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道中もひんやりとした空気を感じていた。

きっとルシウス様の魔力が溢れ出てるのだろうけど、領地の端にある別邸近辺になるとその冷たさはあまり感じなくなっていた。

公爵邸も立派だけれど、この別邸も公爵家のものだからか立派なものだった。



荷物を運び入れた使用人たちは、ここで私をどう扱えばいいのか戸惑っている様子だった。

私はポンっと手を叩く。



「何もしなくていいなんて、とても幸福だと思わない?」



ニコニコと笑顔の私に使用人たちはポカンとしていた。



「あの冷え冷えとした公爵邸で閣下の顔色を伺いながら公爵夫人として働くより、ここでのんびりと過ごせるなんてとても気楽だわ。生活資金は公爵様が負担なさってくれるのでしょう?」



貴族として生まれたからには貴族としての責務がある。

領民たちの暮らしを良くし、手本となるように立ち振る舞う。

その上で貴族同士の場合は情報を早く入手できないといけない。

お茶会や夜会の社交場で常に目を光らせ腹の探り合いをするギスギスとした空間。

そんなところから解放され、自由に暮らしていいというのは天啓に思えた。

私は宝石やドレスにさほど興味がない。

伯爵令嬢として、公爵夫人として必要だと思ったからある程度整えていただけ。

それもしなくていいというのなら、思い切り自由に過ごしたい。



「私、やりたいことがたくさんあったのよ」


「やりたいこと、ですか?」


「ええ。庭師に指示を出してお願いするのではなく、自分の手で理想の庭を作りたいの」



ヴァンフロスト家が氷魔法の家系ならば、シルヴェイン家は治癒魔法を使う家系。

教会に所属している聖魔法師と何が違うのかというと、治癒魔法は傷を治したり体力を回復することができる。

聖魔法は毒等の病の元を取り除き、清める。

例えば毒剣で斬られた患者の毒を取り除くのが聖魔法師、斬られた傷跡を治すのが治癒魔法のため、教会にはシルヴェイン家の血筋の者も働いている。

治癒のシルヴェイン家の中でも私は植物さえも癒やし育てる力を持っていた。

私の魔法の光の色も合わせて緑の魔法と呼ばれている。

私は血を見るのが苦手だった。

シルヴェイン家に生まれたからにはと、孤児院や教会で魔法を使っての実践をよくさせられていた。

熱や咳で苦しむ人を治すのは平気だった。

けれど、魔物討伐の怪我や馬車の事故での怪我みたいなたくさんの血が出る現場が私はとても恐ろしかった。

もし私が上手くできなかったら?

間に合わなくて死んでしまったら?

私は臆病者だった。

教会から満身創痍で帰宅した私を癒やしてくれるのは、色とりどりの花たちだった。



「あそこには何を植えようかしら」


「奥様……この土地は花が育ちにくいのですが、よろしいのですか?」


「腕がなるわね。私の魔法はどのくらい効果があるのかの検証もしましょうか」



荒れた庭の土に触れると、少しひんやりとしていた。

この庭から始めて、領地に緑を増やせたら、あの公爵閣下はどんな顔をするだろうか。

そこまで考えて私は、公爵閣下のこの対応に少なくとも苛立っていたのだと気付いた。

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