メカナイズド・ハート 182話
ババババババッ
敵ポッドから120mm砲が雨霰のように放たれる。
1機2機ではない十数機のポッドが怒涛の勢いで砲弾を降らせる。
ルーカス大隊は歩兵の援護のため広く部隊を散開させており、敵機の奇襲に対して対応が追いつかずに数機が撃破される。
「撃ち返せ!!遮蔽なんてない!!数で競り勝てば良い!!」
「了解!!」
ルーカスは引き金を引きフルオートで120mm砲を連射しながら部下たちに命令を飛ばす。大隊三十数機の120mm砲から砲煙と轟音と共に爪楊枝のように鋭く細いAPFSDS弾が放たれる。
遮蔽物をあらかじめ民間人を巻き込みながらも、市街地戦での戦術として破壊して回ったのが功をそうしたのか、敵機たちはルーカス大隊による数の暴力で1機また1機と撃破される。
あたりのマスタードガスの煙が薄れてしまうほど撃ちまくった後には、ただ大量の燃えかけの薬莢と敵機の残骸が転がっている。
残骸たちを見下ろしてみれば、どれも旧式であったり部分的に損傷しているものばかりだ。
「こんなものか?敵の最後の反抗というものは。」
「そんなはずはありません、まだ敵機がいるはず。」
そう話していると、甲高い音がコロニー全体をめぐり直後にドック周辺から緑色フレアが信号銃から発砲される。
きついマスタードガスの煙と闇の中でも、緑色のフレアは煌々と光を発してあたりを照らしている。
「停戦信号・・・。」
「戦争は終わりみたいですね。」
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8月10日23分
ポーランド政府とドイツ連邦政府は停戦条約に署名。
ポーランドは大きく領土を拡大すると共に、多額の賠償金をドイツ連邦政府に負わせる。
また、ドイツ連邦政府は南部ドイツ系諸国家の独立を認めることになった。
戦勝国であるスペインとポーランドの間で争点となったドイツ植民地は、全て独立あるいは他列強の移民統治領となった。
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「大隊長どの、本当に退社するのですか?」
「ああ、正直言ってもう疲れたからね。」
ルーカスは憑き物が落ちたような顔で穏やかに、副官に対して微笑む。彼女はまるで1000年の友人に裏切られたような悲痛な顔でこちらをみている。
「すまないねミリアム中尉、しかし俺は少し殺しすぎた。もうこれ以上殺すと国際機関に国際指名手配にされてしまうかもしれないからね。」
ルーカスはすでに機能不全となった国際機関を冗談に使いながらも、副官のミリアム中尉に引き留めるのは諦めるように言う。
「しかし、なぜ今なのですか?大隊未だにあなたを必要としています。」
彼女は目にジンワリと涙を浮かべながら引き留め工作を続ける。しかしルーカスの決意には小細工は聞かない。
「すまないね。俺の方からも君の武運長久を願っているよ。」
その言葉を聞くと彼女はその場を後にした。未だにしぶとく生き残っている大隊の部下たちに向けて個人的な手紙を数通したためた後、大隊長執務室を後にした。




