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メカナイズド・ハート 31話

1週間遅れの投稿でする。

誠にごめんなさいです。


ハリネズミのように砲とミサイルで武装したコロニーが眼前に10基も浮かんでいる。


「これは骨が折れるな。」


曳光弾の軌跡がアイドルコンサートのペンライトのように左右に揺れ、揺れるたびに戦列艦やフリゲートが一瞬の光を発して粉々になる。


サーチライトのように強力なレーザーが振り回され、一瞬光に晒されるだけで焼きすぎたバーキンのように外装がデロデロに焼けて、内部は電子レンジになる。


コロニーの表面も月面のように、でこぼこの衝突痕まみれになっている。1秒ごとに円筒形のコロニーの表面は波打つように模様を変える。付近で爆発する艦艇やポッドの破片がぶつかり小さなクレーターを大量に生み出しているのだ。


しかもその全てが無音の中で行われている。


ビビッ ビビッ ビビッ ビビッ ビビッ


絶えず警報が響くため、当てにならない。


ルーカスは自分達の機体がどこに展開しているのか確認しきれていない。配下の中隊はてんでバラバラに分かれてしまい、エミーやベル、セルゲイの機体がどこにいるのかわからない。


レーダーにこだわるのをやめて、ヘルメットに搭載されたヘッド・マウントディスプレイに表示される赤外線情報で周囲を確認する。


するとすぐ真横に迫り来るフリゲートが見える。大理石のような白く美しい装甲の上に赤色の識別色が塗られており、美しい艦だったのだろう。しかし、その美しさも今は失われ、砲弾の直撃でひしゃげ破片を撒き散らしながら少しずつ船体が崩れ、艦隊の中央からコースを外し大気圏へと落下していく。


巻き込まれたら危険だ。破片の一発でも当たれば形を保ってはいられないだろう。ルーカスは素早くスラスターを使って機体を加速させると同時に、機体を右方向にロールさせ、推力方向を変化させて、突っ込んでくるフリゲートの破片の上をすり抜けるようにして回避する。


ビビッ ビビーーッ


いままで響き続けていた接近警報とは別の警報が混ざったことに、ルーカスの敏感な聴覚が反応する。その情報は即座に脊髄まで流れて、反射的に右手が動く。


〈フレア射出〉〈フレア射出〉


電子音がフレアの射出を伝える。同時にさらに機体を加速させると、足元を削り取るようにオレンジ色に光る曳光弾の群れが通り過ぎていく。弾丸の雨霰は地上であれば聞こえる、ヒューンという甲高い音も風圧も作らずに、通り過ぎて行く。


すぐに敵機はこちらの回避に合わせて砲弾が飛んでくる。こちらも当然応射するが、敵機も当然回避機動を取る。こうなるとどちらが度切れずつ必要な鉛を撃ち込みつつ、充分な量のフレアとジャミングを撒けるかの勝負だ。


だが、それ以外の手段も取ろう。ルーカスは左腕部に持つシールドの、裏側に配置していたレーザーブレードを取り出す。格闘兵装であるが、ルーカスは別の用途で取り出す。


「教えてやるよ、レーザーブレードは・・・、レーザー砲にもなるってことをよお。」


Gの圧迫力で視界が真っ黒にぼやけ、ギリギリと噛み締める歯の隙間から言葉を捻り出して吐き捨てる。


次の瞬間、ブレードから超強力なレーザーが一瞬だけ発せられて、敵機の装甲を巨大な錆び取り機のようにえぐり取り戦闘能力を奪う。


「敵のポッドが混じってやがったか。コロニーに篭りきりっていうわけではないみたいだな。」


素早くブレードを元の場所に戻すと、また次の脅威が迫る。


「ヤバッ!!」


慌てる時間もなく、素早く逆方向にスラスターを鋭く噴射して、これ以上期待が流れるのを抑える。


次の瞬間、冷たい光を湛えたコロニーの側面から砲弾が降りかかる。赤外線カメラには無数の光の列を撃ち出す数十の砲門のうち、2門の120mm砲台がこちらを指向している。


