メカナイズド・ハート 70話
今日は料理編ニッコリ
「あ!!こっちだよ〜!!」
遠くに手を振るエミーが見える。軍服姿の上からグレーの皮コートを羽織り、お洒落な水色のリボンで飾られたてっぺんの丸い帽子を被っている。
「ごめんね遅れて、今日も可愛いね。」
「ふふ、ありがと。」
ルーカスは柄でもない歯の浮くような言葉でエミーの格好を褒めつつ、遅れたことを詫びる。
エミーは微笑みながら感謝の言葉を述べて、足取り軽くレストランへと入っていく。
「どうぞ。」
「ありがと。」
ホテルのドアマンのように彼女の目の前にあるドアを開けて彼女を向かう入れる。
「いらっしゃいませお客様、お二方でよろしいですか?」
「うん。」
「かしこまりました。」
予約なしできたため待たされるかと思ったが、一切待たされることなく案内される。
「上着の方お預かりいたします。」
スーツ姿の初老の店員にそう言われてルーカスとエミーはそれぞれ上に羽織っていたコートや軍服を預ける。
「なんかすごいね。」
エミーは上着を脱ぐ際にルーカスの耳元で小さな声で耳打ちする。ルーカスもエミーと全くもって同じ感情を持っていた。貧乏な植民地人として暮らしてきたルーカスにとって、自分の月収並みの価格にする高級スーツに身を包んだ店員に、丁寧語を使われてコートまで預かられたことなど生まれて一度もなかった。
「想像していた倍くらい高級な感じがする・・・。」
ポツリと呟くと同時に財布を服越しに押してその厚みを確かめる。ほどほどの厚みで少し心配になる。果たしてここの店はドルは受け取ってくれるのだろうか?
「こちらの席にお座りください。」
入れ替わり立ち替わり高価な服装に身を包んだウェイターと思しき店員たちに席を案内されてメニューの紹介をされる。
「よ、読めない・・。英語なのに何を言っているのかさっぱりわからない。」
ルーカスは絶望感と無力感に打ちひしがれる。僅かに目を上げてエミーの表情を見れば同じような顔をしている。自らの育ちの悪さを実感してしまった顔だ。
「今日のおすすめを教えてくれないかな?」
打開策として真後ろで待機していたウェイターに質問をしてみる。これは失敗だった。
「本日のおすすめはイカのラビオリレモングラス・ソースゴートチーズにシーザーサラダ、メカジキのオニオン・マーマレード、キジの胸肉のサクラメントソルトローストにラズベリー・ソース、野ウサギのグリルにマッシュドポテト和え、パスタのおすすめはアサリのボンゴレとイカ墨パスタ、ドリンクは・・・。」
本当に何を言っているのかわからない。そこらへんを走っているネズミをとっ捕まえてネズミのケツ穴から口に串をぶち込んで丸焼きにすれば満足していた自分の人生が急に惨めに感じてきた。
今日は悪いことばかりだ。ルーカスはそう感じざるを得なかった。
埃まみれのコロニーの上下水道を走り回るバスケットボールサイズのネズミとかまずそう。
ブラックバスみたいな食べれないこともない枠かな。q




