絶雪原
◼️絶雪原の温度はマイナス五十を遥かに越えてる。外にいるだけで人体まで凍りそうになる程に寒さはきつい。普通人間が動けたとしても1分にも満たないだろう。しかしアンロックは体温も上げる為、明智なら3分、茜なら2分半と海斗の想像で口にした。ここで十分も動けるのは普段使用してる海斗位だろう。No.1ともなれば言い訳は通用しない。ありとあらゆる事を想定して、考え、鍛練する事をしないとNo.1を維持できない。実際、No.1の座を奪えた者は海斗がNo.1になってから一人としていない。この絶雪原ステージはその一片でもある。常人では耐えられない寒さ、視界を奪われる吹雪、緩いく安定しない足場対応力が問われる。
◼️開始のブザーが鳴ると二人は、定位置に転送された。その瞬間両者同時だった。
『アンロック!!』
◼️両者早速アンロックを使用して体温を上げる。それをモニターで海斗はおやつをつまみながら見ていた。
「まぁ初手はそうなるわなぁー問題は次だぞ」
◼️ニヤリと笑いながはモニターを見続ける海斗。その問題は直ぐにわかった。城への入り口は古代文字の暗号式が刻まれている。これを解くには最低二分は必要な程、難解な暗号式であった。
「ここでの二分は致命的な差を生む、どうする二人とも?」
◼️動いたのは一条の方だった、アンロックを解いて式を解き始めた。それを見て明智が声をあげた。
「何故解いたんだ、死ぬ気か!」
「いえ、いい判断だと思いますよ俺はね」
「どういう事だ、海斗」
「暗号式を見て時間が掛かるとふんで、あえて解いたこれでアンロックの時間を伸ばせる。明智さんの推薦だけあって違いますね。まぁ試験する前から一条は俺のセカンドにしてもいい実力者ですけどね」
「だったら何故直ぐにセカンドにしなかった」
「コネで俺のセカンドになれるなんて前例は作らない。それに一条が俺の求める域に達しているかの確認です。ですが、それだけではありません。一条は俺の意図を理解してるか、ここからが見ものですよ」
◼️身体が凍りそうになりながら、一条はアンロック時に理解した暗号式を解いていく。二分丁度だった一条が城の中に入ったのは、その一方三咲は五分アンロックしたまま暗号式解いた。この差が後でどうなるか見ものである。
◼️お互いが城の中で対峙したのはその五分後の事だ。
◼️短剣の刃と片手剣の刃が交わる。アンロックしてるのは三咲だけ、一条はアンロックはしていない。二撃目、一条がアンロックをして戦闘は始まった。海斗の予想が当たれば時間的に見てソロソロではないかと思った矢先それはおこった。三咲のアンロックが解け反応が常人と同じになった。押される三咲、容赦なく一条は剣撃を浴びせる。
「そうなるわなぁー、どうする三咲」
◼️海斗このまま一条が押しきると思ったが、予想は予想越えて初めて予想となる。
「私は負けられない。オーバーアンロック」
◼️押された三咲の顔が少し赤くなって剣撃に対応した。
「へぇーあれを使うか」
「あれは?」
「オーバーアンロック聞いたことある。疑似リミットアンロックだと」
「へぇー茜は知ってるのか、まぁその通りだな」
「リミットアンロックだと!?」
「明智さんあれはそこまで危険はない。簡単に言えば思考の加速だけを、リミットアンロックのそれにするコツさせ掴めば出来る技術ですよ」
「しかし、リスクがない訳じゃない、そうよね海斗君」
「その通りだ茜、それは脳に負担をかける事になる。まさか使えるようになってたとは、これだから予想は辞められない」
「どういう意味?」
「知ってるか?俺が一時期講師をしてたのを」
「知ってるわ。ナンバーズになる少し前よね?」
「あぁ、その時小言の延長で聞かせただけ、存在だけを教えた。リミットアンロックに至る前段階の小技だと」
「小技ってそんなレベルの技術じゃ」
「そうだな、俺も驚いた。あれだけの情報で使えるようになるとはな、さてどうなるかなこれから」
◼️剣撃を受け流したり、受けて徐々にではあるが一条を押しはじめた。それを受けて一条がもう1本の剣を抜いた。聞いた事がある、一条家は代々古流の剣技があると、その名は全て花を纏わるものばかりだと、一条を名乗ることを許されたのはその修練を突破した者だけだと言う。対決を組む前、一条の事を詳しく調べてみた。その中でも一条叶は二刀流を開拓した逸材だとか。
「花の舞、蘭」
◼️二刀流で三咲の剣撃を意図も容易くあしらい巻き返しはじめた。
「へぇーあれが、噂の古流剣術の派生の二刀流か、オーバーアンロックを押し返すとは、まるで舞ってるみたいな印象を受ける」
