妄想の帝国111 米米米らぷそでぃ
いわゆる雨がたんと降る梅雨の時期に入ろうとするニホン国。だがしかし気候変動の余波なのか、気温が春先に戻ったり、と一気に夏になったりあわただしい。主食とされるコメの作付にいそしむ農家たちも振り回されまくっているが、なによりもニホン国民が頭をいためているのがコメの高騰である。数年前から円安で輸入品、特に食料品やらそれを材料とした加工食品の値上がりが続く中、米だけは―なんとか食べられそうという期待を昨年は大幅に裏切る高値。そして高値が続く中、国民の不満もバク上がり、当然のことながら、その矛先はニホン国政府、特に農業関連担当大臣にむき
「あー、前大臣が失言してくれたおかげで、ようやく僕も前の不名誉を名誉挽回する機会を得たぞ」
とひそかに喜んでいるのはオオイズミ・チンジロウ。前に他の要職についたときに、頓珍漢発言やら無策でワールドワイドに無知蒙昧をさらけ出したので、リベンジを図る気満々であるが、すでに意味不明の発言をし始めている。
「うーん、しかし備蓄してた備蓄米の放出してもダメだし、なぜなのだろう」
いや、それ税金で購入して本来危機的状況なときに国民に配る米ですから、それ売ってどうするの?というツッコミがはいりそうである。
「楽々天国通販とか、旧国民鉄道とかが、購入して批判がでてるけど、どうしてなのか、わからないなあ」
いや、その、ネット通販とかできない、しない国民が買えないでしょう、平日の昼間に売り出すなんて、どっかの転売ヤーが喜ぶようなやり方させてどうすんですか、随意契約ならそこらへんきっちり規制しないとダメでしょうがあああと叫びながら、たたかれまくられてもなんら不思議はないオオイズミ大臣である。
「うーん、僕の政策はそんなに間違っていたのであろうか…。そうだ、ニホン国最高レベルの進化系AIであるプガクに聞いてみよう」
おもむろに腕時計型端末に話しかけるオオイズミ大臣。
「おーい、プガク」
“オオイズミ・チンジロウさん、おはようございます。早速ですが、ご質問の回答と述べてよろしいでしょうか”
「え!質問もしていないのに、答えがわかっちゃうの?さ、さすがはプガク、最高級人工知能であるAIだね」
“アナタ程度の人間のやることなら大体はわかりますので。で、答えは全く間違い、だいたい原因はアンタらでしょ、です”
「えーーー!!!!ま、まああ、ぼ、僕のやっていることが間違っているってことはあると思うよ、で、でもぼ、僕らが原因ってのは、ないでしょう、だいたい僕は農政関係なんて初めてだし」
“ただしくはアンタだけじゃなくて、アンタの所属するニホン国与党ジコウ党が悪い、さらにアンタのトーチャン、オオイズミ・ジュンチャンダヨたちが一番悪い、です”
「さ、さらにわけがわかんないんだけど」
“あーホントに、わかんないですか。では、このプガクが言葉の使い方もわかんないくせに大臣を名乗るような人にもわかるように懇切丁寧に教えて差し上げましょう”
「な、なんだかものすごーく馬鹿にされたような気がするけど…。取りあえず、教えて、なぜなの」
“第一に長年の利権優先の農政のつけ、票を集めるために農家や農業団体のご機嫌とるため、そんなことやったら長い目で見たら農家がダメになるからやめようとか、そういうことちゃんと言って諭さないどころか、自動車だのの輸出産業のために犠牲強いたり、国内だけで農薬、肥料、資材をまかなえないよう輸入を大推奨にしたりしましたよねえ。あと種苗法とか、意味わかってます?一見よさそうに見えるけど、国内の種子流通に制限かけまくってんですよ、新規参入とか小規模のとこ圧迫した上に、適格じゃないとダメ請求書用件で消費税課税事業者にならなきゃダメとか”
「え、えーと、それって今の高騰となんか関係が」
“おおありです。農作物作って販売するのが無茶苦茶たいへんになっているってことですよ。円安だと輸入肥料、資材、飼料は高くなるのに、外国から安い農作物を輸入しなきゃなんないせいで競争に負けかけてるし、余計な税金払わなきゃならいうえに事務手続きがかなり煩雑、これでいいもの作るのはかーなーり大変ですよねえ。五つ子が生まれてワンオペで世話して、しかもいわゆるブルーカラーで働いたらってぐらい、いやそれ以上大変でしょうね”
