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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

黙示録

作者: 黒井 呂人

■ 某聖書の一文を使用しています。その宗教等を否定するつもりはありません。ただ、その一文を読んでわたしが想像したことを書いています。

■ 若干の残酷表現を含んでいます。デリケートな方の閲覧はお勧めいたしません。

今日、一人の少女が処刑される。

罪名:殺人罪。

処刑方法:前代未聞の公開磔刑。


それだけではない。

彼女の殺害者数も、その規模も、言動も全てか前代未聞だ。

そして、処刑される今日この時にいたっても未だに身元不明であることも。



***



テレビの中央に1本の柱が映される。これが今日使用される処刑道具だ。

史上最悪の殺人者の処刑方法に、遥か昔に廃止された磔刑が選ばれたのはある意味必然である。

うわあぁぁああぁああ

音が地を揺らした。

本日の主役、史上最悪の殺人者、別名魔女の入場だ。

本人はApostle、『神の御遣い』と名乗っているが。

少女は両脇を処刑官に固められ、両手にはその白く細い腕には不釣り合いの枷が嵌められていた。


大量の罵声が、暴言が野次が最上級の憎しみが彼女の上に降り注ぐ。

だが彼女は笑っていた。

ピンと背筋を伸ばし顔を上げて真っ直ぐ前を見つめていた。

ニュースキャスタがその様子を罵る。

少女の表情は変わらない。綺麗な姿勢、綺麗な表情のまま彼女は磔の前に立つ。

ぐるりと辺りを見渡してまた笑った。

嬉しそうに楽しそうに笑った。

愚かな、哀れな人間。

ボクも笑った、その愚かしさに。


処刑官が少女を磔へと縛り上げる。

腕は頭上高く縫い止められ、首、腹、腰、太腿に足首。

頑丈に厳重に6箇所を縛られ、身じろぎひとつできはしないだろう。

彼女の表情は変わらない。

朗々と処刑官が少女の罪状を読み上げた。

2人の処刑官が槍を携えて彼女の両脇に立つ。

少女の表情は変わらない。

処刑官の1人が何か言い残すことはないか、と尋ねた。

ボクは思わず笑ってしまう。

人権もなにもない扱いを、殺し方をするくせにこんなところだけ人間扱いをする彼等に。

彼女もおかしかったのか笑みを深めた。

ゆっくりと彼女の赤い唇が歪む。


「…ふっ、ふふふ。くふ、あはっあはははは」

琅琅で、あらゆる美句を連ねても言い現せないほどに美しい音。

しかし、その意味は神秘であり醜悪。神聖であり狂気に満ちていた。

「災いだ!災いだ!地にいる人間は災いだ!!残り3人の御使いが沈黙の喇叭を吹き鳴らす!」

慌てた処刑官が急いで合図を下す。

2本の槍が少女の体に突き刺さった。


だか、遅い。

彼女は最後の追撃を落とし終わっている。

拡声器も何も使っていないのに、彼女の声は隅々まで響いた。

全ての人間が彼女の審判を聞いた。


少女の体から力が抜ける。史上最悪の殺人者が死んだ。

会場に大きな歓声が響く。だが、純粋ではない。

彼女の身体から溢れ出した血が長い亜麻色の髪を濡らした。


一瞬の閃光、永遠の轟音。歓喜の声は恐慌へと移り行く。

ボクはその眩しさに目を細めた。

その音量に耐えられなかったのか、スピーカーが嫌な音をたてる。

TVの映像がブツリと切れて砂嵐を流す。

一瞬見えたものは阿鼻叫喚。


完璧だ。彼女は完璧に自らの役割を演出を終えた。

これほどに美しく醜悪で、滑稽にして誠実なものがあるだろうか?

ボクはTVを消した。出掛けないと行けない。


49.5億人。

今日までに、最後の演出を含めて彼女が殺した人間の数だ。

といっても大まかな数字だが。

そして、現人口は約16.5億人。

残り3人で1人頭約5.5億人だ。


さあ出掛けよう。今日もいい天気だ。


最後のあの瞬間目があったと思うのはボクの自惚れだろうか。

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