メカナイズド・ハート 19話
遅れてしまい、大変んんんんん申し訳ええええええええございませんでしたあああああああああ。
嫌なタイミングで来やがって!!そうルーカスは思うと、そのままの勢いで無線機の怒鳴る。
「こちらルーカス機、レーザーです!!!レーザー照射を受けています!!」
「なにい!?煙幕を張れ!!撹乱させながら前進する!!」
素早く大隊長がルーカス機の無線を拾い、反応する。彼は前進命令を出す。今まで接敵した敵部隊は全てATGMで武装していた、この敵戦力はおそらくATGMで武装した歩兵部隊だろう。
そのような推測で出された命令を聞きつつも、レーザー照射をしてきている地点を確認する。しかし、レーザー光は広く拡散して薄ぼんやりとしている。
ドンッ ドンッ
ルーカスは即座に発砲する。たとえ狙いが100m奥にずれていようが、敵はビビるだろう。
そんな期待を込めて放たれた砲弾は5km以上離れた地点に着弾して埃と破片を撒き散らす。2発目3発目も周辺に落ちる。しかしその弾のどれもが目標より奥だ。
ルーカスは再度あたりをつけて適当な地点にレーザーを照射、距離を測定する。示された距離は自動的に腕部と照準器、砲へと送られる。
ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ
ルーカス機が発砲すると同時にエミー機と周辺数機も発砲する。4、5本の砲弾の軌跡が概ね同じところに着弾する。
120mm級の榴弾は爆風と弾片、コンクリ片だけでなく爆風で周囲の人間肺をズタボロにし、脳を揺らす。
あれだけしこたま撃ち込めばもう生きてはいないだろう。そう判断したのは30発入りの弾倉を空にした後だった。
「まだ友軍部隊と合流できてません!!市街地で歩兵部隊の援護なしは自殺行為です。」
一応大隊内で2番目に地位の高いライアンが大隊長の命令に一言挟む。
「問題ない、敵のATGM発射点を叩き潰して後退する!!」
大大隊長はそう言うと全体に命令出す。
「各機前進しろ、足並みは揃えるように!!」
大隊長は今一度命令を出す。数秒後には彼の機体は爆音を立てながら一歩一歩前進していく。
「行くか・・・。エミー、俺が先頭を進む。」
「いいの?ありがと。」
そう言うベルの言葉が背中にかかると、その言葉に勇気をもらい、スロットルを押し出す。
その動きに合わせて関節部のモーターは緩やかに速度を上げていく。
グググググッ
巨大な足が僅かに地上から浮くと、前に踏み出される。巨大な100トン近い重さが乗った足は一歩踏み出すたびに、地面を揺らして轟音を立てる。
グウウウンンン
地面にポッドの脚部がつくたびに、金属製の鐘をハンマーで叩いたような音がする。
ガチャッ
ルーカスがスロットルをさらに押し込むとさらに機体各部から捻り出される機械の駆動音はさらに大きく、高い音になる。
ズンッ ズンッ ズンッ ズン
巨大な足が立てる音の間隔がどんどん短くなる。音が連続して聞こえ、振動が絶えず通りを揺らす時にはルーカス機とエミー機は時速50km近い速度で走っていた。
「頼むから来ないでくれよ・・・。」
そうルーカスは願いつつもトリガーに指をかけておき、常に砲弾を撃ち込めるようにする。
ガチャッ
軽い機械が嵌め込まれる音と振動が腕部からルーカスのシートにまで伝わる。おそらく弾倉を装填し終えたのだろう。ルーカスの機体であれば120mm砲の弾倉取り替えにはおおよそ10秒前後かかる。
ズンッ
建物を挟んで隣の通りからくぐもった鈍い爆発音が聞こえて来る。地雷だろう。
「クッソ!!撒き散らされたドイツ人の野糞踏んじまった。汚ねえ!!」
「大丈夫・・・、そうだな。」
大隊長がすぐさま損害を確認する。
地雷を踏んでしまったようだがポッドは揺れもせず、爆速で通りを進んでいく。
大隊長も速度を落とさない。隊員たちはむしろ速度を上げたいくらいだ。先程の一発で証明されたのだ、敵は歩兵相手に使う対人地雷しか持っていない。
そうであればやることは一つ、前進して踏み潰す。
ズドンッ ズドンドンッ ズゴオオンッ
別の通りに展開しているであろう友軍ポッドが発砲する。こちらも援護のために数発発砲する。
ドンッドンッ ドドドドドドドンッ
