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最終EP12. 宇宙生命体管理局


(1)


 レッドバルーン号の戦いから、シルエは元の姿に戻った後、眠り込んだ。シルエが眠ったまま、ニュークーロンシティのジラフハウスへと戻ってきた。数日後、シルエは目を覚まし、お腹が空いたと言い、料理をジラフハウスのリビングでたっぷりと食べている。

「やっぱりシルエは食べる姿が似合うね。」

「チュルチュル。ゴハン、オイシイ。」

 シルエはタダヒロが作ったスープ料理を満足げに吸うように飲んでいる。

「まったく、ハウスの食糧庫がまたなくなっちまうよ。局から報奨金をたんまりもらわねぇと。」

 オーギンは苦々しくシルエの食べっぷりを見ている。

「そこは大丈夫ですわ。局はケチではありませんわ。」

 アンナさんがオーギンさんの悩みをフォローする。

「それにしても、シルエとみんなも無事で良かったです。」

「おいおい、私のドローンが壊れていることを忘れてもらっては困りますぜ。」

 チロルが突っ込みを入れる。

「そうだったね。チロル、ごめんごめん。」

 チロルにもたくさん助けてもらった。

「まぁ、それだけですんで良かったかもしれねぇ。誰も死なずに良かった。」

「そうですわね。最後までどうなるかと思いましたわ。」

「本当にそうですよ。まさか、シルエがあんなことになるなんて。」

 誰も死なずにすんで本当に良かった。シルエが変身した時はどうなるかと思った。

「アンナコトッテ、ナニ?」

 シルエがきょとんした顔でスープの皿から顔を出す。

「宇宙に放り出されてから、何も憶えていないの?」

「ウン、ナニモ ワカラナイ。」

 変身したことも憶えていないのか。それに自分が変身能力があることも知らなさそうだ。

「あれだけのことがあったんです。憶えていないのも仕方ないのかもしれません。」

 アンナさんがシルエを気遣う。確かにあんなことがいきなり続けば憶えていないのもしょうがない。

「それもそうだな。まさか、シルエの姿が変わるとはな。一体何者なんだ、この子は?」

「それはきっと局で調べてもらえると思いますわ。」

 オーギンさんがシルエの正体を気にしているようだ。

「シルエはシルエだと思います。」

 でも僕にとって彼女はシルエ以外の何者でもない。


(2)


 ご飯を食べ終えた僕らはゆっくりとしていた。そこへ誰かが尋ねてくる。

「オーギンさん、誰か来ましたよ。」

 チロルが誰か来たのを感知したようだ。

「誰が来たんだ?」

 オーギンさんが首をかしげる。

「宇宙生命体管理局の者と名乗っています。」

 宇宙生命体管理局……アンナさんと同じ所属の方がだ。

「シルエのお迎えがきたのかもしれませんわ。」

 シルエの迎え……。

「こんにちは。ジラフ・サベージ・サービスはここであっているかな。私は宇宙人課 課長のガンプというものだ。」

 ガンプを名乗る制服をだるそうに着ている壮年の男がハウスに入ってきた。

「ガンプさんでしたのね。では、シルエさんのお迎えに?」

 どうやら本当に局の人らしく、アンナさんがその男に話しかける。

「これはアンナ君。そうだよ、新種の宇宙人さんをお迎えにきたんだ。」

 二人は知り合いらしい。

「それならば、ちょうどいいですわ。こちらにいるシルエさんがそのお人ですわ。」

 アンナさんがガンプという方にシルエを紹介する。

「ほう、こちらが。確かに見たこともな種族だね。彼女は丁重にこちらで預かるよ。」

 ガンプさんはシルエの方を見る。

「ガンプさん、報奨金はもらえるんでしょうな。」

 オーギンさんはガンプさんに大事なことを確認したいようだ。

「ええ、無事に守ってくれたこともありますから、満足してもらえる分のご用意はさせてもらうよ。」

「それはありがてぇ。」

オーギンさんは満足したような顔になる。

「ガンプさん、シルエは本当に管理局に連れて行くんですか。」

 僕は実感がわからず、思わずガンプさんに聞いてしまう。

「タダヒロ、そんなこと言ってもどうにもならねぇだろうが。」

 オーギンさんが僕を注意する。

「オーギンさん、良いんですよ。タダヒロ君、シルエさんは他の組織に狙われ、自分の正体もわからない。ましてや、変身する能力もあると聞いている。このままだと、危ない存在になりかねない。そこで、私たち管理局が保護せねばならないということをわかってほしい。」

