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EP9-1. 襲撃

(1)


『宇宙生物』

 原初の生命が星内だけでなく、宇宙空間でも誕生した。理由は様々であるが、中でも全容が解明されていないアッシュ粒子がキーとなっていると言われている。このアッシュ粒子によって、さらに原初の宇宙生命が様々な宇宙生物へ進化し、誕生した。

 そして、原初の宇宙生命から地球の酸素のようにアッシュ粒子を生み出す存在が生まれ、その粒子が宇宙上に拡散していった。このアッシュ粒子の存在と拡散から増殖していき、宇宙生物は進化と繁栄を遂げることになる。


 この宇宙生物は宇宙人にとって利用価値がある。宇宙生物は自分より小さい宇宙生物あるいは宇宙上の岩石や宇宙船を食べる。その影響で体内に鉱物や油などの価値ある資源がある。また、宇宙生物を意のままに操ることができれば、兵器として用いることができる。そのため、宇宙に生きる人々にとって、宇宙生物は利用価値があるのだ。

 別に新種の宇宙人が発見された場合には、特殊な体内酵素や体内化合物あるいは超能力があれば、新たな科学技術や兵器に利用されうることがある。彼らを悪用する犯罪組織あるいは彼らを守り保護する宇宙生命体管理局が存在している。

 

 その犯罪組織のひとつ、”ツンドラのサーカス”は、様々な犯罪や依頼を受けてお金儲けをしている宇宙犯罪組織として存在している。その中で宇宙生物や新種の宇宙人を違法に捕獲して、生業としている奴らがいる。そのやつらとはレッドバルーン号の一味である。


(2)


「この星に降り立って、数か月か。」

 レッドバルーン号のリーダーであるイワノフが言った。

「だいぶ日にちが立ちましたね。」

 イワノフの部下であるソフィアが相槌をする。

「身分登録も必要がない地域だ。もしかすると、新種の宇宙人が紛れ込んでるかと思ったんだが。」

 彼ら一行はニュークーロンシティに降り立ち、何か獲物はいないか探している。

 2mほどのプロレスラーのような大柄な体格にきっちりとしたスーツ姿にサングラスをかけている男がイワノフ、170cmほどで大きな帽子をかぶって、胸元をはだけたスーツ姿に同じくサングラスの女がソフィアである。

「ターゲットになりそうなやつは見当たりません。」

「困ったもんだな。もう少し簡単にみつかるかと思ったんだが。」

 彼らは新種の宇宙人を見つけて、高値で売ろうとニュークーロンシティに滞在していたのであった。

「ずっと通行人にスキャンを繰り返していますが、宇宙人登録データベースに登録されていないような方は見当たりません。」

 そう言った彼はドローンだが、チロルと同じ母艦AIによるドローンだ。名前はノーズと言う。ただし、ノーズはレッドバルーン号の母艦AIである。街中でそれらしき宇宙人をスキャンしているが成果はでていない。

