メカナイズド・ハート 180話
暗闇につつまれたベルリン市街を騒音を立てながら巨大な機械たちが進む。
「歩兵は道路両側の建物をクリアリングしていけ!!歩兵戦闘車は後ろについていけ!!」
ルーカスは以前スペイン植民地戦線で市街地戦をやったときの経験を生かして、戦術を考える。しかし、即座に問題に直面した。
「大隊長殿!!人員が足りません!!」
「はあ!?」
そう、ベルリンという巨大都市のセンター街であるがゆえに、ほぼすべてが超高層階の建物ばかりで歩兵によるしらみつぶしの制圧は非現実的なのだ。おまけにいまだに多くの民間人が窓と扉を閉じてかくれている。そのなかに敵兵士が対戦車火器を持って隠れていれば相当厄介だ。
そして実際に厄介ごとはおこる。
バシューーーンッ!!
そんな甲高い空気がないと聞こえないような音が聞こえ、背後で炸裂音がする。
振り返れば歩兵戦闘車とそのそばで歩兵戦闘車を遮蔽がわりにしていた歩兵たちが、炎にまかれて体を地面にこすりつけて火を必死に消そうとしている。
すでに歴戦の戦士となったルーカスも、目の前の全身が裂傷と重度の火傷に包まれながら死に至る友軍兵士の姿をみると無関心ではいられない。
なぜこんな犠牲が出るのか?
それは戦術が適切ではないからだ。
大通りから離れた脇道でも左右に平気で20階建て、30階建ての建物が並ぶ都市では制圧作戦で火力支援を担当する歩兵戦闘車の砲の仰角足りず、ポッドには死角が多すぎ、歩兵だけでは人数不足で1ブロックをクリアリングするのに半日かかる。
「この戦術ではだめだな。制圧はあきらめる。死傷者が増えすぎるし、クリアリングと保持のためには時間も人員も足りない。」
「代わりの戦術はどうしますか?」
「すべての建築物を破壊する。歩兵たちに避難指示を出してくれ。」
「了解です。」
ルーカスは自らの判断で非人道的な判断を下す。
与えられたリソースと時間の中で、多くの民間人たちを安全かつ秩序だって悲観させることなどは不可能だ。
自らの心と折り合いをつけて自らの正当化を付け終わったころには、ルーカスの指揮下の歩兵部隊は非難を完了していた。司令部に通達後、ルーカス率いるポッド大隊は建物の基部めがけて一個一個120mm砲から高性能榴弾を放ち破壊していく。
悲鳴の声は聞こえない。
大量の粉塵が巻き起こされ、一つまた一つと建物が地面に向けて急降下していく。
建物が地面に叩きつけられるたびに、コンクリート部や鉄筋が飛び出し、ガラス破片が一瞬キラキラと光を発し、直後に元の建物の倍近い高さの粉塵を巻き起こす。
ものの数十分で、数ブロックが灰燼に帰した。
何百人、あるいは何千人死んだかもわからない。その事実から目を背けながらもルーカスは次のブロックへと部隊の足を進めさせる。
ついに180話の大台に乗りました。
これも読者の皆様のおかげです。
これからもよろしくお願いします。




