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メカナイズド・ハート 18話

真夜中投稿です。しまっていきましょう。

エミーとルーカスは人の波を引き裂きながら前に進む。目指すは駐機場、完全武装、機体に搭乗しての集結のため、遅れは許されない。


ハアッ ハアッ ハアッ


2人は数キロの道のりを全力で走り切り、額に大粒の汗を幾つも浮かべ、肩で息をしながら検問にIDを見せる。


「通過どうぞ〜。」


数人の歩哨に立っていた兵たちの許可をもらうと衛兵がフェンスを開けた瞬間に体を横向きにして2人はスッと通り抜ける。


検問所を突破すれば機体まですぐそこだ。


機体の前まで来ると、待機していた作業員たちが民間用の高所作業者を使い20m近い高さの機械の側までエミーとルーカスを持ち上げてくれる。


「ありがとう、エミー先に行くよ!!」

ルーカスは作業員たちに労いの声をかけると、エミーに無線を一本送りコックピットのハッチを開けたままスクリーンとセンサー、カメラに電源を入れる。


「こっちもすぐ行く!!」

エミーの声が聞こえる。その声に心地よさを感じながら、チェックシートを一つ一つマークしていく。


「計器ガード解除。解除よしっ。」


チェック


彼は自分のふともも右横下、操縦レバーに手をかけた際にはちょうど右肘の下に位置する黄色のスイッチを下にパチっと下げる。


これで他の計器も作動するようになる。


「計器、ライトオン。ライトオンよしっ。」


パッ パッ パッ パパッ


計器類に光が入る。


チェック


「バッテリー電源、オン。オンよしっ。」


チェック


機体機動用のバッテリーの電源を入れる。

これで機体全身の駆動機に電力が供給される。


「メインジェネレーターアイドリング解除。」

主発動機であるCPR -1000がエネルギーを全てトラックの荷台に乗せられた外部大型バッテリーへと電力を送るのをやめた。


そのエネルギーは全て機体のバッテリーに送り込まれていく。


「主推進機ロック、解除。解除よしっ。」

これで彼主推進機はいつでも彼が入力した通りに動くようになる。


「サブスラスターロック、解除。解除よしっ。」

これでサブスラスターも彼に追従する。


「リコイルコントロールスタビライザー、オン。オンよしっ。」

これで彼の機体は射撃時の精度向上が見込める。


続けて彼はコックピット前面にある二つのレーダースクリーンの上にある赤色のボタンを3秒間押した。


「レーダー、オン。」


うっすらとレーダー画面に光が入りレーダースクリーンに左右90度のレーダー情報が表示される。


「レーダーオンよしっ。」


チェック。

「赤外線監視装置、オン。」


コックピットブロック上部に位置する人の頭部にも似たセンサーブロックから赤外線情報が送られてくる。


「ウェポンコントロール、オン。」

これで彼の機体は武装に必要な情報をセンサーブロックから得るようになる。


「こちらルーカス機、発進シークエンスコンプリート。オーバー。」

彼はヘッドセットから指揮を取るベル機に作業の完了を伝える。


「こちらベル機了解。ライアン機そちらはどうか、オーバー。」

右横、レーダー表示だと50mほど離れた位置だろうか、に位置するベル機が1番最初に展開を開始したライアン機に連絡を入れる。


「こちらライアン機、シークエンスコンプリート。オーバー。」

手間取っていたライアンも準備が終わったことを伝える。


少し前まで溺れることができたアルコールはもうなく、レバーから手を離すこともできない。


なんとか落ち着くために、レーダースクリーンの上にあるツマミをいじり始める。


「落ち着かないのか?ルーカス。」

笑いを含んだ声でライアンの声が聞こえてくる。


ツマミをイいじる音が漏れていたのだろうか


「死んだら落ち着ける、今は集中しろルーカス。」

ベルの声が通信機越しに聞こえてくる。

冷笑する彼女の顔が、見えているわけでもないのに浮かんでくる。


「大丈夫、今はまだお試し期間だから。生きて帰れるようにするよ。」

エミーの声も聞こえる。


フー


少しは落ち着いてきた。


その気配が伝わったのだろうか。


「各機30秒後、60秒の噴射を行い楕円軌道へと遷移する。推力方向のセットと機体の水平軸合わせを忘れるな、オーバー。」


「「「30秒後、60秒了解、オーバー。」」」

機体の水平軸をベル機を基準に合わせる。


推力方向も機体性能に合わせて推力方向を設定、噴射量も他機に合わせておく。


残り15秒


慌てず、落ち着いて、正確に行動。


次は主スラスターの機関部温度、コックピット左側のメーターを使用して確認。

規定値以内だ。


最後は武装のチェックだ。右腕部には120mm砲、左腕部にも120mm砲を持ち右背部と左背部には追加の大型煙幕ランチャーと小型で連射のきく80mm迫撃砲ポッドを装備している。


