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メカナイズド・ハート 92話

眠谷園

「はあ、なんであんなことを言ったんだろう?」


エミーはセルゲイとベルによって放り込まれた士官用個室の中で軟禁されながら、自らが数時間まえに威勢よく吐いた言葉に対してすでに後悔していた。


ルーカスに対して吐いた言葉の一つ一つが思い起こされ、彼が返してきた言葉もまた思い起こされる。数時間前まではなぜわからないのかと彼の言葉に対して怒りを持つことはあっても、このように公開することはなかった。


しかし、ひとりで狭く光もない士官室に一人で放り込まれると、この小さく灰色で不潔で軍隊色の空気感が抜けない不愉快な空間が、どれだけルーカスという短いながらも多くの苦難と感情を乗り越えた愛する人によって美しい物へと帰られていたのかと感じさせる。


エミーの目元からはもうほとんど涙は出ない。


途方もないストレスと疲労感から、すでに涙は枯れ切り余計に悲しみを深くさせながら、もしルーカスがいたのなら彼が座っていたであろう空間を見ながらぼんやりとしている。


コンコン


エミーがときおり鼻をすする音か、鼻をかむ音しかしない静かな部屋に扉を叩く音が響く。


「だれ?」


エミーは慌てて襟を正してみずからの悲しみを押し隠して、扉を開ける前に顔にぴしゃりと洗面器にはいいている冷水を浴びせて顔を整えたあと扉を開ける。


「俺だ、まだ自殺してないな?」


そこには相変わらずやる気のなさそうな顔をしたセルゲイが立っている。


「いや。」

「そうか、ならよかった。だけどあっちはもうすぐ自殺しそうだ、何かしたいのなら行ってこい。」


彼はそう言うと、エミーに別の士官室のカギを渡す。


「ありがとう。」


エミーは感謝の言葉を伝えると、そのままの姿で廊下をひたひたと歩きルーカスがいる部屋に向かう。


彼の部屋に向かう間に、エミーの頭の中には彼は許してくれるだろうか?という不安と、セルゲイがああいったくらいだから許してくれるだろうという打算が生れるのをエミーは感じる。


更にその自分の頭の中の状況を、超常的な第三者視点からエミーは眺めて自己嫌悪に陥ってしまう。


間もなく彼の部屋の前にたどり着く。


彼の部屋の鈍色のドアノブをつかむのに数分を要した。


部屋の扉を開けると、エミーが放り込まれた士官室よりもさらに一段と荒れた部屋が現れる。彼の怒りだろうか?それとも悲しみだろうかわからない感情が部屋に散乱するかのように、部屋の数少ない調度品やベッドが荒らされておりエミーを怯えさせる。


感情をむき出しした部屋の真ん中には、うつむいて体をしっかりと貝の殻のように閉じている人影が一つある。ルーカスだ。


「ごめん、つらく当たって。」


その背中に、何とか感情をおさえながら一言謝罪の言葉をひねり出す。


「いや、自分こそごめん。ちゃんと君の気持も考えないといけなかった。」


ルーカスはそう言いながらエミーの感情を体ごと受け止めて愛を返す。

二人は抱き合い、愛し合い、互いに謝罪しあった。

彼ら以外が見れば傷の舐めあいか相互依存のスパイラルに陥っているようにしか見えないだろう。常日頃から行われる戦争と殺人は両者の精神を削り、コミュニケーションにも影響を与えていた。そのため彼らには健全な愛というのは訪れない。


しかし、二人にとってこれが何よりも有効な相互関係だった。

明日は私事で投稿が行われない可能性があります。

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