「お前らか・・・、うぜえんだよ!!」


2撃3撃と回避運動を続けても、的確な予測射撃を撃ち込んでくる。その度に加速と減速、チャフ噴射を行い膨大な量の推進剤と速度を消耗する。


「落とされる前に壊すしかないな。」


全神経を注いで行う回避機動でさえ、敵砲台とレーダーによる効果的な十字砲火で回避の余地が狭くなっている以上、先に敵砲台を叩く以外の方法はないだろう。


「やれるか?」


ルーカスはポッドに備えられたレーダーと赤外線カメラ、レーザー測距儀でなんとか照準をつけようとするが、コロニー壁面に備え付けられた120mm砲台は赤外線カメラに映る熱反応が非常に小さいため、しっかりとロックすることができない。


「レーザー誘導にしよう。」


独り言と共に、照準システムを対地攻撃用のレーザー誘導射撃に切り替える。本来は対地ミサイルや、レーザー誘導爆弾を誘導するためのものだが、ANGELではレーザー誘導で120mm砲を使用することができる。


120mm砲のレーザー誘導は目標物に対して超微弱なレーザー光を照射して、その反射で跳ね返るレーザー光の反射目掛けて腕部が駆動して砲弾を発射する。


この方式であれば、敵の熱反応がいくら小さいものであったとしても、確実に有効弾をプレゼントすることができるだろう。


「くたばれ!」


素早く砲弾を一つ目の目標に乱射する。すると、ドンッと音が聞こえそうなほどの大爆発が起きる。思わずほくそ笑む。おそらく弾薬庫か何かに当たったのだろう。ざまあないぜ。


「危なッ。」


もう一つの砲台がこちらに砲弾を投げてくる。素早く回避起動をおこなうが、間に合わない。最も被弾面積の大きい脚部に120mm砲弾がぶっ刺さる。貫通力の高いAPFSDSは400mm以上の厚さのある脚部装甲を安易と貫通する。


「まずッ。」


ルーカスは思わず背中に体を押し付けて衝撃に備えるが、遅かった。彼の体太い鞭で叩かれた時のように、稲妻の速さで神経に衝撃が伝わり、体は一瞬空中に浮き上がり、体を拘束するシートベルトで、再びシートに引き戻される。


ガクッ


急激に機体のバランスが崩れる。計器を確認すると、推力表示がおかしな数値を示している。


「あ〜、あ〜、くそどうなっているんだ。」


素早くスラスターを切っても、推力数値を異常な値を示し続けている。


走行している間にもGがかかり、ルーカスの視界は激しく震える。計器は1つが2つに、3つにと増殖して互いに輪郭が重なり合う。


両手を左右の操縦レバーに起き、歯を食いしばりなんとか気絶を避けるのに精一杯だ。


しかし、このままではいられない。Gの圧力はどんどん高くなり、ルーカスは初めてメリーゴーランドに乗った時を走馬灯のように思い出す。


ああ、あの時もこんな感じだったなあ。


口に出そうとするも、口にできず獣の唸り声のような圧迫音と呼吸しようとする、コキューコキューという音が漏れるだけだ。


途方もない圧力で眼球が押されて、胸からは骨がメキメキと異音を立てる。


視界は徐々に色を失い、次の瞬間には真っ赤になり、再び色を失い始める。ルーカスの首は右へ左へ振り回され、シートに体を押し付けて、頭の動きを止めようにも期待はひっくり返り、鋭いロールを切り、無茶苦茶な動きを繰り返している。