背部に追加された煙幕ランチャーと迫撃砲は見慣れない装備だ。どちらも整備員たちが追加で市街地戦用の特殊装備として装備してくれたのだろう。


「後で何か整備員に奢ってあげた方が良いかもな。」彼はそう言葉を漏らすと、整備員たちへの感謝を胸にしまい込みスクリーンに真っ直ぐ目を向けた。


スクリーンにはカラーで表示されている光学カメラで撮れた映像と白黒で表示される赤外線カメラから撮られた映像が光ファイバーを通過してリアルタイムで送られてくる。


それを左操縦レバーの親指が当たる部分にあるボタンを押し込むことで切り替える。


そこにはポッドの高さを上回る巨大な港湾区間にある倉庫とビル群が写る。さらにその背景に写るのは十数機のポッドが駐機場から進み出す機体たちだ。


その巨人の列の先頭を一台のオフロード車が左右に光る反射棒を持つ作業員を乗せて進む。


「我々の大隊、いや中隊はまだだ。一度その場で停止しろ、他機の集結を待つ。」


目の前に停止していた大隊長機から無線が飛んでくる。既にライアン機やベル機は合流しているが、エミー機はまだだし全体の3割程度しかいない。駐機場には少なくない数の機体と片手に入りきらない数の機種がおり皆同じ色の迷彩を施すことでなんとかひとまとめにしている。


その多様性は大隊内にも現れており、各機の背の高さは一致せず一列に並んでも様にならない。


「エミーです、合流しました。」

「ん〜、エミー中尉だな?よしっ。」


大隊長はかなり機嫌がよさそうだ、変に猫なで声で気持ちが悪い。


「ん~、なんともならないかな~。」

ライアンもかなり様子がおかしい、普段よりも語尾が上がり調子で声もリズムが良く言葉の最後を伸ばしている。ときおり二人は「はあ。」と声を漏らす。


他のパイロットたちに様子をうかがう、しかし彼らは何一つ音を立てず沈黙しているかのようだった。


「時間だ!!各機、バネをはじけろ!!出発だ!!」

大隊長が目の前を流れる巨人の列に欠けが見えると大声を出して全員に命令を伝える。前進だ、再びあの戦場に突っ込むことになる。そうルーカスは頬に力を入れると少しは彼の疲れ切った顔にもりりしさが戻る。


グウウウウンンンン


周辺にいる友軍機が全てほぼ同じタイミングで脚部を動かすために音が連続して聞こえる。音だけだと、まるで巨大な四つ足の機械仕掛けの恐竜が動いているように感じさせる。


「おーらいーー!!おおおーーーーーらいーーー!!おーらいーー!!」


誘導員が巨大なメガホンで爆音で誘導していく。あれだけ爆音を立てて大丈夫なのだろうか?つい数時間前に敵に不意打ちされて数十人の死者を出したのに懲りないんだなあ。そうルーカスは心の中で思ってしまうが考えるのをやめることにした、幸いにもこの作戦の責任を負うのはルーカスでもエミーでもない。


まあ失敗しても手の届く範囲の人たちが生き残ってくれば十分だろう。


「ったく、こいつらクソうるせえな~~。黙ってらんねえのかな?」

同じような考えを持ち、こらえられなかったのか?ライアンがしっかりと不平不満を口から漏らす。


「ははっ、まあ落ち着いてくれどうせ対して作戦に影響はないのだから。」

大隊長が笑い声とともに彼をなだめる。大隊長はライアンよりも上位者であるために彼の珍しく穏やかな口調は一撃でライアンを黙らせるに足りるものだった。


「この先の大きな十字路を右に曲がったら隊を2つに分けて友軍部隊を援護しつつ前進する。」

大隊長が作戦をささっと素早く読み上げる。


大きい十字路とはあれだろうか?カメラが手前を歩くエミー機のポッドの肩の輪郭の向こうに見えるのは巨大な倉庫に四方を固められた場所で、ポッドに乗っているせいで小さく見える。


