メカナイズド・ハート 179話
ベルリン。
郊外を含めれば人口1億2000万人近い世界屈指の巨大都市。ドイツの政治・経済・文化の中心であると同時に、ヨーロッパにおいても他に類を見ないほど豊かな都市である。最も内側が数百基の巨大なコロニー群のあるセンター街、その外側に数千基から一万基近い中小コロニーで構成される郊外の二層構造で存在しほぼ完全な球に近い形で、ベルリンはできている。
センター街は常に最先端のファッションで体を飾る美しい人々と、多言語を操り目にも止まらぬ速さで商談をまとめていく活発なビジネスマンで溢れ、世界の運命を左右する話題を聡明な人々が議論する。そんな24時間明かりの消えない世界だ。
郊外では人々が生まれ学び働き愛を育み新しい命を生み出し、そして死んでいく世界が出来上がっている。
そんな世界は今、破壊と死で埋め尽くされている。
毎日活発に光を発した電光掲示板も車でごった返した14車線ある大通りもカフェで議論するインテリも、何一つ存在しない。
幽霊でも出たかのようにベルリン全体が静寂に包まれいくつかの店舗がどさくさに襲撃されただけだ。
それもそのはず幽霊よりも遥かに恐ろしい民族的復讐心に衝動的に突き動かされたポーランド艦隊が、ベルリンへとにじり寄ってきているのだ。最後の頼みの綱であった第9軍団が壊滅的敗北を喫した以上、もはやヒラヒラと揺れるベルリンのパンティを守るものは誰もいない。
誰もが郊外の集合住宅や高層住宅の自室へと逃げ込み、家族みんなで抱き合っている。
過去にも数度、ベルリンは長距離巡航ミサイルや超射程砲による狙撃にあってきたが、今回は次元が違う。首都での攻防戦が起きようとしているのだ。
「主砲発射!!」
「発射!!」
そんな掛け声とともに、100門近い砲を乗せた戦列艦たちが火を噴き大量の鉄をコロニーの防衛設備に向けて振りかける。何百年も戦争の炎にさらされたことがないがゆえに、ほとんどの防衛施設は旧式か稼働していない状態で、敵の首都防衛部隊の指揮も緩慢かつ非効率的だ。
「郷愁上陸用意!!」
艦隊司令の言葉で、次々と陸戦部隊が艦隊から離れてセンター街の各重要コロニーへと向かっていく。多数の戦列艦とポッドに護衛されているだけあり、敵が押さえようにも押さえられない。そして火力の優位性により少しずつ陸戦部隊がコロニーに張り付き血まみれの市街戦に突入していく。
そして当然度重なる戦闘で激しい犠牲を払いながらもその実力を証明したルーカス大隊も、みずからを血まみれの市街戦の中に見つける。




