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「では、私の両親と貴女の両親が、私と貴女が生まれて間もない時からの約束であると言うことですか?悪いことは言いません。こんなところにいては、あなたも殺されてしまうのも時間の問題です。自国に帰った方がいい。こんな状態です。誰もあなたを攻めるモノもいないでしょう。せっかく、こんな中、いらっしゃって下さったのに申し訳ないです。レイーリア姫」


私は最大限の礼儀を払って、謝罪した。


彼女は小国ながらも最強と名高い、彼のエンバー国の唯一の姫。

レイーリア・メネリオン・エンバーと名乗った。


さすがは光のエルフ王の血を引く家系であるエンバー王家。

力もかなりのものなのだろう。

ヒト以外は基本的に力あるモノは美しい容姿をしている。


儚くも、美しい、まさしく絶世の美貌の彼女に初見時は美姫を見慣れているはずの私でさえ眼を奪われた。銀の髪に榛色の瞳。妖艶とは違い、どちらかと言うと、神話や童話の中の聖なる御使いのようだ。


誰ですかね。醜いから表に出て来ないとか言ったのは。


私の感想は兎も角、彼女の印象は大人しい上に、頭もあまり回らないように思えた。

先ほどの謁見での態度を思うと、残念ながら、そう判断せざるを得ない。しかし、私の勘がそうではないと、片隅で警報を鳴らしている。こう言う場合は、自分の勘を信じることにしているので、まずは様子見と言ったところでしょうか。

様子見した所で意味のないことに気が付く。冷静沈着、冷酷と言われる私にしては珍しいと自分でも嗤った。もちろん、そんなことは尾首にも出さない。この状況だ。どちらにしろ、きっと、無理だろう。


それは置いておくとしても、どうやら、私の母親と彼女の母親同士が親友であり私達の結婚の約束をしていたらしい。もちろん、父親同士も了解しているらしく、証書まで持参して来た。亡き両親の願いを叶えてやりたいのはやまやまだが、どう考えても、自分の将来を思うと命の危険はあっても決して、楽しい生活を送ることは不可能に近い。


これが平和な時代ならかまわなかったかもしれない。

だが、現状は、私の妃になれば命が狙われるのは日常茶飯事。挙句、難癖つけられて、位を剥奪され王城を追い出され、逃亡生活になるかもしれない。そうなると、姫の後ろ盾でもあるエンバー国をも巻き込むことは間違いなく、その上、お姫様には逃亡生活や戦争は無理だろう。

私は王子と言っても軍人としていたことの方が長いし、王子業よりも性に合っている為、大したことはない。何よりも自分が決めたことだ。しかし、彼女の場合はたまたま、結婚相手が私と言うだけ。それに彼女の場合は私以外にも彼女を伴侶にと望む声は想像を超える多さであるのは想像に難くない。


私は決めている。

どんなことになろうとも、何があっても、どんな犠牲を払おうともローシェンナ王になると。


父との約束でもあるが、ゼイアスやウィージルに国を任せては民が苦しむのは眼に見えている。

2人はどうしようもない無能な上に、大変な浪費家だ。母方の実家に体のいい操り人形にされ、国や民を食い物にされるのが目に見えている。私は王位などに興味はなかったが、民の苦しむ姿は見たくなかった。せっかく、先王である父がここまで導いて来たのだ。そうなると、現状は、王になるしか道はないのである。そして、私には王になる資格もあった。


私は決めた。

必ず、王になって、父の後を継ぎ、民が住みやすい豊かな国を作ろうと。


先王である父が遺言を書いてくれていたが、兄妹達が異議を唱えこうなることは予想していた。しかし、私に後ろ盾がないことが思っていた以上に響いた。私の立場はかんり不利な状況だ。しかも、周りのモノ達が暗殺により、次々に命を失っていく。どうやら、敵は邪魔な存在は徹底的に、実力行使で排除する方針のようだ。それは王子も例外ではない。7人いた王子のうち、生き残っているのは暗殺を実行していると思われる第一王子のゼイアスと第二王子のウィージル、私、そして、第六王子のライロッドしかいない。


ライロッドは、幼いながらも私を慕ってくれていた。

しかし、先日、私の方に付いてくれていた公爵家出身でもあり、ライロッドの母親が暗殺された。

母親を早くに亡くした私を彼女は自分の子供のように気に掛けてくれた数少ない人間であった。

なのに護れなかった。


私はすぐに、両親亡き今、母親は違えど、唯一の肉親と思えるライロッドを護れるように、私の傍に置いている。


日々、命の危険と隣合わせの私の傍に、これ以上、失うものを増やすわけにはいかない。


彼女は見たところ大事に育てられてきた深窓の姫君のようだ。

そんな彼女を俺の事情で巻き込むのも躊躇われた。

また、彼女が利用されて敵になるとも限らない。


ただ、このまま返してしまうのは惜しいと、今までどんな女にも抱いたことのない興味を惹かれてのは確かだ。こうしていても、彼女は別段、私の容姿にも地位にも関心を示さない様子が伺える。

力は容姿に比例する。桁外れの力を持つ私は当然容姿も優れており、女も男も無条件に寄って来た。そんな私を無関心に見返すだけだ。このような態度を取られたのは初めてで新鮮だった。


色々なことを思いながら彼女を見つめた。



そうしたら、彼女からは思いも依らない言葉が返って来て、耳を疑った。



「わかってるじゃないか。我が同士がボンクラだったら、即、切り捨てるところだったが、なかなか悪くない。しかも、闇と光の精霊を両方従えていると言うのも面白いな。だが、もう少し、観察眼と勘を磨かないとチャンスを逃す」


私は愕然となった。


先ほどの謁見での態度とまるで違うではないか。

しかも、中身と外見のギャップが激しすぎる。


「そんな阿呆面を晒していると、敵に寝首を掛かれるぞ?」


その言葉にはっとして、気を取り直す。

先ほどの謁見では噂通り、病弱そうにした挙句、舌足らずで頭の悪そうな発言をしていた・・・

あれはやはり、演技だったか。


とりあえず、私は口を開いた。


「寝首は掛かれ慣れているから問題ありません。が、これはどういうことか聞いても?しかも、私が精霊持ちと?」


私は一番の疑問を口にした。

そうして彼女は語った。


精霊を従えてるのは自分には勘で解るから、惚けるかどうかはどうでもいい。自分が確認した真実が全てだと。

先王である私の父親と約束してここに来たこと。

命を落とす危険も、最悪戦争になる危険があることも承知のこと。

結婚もあくまでも私が王位に付くまでであり、落ち着いたら、離縁をすること。





そして、彼女の榛色の瞳が黄金の強い光を放ち、まっすぐに私の目を見て彼女は言った。





「私は何があっても、絶対にあなたを裏切らない。例え最後の一人になろうともあなたの味方になると誓おう。あなたに嘘は言わないし、隠し事もしない。ただし、あなたが進むべき道を間違え民を苦しむ外道に成り下がったら、遠慮なく正してやろう。だから、あなたも私に誓ってくれ」





私はこの時、彼女のその角度によって、色が変わって見える瞳に捕らえられたのかもしれない。




























私は、この日、女王に出逢った。










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