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教皇に報告したら、私事に没頭する

 バイクをかっ飛ばす帰路の途中、教皇庁の大神殿に降り立った。バイクは見せられないので、空から魔法でふんわりと地面に降る。飛翔系の魔法が使える事は知られているので、ここの職員に驚かれる事は無い。

 受付にいた、白髪が目立つ男性職員を捕まえて、教皇に報告が有って来たと言い神殿内を進む。受付の職員は血相を変えて、猛ダッシュで奥に向かった。職員は途中で自分を追い越した。歳に似合わない猛ダッシュで神殿内を爆走しているから、途中で足腰を痛めそうだな。少なくとも筋肉痛は確定だな。

 下っ端は大変ねと、少しだけ同情した。

 大神殿内を我が物顔で闊歩する事数分。

 途中すれ違った職員や神官、司祭、修道女が、自分を見るなり心底済まなそうな顔をして頭を下げる。何故そんな顔して頭を下げるのか、聞くまでも無い。この五年間も流れていた噂を信じていたもの達が、真実を知った。それだけの事だ。

 真偽を確かめずに噂を鵜吞みにした奴が悪い、これだけ。許す気は無いので、死ぬまで罪悪感に囚われるがいい。

 そんな事を考えていたら目的地に到着した。ドアに掛けられた札には『教皇執務室』と掛かれて有る。

 ドアをノックし、応答を聞かずに入れば、室内には二人の男性がいた。

 片方は上級司祭の証たる赤紫色の司祭服を着ている。

 もう片方は執務机前の椅子に腰掛けた老人。白地に金の刺繍と紫色の飾り布が縫い付けられた、煌びやかな司祭服を着た老人の禿頭には、『教皇の証』たる六角形の帽子が乗っている。

 人払いをしたのか、他には誰もいない。

「聖女ジャネットよ、よく来た。そして、五年も放置してしまって済まない」

「謝って済む事じゃない。聖女業はもう辞めるから、慰謝料代わりの退職金と支払われる筈だった給金が欲しいわね。割と早急に」

「……はぁ。強欲と言いたいが、今回に限っては正当な要求じゃな。その二つの支払い義務はドラクロワ帝国に有る。もう少し強く埃落としをやるか」

「教皇様。埃落としの強化は何時でも出来ます。そんな事よりも、聖女様からの報告を聞きましょう」

「そうじゃな。国際法の違反が他にも見つかって、これ以上は無理と駄々をこねていたしな」

 聞きたいけど、聞いてはならない言葉が教皇の口から漏れた。

 教皇はコホンと咳払いをしてから、姿勢を正した。

「聖女よ。人払いは完璧じゃ。包み隠さず全てを報告せよ」

「今日までに伝わっていた歴史が変わるけど、心の準備は良い?」

「「えっ!?」」

 急に威厳を出して命令をして来たので、事実の一つを口にした。そしたら二人揃ってギョッとして、言葉の意味を理解すると口をあんぐりと開けて固まった。

「一回しか言わないから、確り聞いてね」

 手を叩いてからそう言えば、二人は同時に我に返った。一度生唾を飲み込み、何も言わずにこちらを凝視する。

 二人の意識が完全に自分に向いている事を確認してから、自分は婚約破棄の翌日の朝――具体的に言うと夢の内容から起きた一連の出来事を話した。

「「……」」

 教皇庁の中でも、政治家的な面の強さで五指に入る二人が、驚愕の余り、間抜け面のまま硬直している。

 無理も無いか。

 魔王の真実、聖女と聖騎士の正体。しかも、三人揃って、まさかの異世界人で、表沙汰に出来ない真実がてんこ盛り。

 信じろと言う方が無理か。

「忘れていたけど、これが魔王を燃やして残った灰ね」

 そう言って、道具入れに仕舞っていた容器を教皇の机に置く。再びギョッとした教皇が年齢不相応な速度で椅子から腰を浮かし、直後、奇妙な音が鳴った。奇怪な悲鳴を上げて、教皇は椅子に落ちるように座った。腰を擦る動作から教皇の身に何が起きたのか察する事が出来た。