レーザー測距儀で素早く距離を測定すると測距した地点に数発の榴弾を降らせる。着弾点に爆煙が上がると連射に切り替えた。すると、10発以上の榴弾が周辺に降っていく。生きているものはいないだろう。
流れ弾が当たったビルや集合住宅、オフィス、小さな倉庫はコンクリート片が飛び散り、道路はガラス片で覆われて鉄筋はちぎれて剥き出しになる。道路の下を通る上下水道は水を溢れ出させ、幾つもの街灯が光を失い、一帯を完全な闇に包ませる。
その中をポッドたちは進んでいく。
「レーザー!!レーザー照射を受けています!!」
中隊の誰かが先程のルーカスのように声を上げる。
彼もまた、素早くレーザーを飛ばし返して距離を計測して発砲。ポッドたちの進軍は何者にも止められない。
一瞬スクリーンを何かが横切った気がする。現在使用している光学カメラから赤外線へと変更する。
するとどうだろう。僅かにだが、飛んでいるものが見える。あの形は間違いなくロケットの弾頭を先に取り付けたものだ。ルーカス機の真上を通り過ぎていく。
「ドローン!!真上だクソッタレ!!」
「全機ジャマー起動!!近づかせるなよ!!」
大隊長がまた指示をだす。
「くそッ!!」
ルーカスは悪態をつきながら機体に内蔵された4基の対ドローン用のジャマーを起動させる。
「頼むぞ・・・、効いてくれッ。」
そう願うのも虚しく、衝撃がコックピットを震えさせる。隅に立てかけたファイルを挟んだボードと飲み物の入ったペットボトルは倒れ、スクリーンに写された映像は一瞬凍りつき、ノイズが入る。
「クッソッ!!なんで俺ばっかりなんだよっ!!」
怒りを喉から捻り出すと機体の状況を確認し始めた。
「ルーカス!!ルーカス!!返事をして!!」
「生きてるよ!!エミー。傷は見える!?」
「よかった・・・。」
エミーはいつにも増して涙腺が脆いようだ。涙声でルーカスに被害状況を伝え始める。
「背面上部のスラスター口が捲れ上がってて、胴体部天板がひしゃげてて、それで・・・。」
エミーはなんとか被害状況を伝えてくれる。
「ありがとうエミー。その程度なら大丈夫だよ。」
彼女を慰めつつ、顔を前に向ける。ルーカスの顔は怒りで張り詰め、ビキビキと頬の筋肉が音を立てる。
「クソどもめ、絶対に殺してやる。」
彼は確固たる意志を示すと無線機に意識を向ける。
「これ以上接近するのは危険だな。各機、停止して自由に破壊しろ。ただし排水路の手前側には絶対に落とすな。」
思った通りだ、やはり大隊長はルーカスが予想していた通りの命令を出した。
いくら低火力の携行対戦車火器や地雷でも歩兵なしではキツいと判断したのだろう。
ポッドたちは次々と速度を落としていく。
少しの間の後、ポッドたちはそれぞれ好き勝手の方向に砲を向けて狙いをつける。
「撃てっ!!」
大隊長の命令を聞くと、各機は発砲する。
とてつもない爆音と噴煙があたりを充満し、大量の砲弾がいくつものポッドより背の高い建物に直撃し、薙ぎ倒していく。
榴弾が命中するたびに建物が揺れ、窓ガラスが飛散して、壁が破壊されたことでいくつもの部屋が丸見えとな流。その破片は通りを駆け抜ける数人に降り注ぎ、命を奪い負傷させる。
あの下にはいたくないものだ。
何本もの光が軌跡を描きながら遠くの建物を1本2本と薙ぎ倒していく。いくつかの光の軌跡は1つの建物に集中して、建物を揺らす。
考えなしに砲弾を適当な方向にばら撒いているせいだろう。ルーカスも無駄のある撃ち方を続ける。
彼らは好き勝手に砲弾を最大限ぶち込むと一瞬の静寂が訪れる。
ドンッ ドンッ ドンッ ドンッ
再び腹に響く爆音が一体を充満する。次々と砲弾が敵に飛んで行っては建物をめちゃくちゃに壊す。
砲弾が発射された後、薬室からは次々と熱々に熱された薬莢が燃焼しながら転がり落ちて機体の脚部に当たり甲高い音を立てる。
カンッ キャンッ
落ちていく薬莢は足元に転がり、既に転がっていた薬莢ともぶつかる。
カンッ カンッ
その小さな甲高い音を上回る爆音は周辺一帯に何分も響き渡る。
しかし、唐突に終わりが来る。ルーカス機が撃ち切った瞬間他機も撃ち終わる。
「各機、歩兵と合流まであと数分だ。余裕があるものは後ろを見ろ。」
大隊長は嬉しそうな声色で後方を見るように言われる。その言葉に釣られてルーカスは背後を映すカメラに正面スクリーンの映像を切り替えると、沸き立つ土煙が見える。
