【超超短編小説】祖父の山
持ち山がある。
山と言ったところで何がある訳でもない、高速道路や新幹線から見るタイプの手入れされていないあの野山がひとつ、どうやら祖父のものとしてあると言うのを聞いた。
「なんで爺さんは山なんか持ってたの?」
精進落としに箸を伸ばしながら父親に訊いたが首を傾げている。
叔父たちにも尋ねてみたが、
「バブルの前からだもんなぁ、あれ」
「今さらホテルもないしな」
「まぁ付き合いで買ったんだろうなぁ」
なるほど、誰も知らないらしい。
田舎によくある話なのだろう。
しかし登記簿も見ていないから何とも曖昧な話だ。
それこそ死んだ祖父は、持ち家と隣家の土地所有権を巡って裁判をして幅15cmほどの溝川を半分に割った人間だ。
その山だって本当はどうだか怪しいものである。
その山で何か採れる訳でも無ければ、物流拠点に買いたいと言う企業が出る訳でも無い。
仮にそんな話が持ち上がったとしても、近所には似たような山が幾らでもあるのだから売ったところで二束三文だろう。
祖父は普通に先祖代々の墓に骨を埋めた。
別段、その山に拘りがあった訳でもなく「そこに埋めてくれ」などとは言わなかった。
この地方の納骨風習なのか、祖父の骨は墓石の下にある穴へ乱雑に投げ込まれた。
和尚が骨壷から取り出した骨片がひとつ、転がり落ちた。
それを拾い上げた瞬間に思い立った。
あの山の中に、勝手にお社様を建てよう。
それらしい石仏みたいな小さい石を置いておけば良いだろう。
その下に、木箱に収めたこの骨片を置く。
祖父はその山で神となるのだ。
もしかしたら先客がいるかも知れないが、構うものか。
いつかは誰かが訪れて、ネット怪談か何かで見るかもしれない。
それはそれで楽しみだ。




