あとがき 『有り難うございました』
♦最後まで読んで下さって本当に有り難うございます。長い間、思い温めて来た作品を不特定多数の方々に公開させて頂ける機会を得られたことに感無量です。過去に何度も試みましたが中途で挫折して結果を出せないでいました。とにかくまずは一つ「書き上げる」ことを目標に、身近な事柄を素材にしたフィクションに挑戦しました。
♦主人公である直樹の姿に自分の生き方を重ね合わせ、私自身が深い感慨にとらわれながらこの作品を書き綴って参りました。とりわけ大不況が続く現在、仕事と自分の生き方の間で悩まれている方が多いと思います。そういう方々の共感を得られるストーリー展開を意識し、若干唐突とも思えるかもしれないラストのシーンに思いを馳せて頂けたら幸甚です。
♥実際に書きながら痛感することは経験や体験(間接的な疑似経験や体験でも良いのですが)が無い事はフィクションでも書けないと言うことです。イマジネーションを駆使して空想を広げるにしても、その土台となる経験・体験が乏しいと空想の広がりも限られるように思えます。とりわけ、価値あるコンテンツを他人様に伝える為には自らが価値ある生き様を具備している必要があることを痛感致しました。そういう生き方を出来て来ているかどうかの判断は客観的には難しいところです。ただ、今後、更に新しい作品を書くに当たって心掛けたいと思うことは、過去は変えられませんが、「今」と「未来」は制御可能です。正確には制御可能な部分が少なくないはずです。「今」から「将来」にかけての「人生」を見据えていきたいと思います。
♠この作品は想像力と映像に訴える「シナリオ」形式をとらせて頂きました。そこでは本来、説明・解説やナレーターの類の力を借りず、全て出演者の言葉だけで受け手(読者)の方にストーリー展開を理解して頂くのが基本ですが、まだまだ力不足の為に小説とシナリオの折衷のような作品に仕上がっていることを承知しております。挿絵(写真)にも挑戦しましたが技術的な問題で質やサイズ等に難があります。その点、読み苦しいとこが多々あったことを御容赦下さいませ。
♦ネットの発展を受けて時代はどんどん便利なものになって来ました。内容をご覧下さってお分かりの通り、発想はアナログですが、中身が深く濃い内容の作品を情報発信していけたらと思っております。公に共有する文学には背景や経緯如何に寄らず何か「ほっこり」させて気持ちを前向きに仕向けてくれる力を持ち合せる役割があると感じています。これまでは私自身が沢山の著書から学び、勇気づけられ、助けられ、育てられてきました。人は自らの体験(特に失敗)か他人から直に聞き知ったこと、そして書かれた著作(読書)を通じてしか学ぶことができません。自身の体験や家族・知人・友人からの一時情報は限りがありますが、読書から得られる情報は無限です。読書を通じてこれまで沢山の恩恵に預かって参りました。
♥今後は私自身が書き手として発信する側にも立たせて頂く機会を頂戴し、文学においては、「書く」プロセスにおいて客観的に自分自身と向き合いながら自らが「成長」出来、受け手の側の皆様にも何かしらの「ほっこり」をお届け出来たら嬉しいです。熟年世代に差し掛かっている今、日々の忙しさにかまけて遠ざかっていた「文学」や「音楽」こそが生活の『栄養』であり人生という『畑』での『収穫』をより実り多きものにしてくれる大切な『肥料』であることを改めて認識させられます。
♠今回初めて公開させて頂きました「黄昏」は短編小説ではありますが全編と後編に渡る、それなりのボリューム感のある作品にもかかわらず最後まで御付き合い下さいましたことに心から感謝申し上げます。
有り難うございました。
2013年12月30日
福富 康