「アンリ、これってぎっくり腰?」

「そのようですね」

 教皇の秘書官アンリに教皇の状態を尋ねれば、即座に肯定された。首を竦めてから回答されたので、恐らくだが普段から注意していたのだろう。

「灰の取り扱いはそっちに任せる。それと、魔王は殺ったけど第二・第三の魔王が出て来る可能性は皆無って訳じゃないから警戒だけお願いね」

 そう言って灰を入れた容器をアンリに渡す。

「不吉極まり無い事を仰らないで下さい……」

「文句は聞かん。私は帰る」

 脱力気味にアンリから文句を言われたが、キッパリと切り捨てた。

 治癒魔法で教皇のぎっくり腰を治し、大神殿から去った。



 ドラクロワ帝国の離宮の借りている部屋の一室に戻り、ベッドに寝転がる。大の字になって一息吐き、記録石を取り出し額に当てる。

 一度深く深呼吸してから、石に魔力を流す。すると、自分の知らない情報が一気に流れ込んで来た。

「……」

 焦らずゆっくりと情報を捌く。

 そして、どれほど続けていたのか。全身汗だくになった頃に一度中断した。脳の処理速度を限界まで使っての作業だったからか、頭痛もする。

 魔法を使って頭痛を癒し、浴場で汗を流し、部屋に戻る。

「情報整理するか」

 紙とペンと黒インクを取り出し、机に向かって、得た情報を日本語で書き連ねて行く。

 まずは審判者について纏める。


・審判者

 管理化身の上位存在。

 世界樹と直接繋がっているので『管理化身と同等の状態のまま』世界間を行き来出来る。

 選定の儀と守護者召喚の術を作った存在。

 管理化身の上位存在であるが故に選民思想が有る。また、世界樹と繋がりが有る為『世界樹の管理者』で在ると言う自負も有り傲慢不遜なものが多い。

 世界樹内を循環する魔力量が減少の対策で派閥間で揉めている。

 派閥は『白のブラーンカ』、『黒のニーガ』、『赤のルータ』、『青のブルゥア』、『緑のヴェーダ』の五つ有る。

 以下、派閥の主張。


 白のブラーンカ いかに審判者と言えど、世界樹に干渉するのは言語道断。

 黒のニーガ   世界樹の成長が原因ならば、成長を抑制すればいい。

 赤のルータ   世界樹が内包する世界の数を減らし、審判者で管理すべき。

 青のブルゥア  世界を半分にまで減らせば持ち直すかもしれないので、取り合えず減らそう。

 緑のヴェーダ  世界樹の外の世界にもう一つの世界樹を創り、ある程度成長させてから魔力を奪い、この世界樹の存続を目指す。愉快犯過多。

 

 こんなところか。

 しかし、ヤバい情報が盛り沢山だな。特に世界樹の情報がヤバいけど、実感する事は無いので、スルーする。と言うか、現状では関わる事すら出来ない。

 他に得た情報は聖女に関するものか。

 聖女の名はヴィオロと言い、意外な事に、ノーランと同じ派閥に所属する審判者だった。ノーランと敵対する事になった理由は定かでは無いが、選定の儀の結果を見て、正気に戻ったのかも。

 真っ当な奴から死ぬなんて……。

「狂気的だなぁ」

 それしか言いようが無い。気分転換に水差しの水をコップに注いで飲み、情報を整理した事で気づいた事を上げる。

 それは、『緑のヴェーダ』についてだ。

 大変紛らわしい事に、あの野郎が言っていた『ヴェーダ』と言うのは、個人名では無く、『派閥の名』だった。ヴェーダと聞いてあれこれ色々と思い浮かべたが、何一つ掠りもしていなかった。

 知識を大量に保有しても困らないが、知識に引っ張られて逆に混乱する、駄目な例になった。いや、そもそも地球の知識を当て嵌めても意味が無いんだけどね。

 軽く息を吐き、これからどうするか考える。

「と言っても、時間を掛けて、情報処理をするしかないよね」

 恐ろしく、途方も無い時間が掛かるのは間違いない。でも、やらなくてはならない。

 人手が欲しいところだが、頼める相手はいない。一人で地道にコツコツと、情報処理をするしかない。

 処理に掛かる労力を思い浮かべて、げんなりした。

 この日の夜。皇帝と交渉して、リオンクール王国の面々が帰国したあとも離宮を使う許可を取った。帝城内の貴賓室は使いたくなかった。申し出たらあっさりと許可をくれたので助かった。

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