 ガンプさんは優しく丁寧に僕を諭す。

「はい……。」

 わかっているつもりでいたが、シルエと別れるのはやはり辛い。

「タダヒロ、ワタシ、ドウナルノ?」

 話の中心となっているシルエが僕に何事か聞いてくる。本人は果汁ジュースに夢中になっていたようだ。

「シルエ、君はここを離れて、ガンプさんのところに行くんだよ。」

 ぼくはシルエに分かってもらうようにゆっくり言う。

「タダヒロモ ツイテクル?」

「いや、僕はついて行けないんだ。シルエは一人で行くんだよ。」

「エ…タダヒロ……来ナイノ。ヒトリハ……イヤ。」

 シルエは怒ったような顔になる。

「わかってくれ、シルエ。君のことを考えて、それが一番なんだ。」

「イヤ!タダヒロトハ ハナレナイ。シルエハ イカナイ。ココニイル。」

 シルエは激しく拒否をしてくる。

「困ったな。どうすれば良いだろう。」

「うーん、そうだね。シルエ君はタダヒロと離れるのが嫌なんだね?」

 ガンプさんは妙案を思いついたのか、シルエに確認する。

「ソウ タダヒロト ワカレナイ。」

 シルエ……。僕も別れたくない。

「もし、タダヒロくんも一緒だったらどうだろうか。それなら良いかい?」

「ウン、タダヒロモ 一緒ナラ イイ。」

 え、僕も一緒とはどういう意味なのだろうか。

「だそうだ、タダヒロ君、君も我々と来ないか。」

 僕が彼らの方に行く?どういうことだ?

「え……それって……。」

「君も管理局の人間となって、シルエを守るんだ。」

 ガンプさんが僕を勧誘している?

「シルエと一緒にいれる?」

 小さくつぶやく。シルエと一緒にいることができる!

「どうだろうか、タダヒロ君。」

「やります。僕も管理局の人になります。シルエと一緒なら!」

 僕は局に入ることを決意する。

「ジャア、タダヒロモ 一緒?」

 シルエが僕の方を見る。

「ああ、そうだよ。」

「ソレナラ、シルエモ イク!」

 シルエはほっとした顔になって、行くことに同意する。

「そうかい、それなら良かった、良かった。」

 ガンプさんも説得が成功したのか、顔がほころんでいる。

「待ってくれ、それなら、俺はどうなるんだ?ジラフ号のパイロットを失っちまう。」

 オーギンさんは戸惑った声でガンプさんに尋ねる。

「ごめんさない、オーギンさん、シルエを一人にするわけにはいきません。」

 僕はオーギンさんの方を向き直って謝る。でも、シルエと別れてしまってはいけないような気がするんだ。

「それでしたら、オーギンさん、あなたも我々の一員になりませんか。」

 オーギンさんも局の一員に?そうしたら、みんなで局に入ることができる。

「俺もかい?」

 オーギンさんはびっくりして聞き返す。

「ええ、かまいませんよ。タダヒロ君とシルエ君、二人のお目付け役としては適任です。」

「確かにそうだが、給料はどうなるんだ?」

 オーギンさん……がめつい……。ただでは転ばない気だ。僕は苦笑してしまう。

「これくらいでどうでしょう。それにジラフ号の費用一切はこちらで引き受けますよ。」

 ガンプさんはなにやらタブレットを出して、画面をオーギンさんに見せる。オーギンさんの顔は驚いている。

「な!まじか。それならお世話になるぜ。」

 オーギンさん二言もなく、局に入ることを了承する。サベージ業よりもよほど金の入り用が良いのだろう。

「これで一件落着かな。」

 ガンプさんはこれで問題はないという感じで肩を上げる。

「タダヒロさん、シルエさん、オーギンさん、ようこそ。宇宙生命体管理局へ。歓迎しますわ。」

 アンナさんが僕らを歓迎してくれる。

「アンナさん、ありがとうございます。」

 これからはアンナさんも仲間になる。

「タダヒロ、コレカラモ イッショダネ。」

 シルエが満面の笑顔で僕の方に顔を向ける。その笑顔に僕も嬉しくなる。


「ああ、これからも一緒だ。」

【あとがき】

 この作品を最後まで呼んでいただき、本当にありがとうございます。拙い文章ばかりで申し訳なく思いますが、最後までエピソードを最後まで書ききった作品はこれが初めてで、私の処女作といえるような作品になりました。この作品が完成するまで紆余曲折がありましたが、どのキャラ(悪役も含めて)も、思い入れがあるキャラたちとなりました。昔からスペースオペラが好きで、いつか自分の作品を書いてみたいと思い、筆をとった次第です。そして、この処女作を完成させたことにとても嬉しく思い、また一人でも読んでもらったことに望外の喜びを感じています。

 一旦は完結しますが、この作品はシリーズ化して続けていきたいと思っています。次回作もすでに書き始めていますが、年内いっぱいまでまだまだかかりそうです。

 読者の皆様にはもう一度感謝を述べたいと思います。ここまでお読み下さり、本当にありがとうございました。次の作品も読んでいただけることがあれば、感謝の念につきません。

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