完全に制御を失っているのだ。


ルーカスは何度も制御回復手順を実行する。


「何でだ・・・。スラスターカット、スラスターカット、スラスターカット!!」


何度もスラスターを揺れる視界の中で切るが、加速と回転は止まらない。


「クッソ、止まれ止まれ止まれ!!止まってくれ!!」


悲鳴を上げながらも、なんとか加速と回転を止めるために新しい手を打つ。


「オートバランサ解除、これでなんとか!!」


しかし、機体を狂わせていたのは姿勢制御システムの故障ではないらしい。


クッソ、あとは何があるってんだ。ルーカスは心の底から自分の不幸を呪いつつ、次なる手を考える。


「これしかない、やってやるよクソが。」


ルーカスは、唸るように一言呟くとスラスターを全て噴射し始める。ゴウッと一瞬コックピット内を爆音が通過し、ルーカスの肩はシートに食い込む。


ルーカスの視界は、黒色に近づいていく。視界の一点だけが見え、他全てがぼやけてシャットアウトされる。ちゃんと見える計器はほとんど残っていない。


回路がいかれてるいるのか、それとも自分の目がいかれているのか。確かめる余裕はルーカスにはない。速度計は、少しも落ち着かず、絶えず新しい数値を叩き出している。


そして不意にパッと全てのデジタル計器が消滅する。何が何だかわからないが、ルーカスにできることは一つだけ、機体を安定させることである。


ルーカスは身を乗り出して、思いっきり左右の操縦レバーを引く。


ガクンッ


ルーカスは激痛に襲われる。いつものように引こうとすると、背筋が引き裂かれるような激痛に襲われる。背骨が背椎ごと抜き取られるような激痛だ。


声を上げる間もなく、機体がスピンし始めルーカスに負荷をかける。


押し寄せるGの圧力を前にしても、ルーカスは全力で機体の向きの調整を試みる。


おそらく一部の操縦用機器の回路が焼け切れた、あるいは破片で粉々に粉砕されたのであろう。今や高さ20m、重さ100トンを超える巨大な鉄の塊はルーカスの細い両腕と数本のケーブルだけで支えられている。


なんとかして制御しなければと、ルーカスは両腕に全ての力を集中させて思いっきり引き始める。すると機体は振動を始め、少しづつ向きを変えようとする。


しかし、スピンは止まらない。


今度は思い切り右ペダルを踏み込む。すると、機体のスピンは機体をロールさせようとするペダルからの力を受けて乱され始める。


これだっ。ルーカスはそう気がつくと、長く踏み込みつつ、左右の操縦レバーを操作する。右レバーを思い切り引いて、左レバーを思い切り前に突き出す。


するとスピンにかかる圧力はさらに高まり、ルーカスの機体はスピンが収まり始める。


ルーカスはほっと一息つく。


「とりあえず安定したみたいだ。」


しかし、ルーカス機の左脚部からは異常な推力が検出され、機体は少し傾いている。素早く左ペダルを踏むと、角度は少しづつ戻され、平行に近づく。


しかし、平行になったと思いペダルから足を離すとすぐ角度が変わり始める。数秒もしないうちに再び傾いてしまった。


これではまともに進むことができない。


本来、宇宙においては等速直線運動がおこなわれるため、機体の姿勢はどんな状態にあっても問題なく飛び続けることができる。しかし、常に推力が発生している状態では機体の向きが推力の方向に影響を与えるため、軌道をグチャグチャにしたくなければ、真っ直ぐ機体を安定させなければならない。


通常であれば、推力を上げた際に自動で姿勢は調整されるものの、システムに任せるだけでは事態は解決できないだろう。


ルーカスはこまめに左ペダルを押して機体を平行に保ち、何か不足の事態が発生しても対応できるように左右の操縦レバーを握った。


その瞬間初めてルーカスは、レーダーと航法図を見て現在地を確認した。


「まずいな、本隊が遠すぎる。」


ルーカスは生きている機器から情報を汲み取り、残りの推進剤を計算する。


そうこうしているうちに、機体が左に向けてロールを起こし始めた。即座にペダルから足を離すが、機体は一切傾かない。


見れば、今まで異常な数値を示していた左脚部のスラスターが、一切推力を生み出していない。即座にルーカスは他のスラスターの推力を切る。


「ふう、結局あの左脚部の異常な推力は何が原因だったんだ。」


ルーカスは残りの推進剤を確認する。


少なすぎる。一瞬別の計器と見間違えたかと思い、目を閉じて再び開くと、やはり変わらない数字がデジタル計器上に示されている。


「まずいな。」


示された数字が正確かもわからない以上、ルーカスは本隊と合流するか、中立国の領域に飛び込むかの二択を迫られる。


改めて現在位置を見れば、金星低軌道上で激しくスピンを繰り返したせいで速度を失い、金星に落ちそうになっている。適切な装置なく落下すれば、重力が少し地球より軽いとはいえ、無事では済まない。


おまけに金星の地表温度は高温だ。落ちても、機体が損傷している状態では、無事では済まないだろう。


「どうする?」


ルーカスに残された時間は少ない。

今後も週1で投稿可能な可能性が高いです。

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