先頭を進む先導車から声が聞こえてくる。

「第2488ポッド大隊は右だ!!右っ!みーぎーいー!!」


半ば絶叫に近い声を腹から出しながら誘導員が手に持った反射棒をこちらから見て右に向けて勢いよく振る。


「右!!右!!右〜〜〜!!」

その絶叫に押されるように先頭を進む大隊長機から右へとインコースギリギリを攻めながら速度を落とさず旋回を完遂させる。


そしてあとを大隊各員の機体が追いかけていく。しかし彼らの多くは大隊長ほど操縦が上手くない。多くの機体は速度を落とさず旋回できるようにコーナーギリギリを攻めるが、逆に壁に当ててしまい、速度を失う。


「素人は普通に曲がれ、横着するな。」

大隊長は背後の様子を音で察しながら、そう無線を送る。


結局綺麗に曲がれたのはベルくらいで、他は臆病風に吹かれて緩やかに余裕を持って速度を落としつつ曲がった機、大隊長の命令にも関わらず横着してぶつける機に分かれた。


「まったく・・・。」

大隊長はそうボソリとすべての隊員に聞こえるが、不自然過ぎない程度の声で無線機に対してつぶやく。


その姿を横着せずにゆっくりと旋回したルーカスは見ている。彼は思う、あれでは近いうちに味方に憎まれて打たれてしまうのではないだろうか。もっとも戦場では誰しも余裕がない、カリカリしているのは仕方ないことかもしれないが。


「野郎ども2機1組で散らばれ!!もたもたすんなよ!!」

大隊長が特別シンプルな命令をだす。彼は友軍機一機を連れて最も手前に見える角を曲がり、脇道を進んでいく。


さらに別の組が2つめに近くにある角を曲がって脇道に入る。そこまで広くもない道を巨大な機械がいっぱいいっぱいに占領し、さらにそこから2人で1組を作ろうとしてモタモタと揉める。


本来は決まったペアがいるが、隊員の半数がコロニーに侵入するまえに死亡してしまったがためにペアを組むのに一苦労している。しかしルーカスとエミー、ライアンとベルは迷いや混乱を見せない。彼らは幸運なことに、誰も死んでいないためだ。


ガシン ガシン ガシン


ゴゴン ゴゴン ゴゴン


巨大な機械の足で地面を踏みしめながらルーカス機とベル機は手間取る友軍機たちの集団を抜け出して適当な角を曲がり小道に入っておく。集団から抜け出すときに歩道の舗装を叩き割り、周辺の小さなアパートをの外壁を削り、背の高いオフィスビルを根元から揺らしてしまったが何とかなるだろう。そうルーカスは願いながらいる。


ここは敵地ではない。住民は存在そのものが無価値どころか外でしかない差別主義者でブサイクでゲイの集まりのナヨナヨ人間以下のドイツ人ではないのだ。周辺住民への配慮をしなければ縛り首にされるかもしれない。


「早く配置につけ馬鹿野郎ども!!このカスどもめ!!」

怒りのゲージが一瞬で爆発する大隊長は無線機が割れるほどの大声で部下をどやす。


「早く配置につかないと友軍部隊が合流できないぞ!!俺達がうろうろしている時に足元を歩兵が歩けると思っているのか!?」

大隊長は正論でぶん殴ってくるが、とりあえず大声で怒鳴るのをやめてほしい。金持ちが行くキラキラオフィスで流行の週3出勤週6時間勤務でハラスメント排除は軍では適応されない。もう少し穏やかに怒鳴るだけでも泣いてケツにキスするくらいルーカスは嬉しく思うだろう。


「よし、位置についたな?なら友軍の合流を待て!!」

大隊長の言葉ののち、空間に静寂が訪れる。ルーカスはその時間を普段の数十倍長く感じた。たかだか5分程度の待ち時間だが、1時間近くの時間を過ごしているように感じた。隊員各々はそれぞれ何とか足や腕の曲げ伸ばしをすることで時間をつぶすことにした。


「早く来ないかな。」

思わず物騒な言葉が子供のような純粋さでルーカスの口から吹き出す。


そしてゴッドかブッダかアッラーかヤハウェか誰かがその子供のような願いをかなえてくれる。


ビーッ ビーッ ビーッ


〈レーザー照射を受けています。〉


〈レーザー照射を受けています。〉


〈レーザー照射を受けています。〉


突如としてルーカス機のコックピット内に爆音でが響く。どうやらルーカスが求めていた友軍の到着より先に敵軍が来てしまったようだ。

なんとか投稿間に合いました。間に合ったかな?

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