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ここはアランブラ大陸の大国ローシェンナ。
神族を中心に実り豊かで栄えていた国であるが、先の国王の崩御によりそれがあっさりと崩れ、戦乱の世と化すのは時間の問題であった。
先のローシェンナの王であるシーリス王は、跡継ぎにと今は亡き正妃の子である第四王子を指名する遺言を残していったが、それに異を唱えたのがゼイアス第一王子とウィージル第二王子である。
彼らは王の遺言の真偽から始まり、ジーン第四王子の王としての資質についてや後ろ盾がないこと等を理由に王の即位を認めない。
ゼイアス第一王子は母親が隣の軍事国家であるウイスタリアの、ウィージル第二王子は母親のセイドリード公爵の後ろ盾がそれぞれあり、権力にモノを言わせてジーン第四王子の即位に横槍を入れた。
国民は皆、正妃の子であり過去3度の侵略の際に敵国を退き、その凄まじい戦い振りから血濡れの王子と、最近では深紅の闇と言われるジーン第四王子を支持した。
戦績はもちろんのこと、彼は民の為に多くの事業を行っており、民の生活を豊かにしたことも大きい。
しかし、母親が傾国の美女と言われ、正妃であったが彼女は滅びた一族の最後の生き残りであった為、後ろ盾が父王以外になかった。貴族にとって煙たい政策ばかりを行おうとすることも相俟って、有力貴族からの指示もあまりなく苦しい立場に立たされた。
王が空位のまま、後ろ盾のないジーン第四王子が廃位に追い込まれそうになりながらも何とか持ちこたえていたが、対立は深まり、日に日に国は荒れローシェンナ全土を巻き込んでの内乱になるのも時間の問題かと思われた。
が、エンバー国の王女が彼の元に嫁ぐ為に訪れたことで変化したのである。
彼女はエンバー国の唯一の王女で今まで、公式に姿を現すことがなかった王女である。
その理由としては、病の為、王家に溺愛されている為、対人恐怖症の為、エルフ王の血を引くエンバー国の王家は皆麗しいが彼女だけ酷く醜く外に出せない為とも言われていたが真相は謎であった。
エンバー国はアランブラ大陸の南方の小国でありながら、神族とエルフ族が多く住み、魔法と魔術に長けており、聖獣が多く住まう国であり、水龍と風龍が棲まう国であり、龍騎士が多い。
また、平和主義の国でもある為、その高い軍事力を用いて侵略することはないが、侵略者には容赦ないことでも有名である。豊かなエンバー国を侵略しようとして、焦土と化した国はそう少なくない。
エンバー国の現王には子が三人。
うち王女は一人しかいない。
そのたった一人の王女がジーン第四王子と結婚。
その知らせは、エンバー国の正式な使者と共に国中を駆け巡った。