「ここらへんはダメかもしれんな。もうちょっと残って調べるが、新種の宇宙人が出なければ引き上げるとしよう。」

 イワノフは残念のような、いらつきのような顔をしている。

「イワノフ様の言う通り、その方が良いかと。」

 ソフィアはイワノフをとある出来事により心酔している。

「あれ、あそこの中華料理店にひとだかりができていますよ。」

 ノーズがひとだかりができている中華料理店に気づく。

「ノーズ、イワノフ様のお考え中なのよ。邪魔してはだめ。」

 ソフィアはイワノフの邪魔をされるのを嫌う。

「いや待て。一応確認しておくぞ。ノーズ見てきてくれ。」

 これだけ成果が出ていないのだ。何でもいいから結果が欲しいとイワノフは感じていた。

「ミスターイワノフ、わかりました。見てきます。」

 ノーズのドローンはひとだかりの上空を飛んでいき、中心になっている人を見に行く。

「これで当たりだったら、儲けもんだ。」

 イワノフは苦笑して言う。

「戻ってまいりました。見かけない虫系宇宙人の娘がご飯を次々に空にしているので、注目の的になっているようです。」

 ノーズが中華料理店から戻ってくる。

「そうか。で、スキャンの結果はどうだ?」

「スキャン結果ですか?スキャンは指示されておりませんので、やってはおりません。」

 イワノフはあきれてしまう。

「あのな、何のために確認しているんだ。新種の宇宙人を手に入れるためだろうが。」

「ミスターイワノフ、その通りです。」

「だったら、もう一度行ってスキャンしてこい。」

「わかりました。お待ちください。ミスターイワノフ。」

 ノーズは何も気にしていないかのようにスキャンしに行った。

「まったく、あのドローンは気が利かないわね。」

 ソフィアはイワノフの気をつかわせたことにイラついている。

「仕方がない。あれでも、レッドバルーン号の母艦AIなんだ。組織から与えられた以上、有効に使わなければいかん。」

 イワノフは仕方がないように言う。

「さすが、イワノフ様。お優しい方です。」

 ソフィアはどんなときもイワノフの言葉に肯定する。

「スキャンしてきました。」

 ノーズがまたもやひとだかりの中華料理店から戻ってきた。

「結果はどうなったんだ?新種か?」

「ミスターイワノフ、新種でした。」

「そうか、外れか。まぁこんなところに……えっ!新種か!本当に新種なのか?」

 イワノフはどうせ外れだと思っていたのか、予想外の言葉に驚く。

「はい、新種の可能性が非常に高いと思われます。」

 ノーズは私の調査は完璧ですと言わんばかりに返事をする。

「さすが、イワノフ様です。」

 ソフィアがさらにほめる。

「よし、ターゲットがきまった。その虫女を捕まえるぞ。」

 イワノフはソフィアの言葉を流し、久しぶりの仕事に気合が入る。

「今、やりますか。イワノフ様。」

「ソフィア、早まりすぎだ。今は人が多すぎる。虫女どもが帰る先をまず知ってから、策を練るぞ。」

 イワノフは大胆な男だが、仕事に入る時、最初は慎重になれる冷静さを持っている。

「さすが、イワノフ様。慎重ですね。」

「ソフィア、ほめすぎだ。」

イワノフはソフィアに釘をさすが、ソフィアは褒めることをやめることはない。

「あら、やだ。イワノフ様。」

「はぁ、とにかく奴らの後をつけるぞ。」

イワノフはあきれたように行って、お目当ての彼女の後をつけていく。


(3)

 

 僕とシルエは大量の外食を終え、帰路につこうとしていた。バイクに乗ろうとしたところで、大人しくしていたチロルが話しかけてきた。

「タダヒロ、少しよいか。伝えることがある。」

 チロルは声を落として僕に言う。何か大事な事だろうか。

「何だい、チロル?」

 ただならぬ雰囲気から僕は何事か感じた。

「どうやら、つけられているかもしれないぜ。」

「何だって。どうして……。まさか、シルエの存在がばれたのか。」

 ばれてしまえば、あまり良くないことが起きそうだ。

「その可能性は高い。実は中華料理店でシルエの食べっぷりで人だかりができているときに私以外のドローンがシルエをじっと見つめていたのだぜ。」

 まったくきづかなかった。そんなにドローンが近づいていたとは……。

「ということはシルエがスキャンされた可能性があるってことかい。」

「その通りだぜ。スキャンされていたら、シルエが未知の宇宙人だということがばれていることになる。」

「それはまずいな。つけているやつらがどんなやつかわかるか?そのドローンの持ち主だ。」

「どんなやつかはわからなかった。なにせ、人だかりはできているうえ、あのドローンが遠くにいて、こちらを見ているのはわかったんだけど、どんな持ち主がつれているかはひとだかりでわからなかったんだ。」

 あちらがこちらを見張っていて、感づいたとはバレれば、焦って襲ってくる可能性もあるはずだ。なるべく、気づいていないふうをよそう必要がある。

「そうか。チロル、ありがとう。気取られないようにひとけの多いところを通って帰ろう。」

「ドウシタ、ナニカアッタノ?」

シルエが長い首をかしげて触覚を揺らしながら聞いてくる。

「ううん、大丈夫だよ。シルエ。」

シルエを余計に不安にさせないようにしないと。

「ワカッタ。今カラ バイク 乗ルノ?」

「そうだよ。バイクに乗って、ジラフハウスまで帰るんだ。チロル、そのドローンが出てこないか見張っててくれ。もし怪しい動きをしていたら教えてくれ。後、オーギンさんにも連絡を頼む。」

 チロルに周りを見張っててもらおう。こういう時にチロルがいると心強い。

「任されましたぜ!」

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