EP1-4. ボーイ・ミーツ・インセクト・ガール
この宇宙船ジラフ号には重力装置があり、船内では重力が発生している。僕らは正体不明の宇宙船や宇宙生物かわからないものをメインデッキの格納庫の床から見上げている。
「間近で見ると、宇宙船と宇宙船を混ぜたような姿だな。」
オーギンさんはその宇宙船を見上げたまま言う。その横で、チロルのドローンはドローンに生えているアームの手で銃を持っている。
「本当ですね。すごい形だ。どうやって調べますか。」
得体がわからないものをどう調べていくのか、僕にはそんな経験はない。オーギンさんはどうやって調べるつもりなのだろうか。
「宇宙船なら、コクピットがあるはずだ。このサイズであれば、それがどこかにあるはずだろう。」
コクピット、確か……。
「そういえば、チロルが宇宙船に”目”みたいな場所があって、それがコクピットかもと言っていましたね。」
チロルがスキャンしたときに言っていたことを思い出す。
宇宙船の”目”というよりかは宇宙生物の”目”と言えるような部位だ。そこにコクピットがあるのだろうか。
「そうです。スキャンした結果としては”目”の中に人が2人入れるほどの空間が確認できました。」
空間か。それに2人分も。もし2人もいるのであれば、用心しなければ。
「良し。そこから調べていこう。タダヒロ手伝ってくれ。あそこにハシゴをかける。」
オーギンさんはそう言うと、格納庫の端にあった梯子を持ってくる。僕は宇宙船の”目”の真下から梯子をかける手伝いをする。
「タダヒロ、梯子を支えておいてくれ。俺が昇って確かめてくる。」
梯子をかけたオーギンさんは僕に梯子を支えるように促すと、梯子を昇って行く。オーギンは”目”のところまで昇ると、”目”の部分を開けられないかレバーのようなものが付近にないか確かめてくる。
「ダメだ。”目”は開かない。ハッチのようなドアになっていると思ったんだが。」
どうやら、開ける手段が見つからなかったようだ。オーギンは梯子を降りていく。僕も”目”がどうなっているか興味がそそられる。
「僕も昇って見ていいですか。」
「ああ、俺が梯子を支えておいてやるから見てこい。」
オーギンは見るだけ見てこいというふうに上を指して、梯子を支えてくれる。僕は梯子に足をかけて昇っていく。”目”のところまで昇ると、”目”の外観が見える。”目”の表面は黒い六角状のパネル群に覆われている。まるで、本当に虫の”目”みたいだ。自分の体を”目”に近づけていく。
「これが”目”か……。なっ!どういうことだ。勝手に”目”が開いていく。」
タダヒロが”目”に手で触れると、途端に”目”が反応したかのように”目”の部分がハッチのドラのように上方向に開き始めた。
「タダヒロ!どうした。何があった!」
オーギンさんがビックリしたように僕へ声を掛ける。
「オーギンさん、手で”目”に触れたら、勝手に”目”が開きました。」
僕にも何が何だがわからない。”目”に触れたと思ったら、勝手に開き始めたからだ。オーギンさんが触れたときには何も反応がなかったのに。僕が触れたら開いた……なぜだろう。
「なんだと……何か見えるか。それにしてもなんで開いたんだ。」
オーギンは僕に何か見えないか問いかける。開いたばかりの”目”の中は、繭があった。その繭の他には誰もいないように見える。繭の糸が勝手にうっすらと解かれ始め、人影が見えてくる。
「えーと、人が。人が1人います。」
人影が鮮明になってくる。見たことがない宇宙人がそこに見える。それに……。
「知らない宇宙人だ。それに女の子……なのか。」
女性なのか、胸部にふくらみが見える。それに身長はわからないが顔は少し大人になりきってないようにも見える。包んでいた繭の糸が引いていき、その姿もよく見えるようになってきた。
僕は思わずつぶやいた。
「美しい。きれいだ……。」
僕にとって、その姿は美しく見えたんだ。
全身が白銀の雪世界のように白い美しさだ。
腰まで伸びた髪は白く、アクセントに青空色が少し混ざっている。
額には垂れさがった2本の触覚。耳は垂れさがったうさぎのようなふさふさの耳だ。
肌は雪景色のように白く、羽毛が生えている。肢体は長く細く折れそうな程で可憐で美しい。
特徴的なのが腕が4本あるのだ。2本の腕は普通だが、もう2本の腕は白い甲殻で覆われており、さらに細く、少し短い。副腕とでも言うべきものだろうか。
顔を見ると切れ長の目をしており、その神秘さをさらに引き立てるようだ。まるで蚕が雪女になったような姿だ。
僕はその神秘的な姿から目を話すことができず、見入ってしまった。
「知らない宇宙人だと……。チロル、スキャンして検索できるか。」
オーギンさんが冷静にチロルで指示を出す。
「任されました。スキャンおよび検索を実施します。」
チロルは雪女のような宇宙人をスキャンして、宇宙人データベースに検索をかける。
「検索完了しました。データベースに照合する宇宙人はいませんでした。おそらく新種の宇宙人だと思われます。」
オーギンさんは驚いた顔をする。
「新種だと!?宇宙生物ではなかったが、人の方が新種だとは…。これは宇宙生命体管理局の案件だな。」
彼は難しい顔をする。その間も僕は目の前の宇宙人にずっと見入っていた。
「オーギンさん!宇宙人の子が目を開きました。」
宇宙人が目を覚ます。僕は驚いた。その目に。その目に白目はなく、その目は美しい黒目のみだった。
「ンッ……。ワタシハ 起キタノ? ココハドコ?」
僕はさらに驚く。
目の前の宇宙人が口を開いたのだ。宇宙人の声も鈴のように美しい。僕は宇宙人に返事をする。
「しゃべった……。ここはサルベージ船ジラフ号の中だよ。君の宇宙船が発光信号を出していたから、回収したんだ。」
オーギンさんはニヤつきながら呟いた。
「まさか”オコシテ”の発光信号の正体が未知の宇宙人だとは。儲けものだな。」
どうやら未知の宇宙人の賞金で買う新パーツの算段を頭の中でしているのだろうか。
宇宙人は僕の目を見つめながら、さらに語りかけてきた。
「ソウナノ……。ワタシハ シルエ。アナタハ?」
僕は自分のことを聞かれているとはすぐにはわからなかった。その宇宙人の名前が妙に頭に残っていた。”シルエ”。目の前の宇宙人の名前は”シルエ”。次第に自分のことが聞かれていることを理解した僕は答える。
「君はシルエというのか。僕はタダヒロだ。よろしく、シルエさん。」
「ヨロシク、タダヒロ。ウゥ……。」
シルエは急に顔色を変えて、お腹に手を添える。僕はびっくりして、心配になる。
「どうしたのかい。どこか悪いのかい。」
僕はシルエに気遣う。
「オナカ ガ スイタ。」
彼女は大真面目な顔で言う。
「えっ……。」
僕は拍子抜けをして苦笑してしまった。
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