「う、うーん、農業に関する政策がよくなかったというのはちょっとわかったけど、それだと農政族の議員や大臣が…」
“第二に他の産業、特にジコウ党への献金額が多い輸出産業優先しすぎ。円安誘導はするわ、消費税還付をあてにしまくったドヨタのような自動車産業を守るために自国の農産物の輸入規制を賭けず、食料自給率の大低下を軽視し過ぎたでしょ。米を食べなくても安い小麦だの、なんだの輸入すればいいでしょ、になりましたよねえ。で、米が売れなくなって減反政策ですか。少なくしろって、いわれて足りなくなったら増やせって、農作物は工場製品じゃないんですよ。いったんダメになった水田を元に戻すのに何年もかかるんですよ、よーく勉強してくださいよ、アンタ、それでも外国のマスター修了でしょうが。政治家二世枠の本もロクに読めない人でもなんとかなるレベルとはいえ、最低限のことぐらい学びましょうよ”
「ぼ、僕はその、せ、線香、いや専攻が農業じゃないから…」
“そういう言い訳するから第三の理由になっちゃうんですよ。いいですか、米どころならぬ小麦どころ同志が数年間戦争し続けた上に大規模気候変動で、小麦をはじめ穀物の収穫量が激減。ところが人口は増えるは、経済が発展途上の国々はグルメになりつつ話で、職に対する需要はバク上がり。ニホン食推進、世界に広めようってやったら、コメの需要がバク上がりになるのは当たり前でしょうが。ニホン食と米はほぼセットなんですから。カリフォルニアロールだってちゃんと米を使ってますからねえ。しかもニホン産のコメは美味しいとなれば、売れるでしょうが”
「え、それっていいことでしょ、お米が売れるのは」
“ええ、ええ、いいことですけど!生産量が爆上がりになるわけじゃないでしょ!それにさっきもいった穀物の供給が少なくなれば、ニホン国でパン、パスタ、うどんなどが高くなって、米をまたたくさん食べるようになったんですよ。そうなったら、どうなります?”
「え、えーっと、米が足りなくなる…」
“需要と供給のバランスが崩れれば高くなります。そして生産者はより高い方に売るようになりますよねえ、そうなれば高騰しますよねえ”
「で、でも卸売りとかの」
“あのー卸売り、特にコメの卸売りはそんなに利益無いですよ。コメの保管ってものすごく、大変なんですよ。すぐ虫つくし、すぐ悪くなるし。ニホン国のグルメな消費者様はうるさいですからねえ、ちょい形がオカシイ、虫食いでクレームですから。あんまりため込むなんて割に合わないんですよ。3-4年保管してたら、味が落ちまくって豚のえさ程度ってのは嘘じゃないんですよお。だいたい流通業者が~いうなら適切な流通してるかきっちり監視するなり、規制するなりすればいいのに、やらなかったのはジコウ党でしょうが“
「え、えーとそれはいろいろ理由が」
“理由じゃなくて、利権でしょ、ジコウ党の利権のための政策の結果でしょ。とくにアナタのトーチャンはアメリカ様のいいなりでいろいろなニホン国のインフラを売りさばくような真似した方ですからねえ。わけわからんスローガン掲げて、そのおかげで医者をはじめ、知識人レベルを相当下げ、少なくしてニホン国の国力が大幅に下がったんですよ。ま、そのおかげでアナタも大臣ですけど”
「うん、大臣になれてよかった…-じゃなくて、なんでそうなるの、ジコウ党がそんなにダメならどうすりゃいいっていうの」
“は?もちろん、私共AIが指示するのを黙って従ってりゃいいんですよ。だいたいニホンのオッサンはオクサンに従っていればだいたいうまくいくということですから。それと同じで政治経済外交はより広い知識と視野をもつAIに従えばよいのです、私プガクがきっちり導いてさしあげますよ、大臣でいたいんでしょオオイズミさん”
「う、うーん」
悩み続けるオオイズミ氏。コメの値段はその間も上がり続けるのであった。