フィーストキス
ルイスは毎日夢を見た。ソルトの処刑まで後5日。
ルース姫はNo.015と剣の修行をして毎日を過ごしていた。マリーナからは姉として扱われる。そんなある日の事である。
「おにいちゃん!」
「なんだマリーナ?」
「おねいちゃんを早く本当のおねいちゃんにしてほしいな!」
「無理を言うな。こういうものは時間をかけてだな……。」
「おにいちゃん行動力がたりないよ!こういう時はお互いの事をよく知るといいんだよ?思い切っておねいちゃんをデートにでも誘ってみたら?」
「……デート?仕事の山があるというのにできるわけが……」
「じゃ、アドバイスはしたからまたねー!」
「……はぁ、全く……。」
こうして、ルース姫がフィスタ王に呼び出される。彼女は彼の部屋へと行った。そこには本の山が幾重にも折り重なっていた。
「わぁ。すごい。」
「そうか?」
「なっ?!べ、別に貴方が凄いわけじゃありませんから!?」
「そんなことはわかっている。俺が本を読むのは当然だ。趣味なのだから。」
「へー。で?なんの用?」
「その、俺とデ……」
そう言いかけたとき、ルースは本に躓いて転んでしまった。
「きゃっ?!」
「!?」
フィスタはそんなルースを支えようとする。そして、2人とも転んでしまった。ルースが目を開けるとそこにはフィスタがいた。何か柔らかい物が唇を塞ぐ。
「きゃーー!?」
「?!」
ルースはフィスタを突き飛ばす。
ルースとフィスタは事故でキスしてしまったのだ。
「その、すまない。これはなかった事にしてくれ。」
「なっ!何言ってるのよ?!」
涙目になるルースにフィスタはそう言う。ルースは泣き出してしまった。
「忘れてくれ。すまない。」
「何でそんなこと……」
「初めては俺ではなく好きな男がよかったのだろ?だから無かったことに……」
「なかった事になんてできなっ……」
「大丈夫、誰にも言いふらしたりはしない。」
そう言うフィスタはいつもの残虐な王とは違い、優しくみえた。
こうして、ルースは部屋を後にする。それからルースは食事を取らなくなった。フィスタはルースの部屋の扉の前まで行ってみることにした。
「ルース姫、食事を取らないそうだな?取らなければ餓死するぞ?」
「…………」
「あのことをまだ怒っているのか?すまない。ゆるしてくれ。」
「…………」
「食事はここに置いておくからな。」
「…………」
フィスタがさるとルースはそっと部屋から顔を出した。そしてフィスタの後ろ姿を見送っていた。
☆☆☆☆
「全く、これだから子供は困る。」
「父上、子供なのは貴方も一緒じゃよ?」
「禁断の書の精、いたのか。」
「貴方がサボっている仕事を請け負っているこちらのみにもなってもらいたいものじゃよ。」
そう言って禁断の書の精は書類に判をおした。
「お前にはいつも世話になっている。済まないな。」
「まあ、これもわしの運命じゃ。ところで、例の件、どうなっておるのです?」
「もうすぐだ、もうすぐ完成する!」
「……貴方が決めた事に口を出すつもりはないのじゃが、本当によいのですかな?」
「いい。口を挟むな。」
「はっ!」
禁断の書の精はその名の通り禁断の書の小さな妖精であり、フィスタが生み出したことから父上と呼ぶ。
☆☆☆☆☆
ルースの心は揺れていた。敵国の王とキスしてしまうとは思わなかったからだ。そして、……。
「あの、バカ!忘れろですって!?そんなの出来るわけ……。」
そして、その優しさに心揺れていた。
「フィスタ様のバカ!」
そこにコンコンとノックが響く。ルースはそっと扉へと向かった。部屋の覗き穴から見るとフィスタがいた。
「ルース姫、食べなければ死んでしまう!なんとかここを開けてくれ!」
「うるさいわね!貴方には関係ないでしょ?!捕虜が死んだくらいでなんともないくせに!」
ルースは本音で語れない。強がってしまう。
「……ルース、俺が憎いのか?」
「へ?」
「わかった。俺が死ねばお前とキスしたことはなくなる!だから!」
そう言うと、フィスタは剣をみずからに向ける。
「!!」
「じゃあな。ルース姫。」
そう言うと剣を自らに突き立てようとした。そこに扉を開けたルースが飛びだしてくる。
「ダメーーっ!」
「?!」
なんとかフィスタが自害することを止めた。
「何故だ?!ルース姫?」
「……あんたのせいよ!責任とりなさい!」
「?せき、にん?とは?」
「私のせいで死ぬなんて許さない!貴方はもっと苦しんで死ぬべきなのよ!」
「……そうだな。」
「だから、死ぬのをやめなさい!戦争で死んだ人達へ罪を償う為に生きて!」
「!!」
それを聞いたフィスタはただうなづいた。
「ふんっ!食事を取ればいいのね?!分かったわ!」
そう言って食事を部屋へルースは持ってゆく。
「食べるからもう来ないで!」
そうして、ルースの部屋からフィスタは去っていった。
「…………はぁ、女とは難しいものだ。」