いや、あれは土煙ではない。コロニー内に土はないのだから、あれはホコリだろう。
「あれを見ろ。」
ルーカスは大隊長が「ホコリだ。」と言うのを待つ。それ以外に言うことなどないだろう、彼は固唾を飲む。
「あれは友軍だ、ようやくの到着だ。相当奮戦してくれるだろう。」
大隊長はそう言った、その発言に思わずルーカスはずっこけてしまった。結局大隊長は大仰なことをカッコつけて言ったあと黙ってしまった。
「なんだよ大きなこと言っただけか。。。」
ルーカスは思わず呟くと、再び操縦レバーをしっかりと握る。
ルーカスは顔を前に向け、カメラを切り替える。正面に映った惨状は一切の増援が必要なさそうなほどではあるが、戦闘は続く。
スクリーンに表示された赤外線は大量の粉塵の中でもクリアな視界を提供してくれる。しかしルーカスはクリアであことを恨めしく思う。
ゆらりと動く幾つかの影とそれよりも遥かに多い声が聞こえる。助けを求める声、痛みを訴える声、痛みのあまり死を求める声、誰もが何かのために声をあげている。
「あああああッッ。」
何かと思えば声がちょうど良く聞こえる距離に全身をガラス片で刺され流血している成人女性と思しき人が何かを抱いている。
カラフルな洋服に身を包んだその物体はピクリとも動かず、ただ石のように固まっている。
その物体を良く見てしまう前にルーカスはカメラを別の方向に向ける。その方向にも地獄が映る。
燃えカスとホコリ、半壊しているものの、なんとか立っている建物。剥き出しとなり、液体が溢れ出した何かしらの配管。負傷し、死亡したのである人たちと人の形をしていない物体ひとつひとつを見るたびに主への祈りの言葉を唱える。
彼は両手を操縦レバーから離して髪の毛をかきむしり、頭を抑えたくなる。どれだけの残虐行為が行われているかを理解しながら彼は直視しなければならない。
「ひどいよ・・・、こんなのってのは。」
かろうじて腹から一言ボソリと捻り出すと真正面を真っ直ぐ見据え、背中をまっすぐシートに押し当てて胸を張る。
ルーカスは顔を厳しくして覚悟を最大限体に刻み込む。そのおかげか、体中から噴き出していた汗が全てひっこむ。
「はああ・・・。」
なんとか抑え込んだ後も胸は激しく動き、まぶたの裏にはあの悲惨な姿が見える。
どうしようもないほど忘れたい、脳を揺さぶる光景だった。
「増援に来た第21予備歩兵大隊です。各ポッド分隊に一個小隊と装甲車2台を付けます。配置完了次第前進してください。」
「了解、聞いたなお前ら?相互に援護しつつ前進だ。絶対に仲間踏み潰さないように気をつけろ!!」
大隊長は増援に来た第21予備歩兵大隊の大隊長から無線を受けると、隊員全員に今一度足元に注意する様に命令した。
ルーカスとエミーは自分達の足元に来るまでの間、かなり暇だった。しかし、2人の間には一言も交わされなかった。ルーカスは眼前で起こったことを飲み込みきれておらず、エミーは動揺を隠しきれていないルーカスに対して、どのように声をかけるべきかわからなかった。
「配置された第3中隊第3小隊の小隊長サンティアゴ・アドモ准尉です、よろしくお願いします。」
2人の間で流れていた静寂はアドモ准尉のおかげで打ち破られる。アドモ准尉の声は清涼感のある若者の声で非常に聞きやすい。
「アドモ准尉だね?私はエミー中尉、こっちはルーカス少尉、よろしく。」
「ハッ。」
アドモ准尉はエミーに元気よく返事をする。カメラを下に向ければ、首にタオルをかけ、ヘルメットを被り、防弾チョッキを着込んだ高身長で美形、スラッと体が引き締まった男性が見える。
「おおう。」
まるでプロパガンダポスターのような完璧な人間を見つけて驚く。ひょっとして元アイドルか何かではないだろうか?
アドモ准尉がいるとあたりが、くすんでホコリが四六時中舞うコロニーから脱して南国のバーにでもいるような気がしてくる。
なんだか不思議な准尉率いる歩兵小隊ォ引き連れてルーカス機、エミー機が少しずつ進む。2機がのっそりのっそり進む通りの左右の建物を歩兵たちは一軒一軒扉を叩き、窓をぶち割って中を見る。
そうしてこの一団は左右の通りを進む集団たちと共にゆっくりゆっくり進んでいった。
ニコニコがサイバー攻撃で死んでいるので更新が早くなります。




