろし犬達は赤い目を揺らめかせると、空へ首を反らし遠吠えのような警告の声を上げる。
《ウゥーオオォ》
すると、金色の眼をした黒い犬が擦り寄ってきてクンクンと甘えた声を出す。
何故お前は鳴かないのかと聞くと、情けない声を出すのみ。赤い目の犬の一頭が鳴くのを止めて、私達を見下ろす。牙を剥き出して唸り始めた。
金色の眼の犬が怯える。私はびっくりしてしまってその場から逃げ出していた。黒い犬の先導もつけずに。影の色濃い闇にあっという間に飲み込まれて、自分という存在が不安定になるのを感じた。私という形が無くなり、影の意思の中の一つであるような。
《バウ!》
金色の二つの光が瞬いた。黒い犬は私に寄り添い、“外”に向かって先導した。光の中、大分経っていたらしい昼の太陽の下に出て眩しく思う。ただ今までと違う事が一つあった。影のような犬が、光の下に出てもいなくなる事が無くなったのだ。
私は夜の友達が昼も傍に居られる事を喜んだ。
私は何時から疎ましく思ったのだろう。身勝手に記憶を歪め私の為に影との縁を切った犬を邪険に扱った。
だが、一つ言わせて貰うならば迂闊な魔の闇に踏み込んだ子供など放っておけば良かったのだと……私は言いたい。