「そう、それこそ花の舞だよ。海斗、剣速度を上げて舞ってる事より、周囲の者すら近づけない」
「なるほど、なるほど、面白いですね。でも欠点もあるようだ」
「欠点?」
「気づきませんか、俺ならその花の舞を軽く破れる」
「そんな筈はない!」
「明智さんは俺が嘘を言うと思いますか?」
「それは……」
「まぁ見てればわかります。さて三咲お前は花の舞いの欠点に気づけるかな?」
◼️二人の打ち合いは突如終わりを告げる。三咲の方が動きが完全に止まり壁際まで飛ばされた。
「そうなるわなぁ」
「海斗君あれは、限界ってこと?」
「そうだ。二分半ってところかもった方だろ。どうする三咲?」
◼️頭が痛い、全身に力が入らない。自分の足を叩き立つようにする活をいれるも立ち上がれない。必死に足を叩く、一条はゆっくり近づいてくる。
「動け!動け!私はこんなとこで終われない!!私は海斗のセカンドになるだ!!!」
◼️一条が顔もとに刃を突き立てた。
「終わりです」
「私は終われない!海斗をこれ以上一人にしない!!」
◼️それを見ていた海斗は昔の事を思い出していた。まだアンノウンが出現する前、小学生時代二人で遊んだ記憶だ。
「三咲、お前は……これは俺の負けかな、アリス終わりを告げろ」
「いいの?」
「あぁ二人の覚悟に実力は計れた。これからそれを元に次の探索任務に同行させる。準備しといてくれ」
「ほいほい、了解だよ」
「海斗君?」
「海斗一体?」
「二人とも試験は終わりですよ。行きましょう」
◼️一条の刃が前に突き刺そうとされた直前、終了のアナウンスが流れ絶雪原は解除され、海斗達が入ってきた。
「海斗様時間は無制限の筈では?」
「あぁでもそれは例外がある。セカンドに合格した者が決まったら俺が強制的に止める。一条叶。お前は俺のセカンド試験に合格した」
「っ!ありがとうございます!!」
◼️それを聞き一条は喜びの敬礼をして、三咲は落胆の表情を浮かべ地面で拳を叩く。
「くそっ、私は!私は!」
「なんだ三咲そんな顔して」
「私は不合格って事でしょ!」
「誰がそんなこと言った?それに俺は死にかけたら合格なんて事も言ってないが?」
「へ?」
「三咲、お前も合格だ」
「だって私は!」
「俺はあくまで覚悟を見せろと言ったんだぞ、お前の覚悟見せて貰ったよ。悪ふざけって言ったのは謝る。すまなかった」
◼️頭を下げて謝罪した。
「それじゃ……本当に!?」
「あぁ、オーバーアンロックの反動で動けないだろ。今後のお前達と俺の付き合い方については後日の召集時にする。少し休め三咲、一条も無理して立ってる必要はないぞ」
「!?気づいていたんですか?」
「当たり前だろ。俺を誰だと思ってるんだ?伊達にNo.1なんて呼ばれてないぜ」
◼️その一言で一条は崩れ落ちて地に膝をついた。遠目ではわからないが、身体は小刻みに震えていた。
「絶雪原での一時的にとはいえ、アンロックの解除、寧ろそれだけで住んだのは良い方だぞ。本来なら病院行きだ」
◼️メイドが二人の元へ行き、一枚の青いカードを渡してから控えた。
「これってブルーカード」
「そう、セカンドに配給されてる。エデンの一部施設を利用できる。上位や中位以外の情報なら閲覧も許可された証だ。お前らは星が一、それを上げて行けば上位の情報も見れるようになる。まぁお前らを昇給させるかは俺の目次第になるがな、さて、次の召集だが、1日後エデンの俺の部屋へこい次の作戦にお前らを同行させる」
「海斗君それは!」
「はぁー何度も言わすな、茜、お前の意見なんか聞くつもりはない。これは決定事項だ」
「しかし!」
「茜」
◼️今度は明智が茜の肩を持って止めた。
「海斗への指示は私達には出せない。海斗が決定と言ったなら決定事項だ」
「わかってますが、期間があまりにも短い。こんなの二人を殺すに等しいじゃないですか!」
◼️多きく溜め息をついて、右足を大きく振り上げて振り下ろした。アンロックはしてないのに訓練場が少し揺れ、海斗は茜を睨み付けた。
「口を閉じろ。これ以上俺を不快にするな茜、ここでは力と強さが全てだ。それがエデンの決めたこと、お前はエデンに歯向かう気か?」
「…!…ごめんなさい」
「わかればいい、さて二人を治療室へ運んでやってくれ、二人とも時間がたてば治るだろうが、念のためのだ」
◼️一礼して、メイドが手を叩くと更に四人のメイドがタンカを持って入ってきて、二人をのせて訓練場から出ていった。
◼️運ばれていく二人を見て海斗は少し微笑んだのは、モニター越しにアリスにしかわからなかった。