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メカナイズド・ハート 12話

忙しいんゴ・・・。

赤外線センサーと光学センサーをパチパチと交互に移動させる。


「見えた。あれが目標か。」

そうルーカスは思わず呟く。

目標のコロニー周辺には一切の動きがなく防御施設もウンともスンとも言わず沈黙し続けている。


コロニー郡の影から侵入した成果だろうか?


大隊長機から提供されるデータをデータリンクを通して受け取り砲照準システムに反映されて行く。

このおかげでわざわざレーザーを照射して距離を測る必要も、赤外線センサーで熱源をいちいち特定する必要もない。


ロックオン完了


対陣地のため赤外線ではなくレーダー射撃を行う。


戦闘用レーダーから電波が放たれて目標の陣地で反射、帰ってきたデータを射撃システムに送り諸元をもとに砲が向く。


シールドを左腕部マニュピレーターで保持するのをやめて、背部に懸架された武装を前に持ってきて持ち帰る。


コレで両手にそれぞれ120mm機関砲と480mm無反動砲を装備できる。


右手と左手がそれぞれ乗っている左右操縦レバーの下側にあるボタンを同時に押す。


〈セーフティー解除〉

コンピュータに登録された音声が通知してくれた。

かなり透明感のある中性的な声だ。


それをぶち壊すオッサンの声が聞こえる。

「各機、射撃までは5


4


3


2


1


発射。」


大隊長のカウントダウンに合わせて一個ポッド大隊36機が各々の武装を発射する。


各機の砲弾には数発に一発、光る尾を発する弾がある。曳光弾だ。もちろん曳光弾にも通常弾と同じ威力があるがやや高価なため、数発に一発。


大量のトレーサーが集まり光の帯のようになり敵陣地の予測方向にブチ込まれる。

ただの砲弾だけではない。

毎秒2500m近い速度で飛翔するAPFSDSだ。

そのどの砲弾も1000mm以上の鉄板を容易く貫通する。さらに大口径の砲はより破壊的な火力を見せつける。


ドン ズドドン


そんな音が聞こえてきそうなほど大きな爆破が敵陣地で発生する。

それも規則的な爆発で等間隔で発生している。


先程別れた艦隊からミサイルが放たれたのだろう。

明らかに120mm砲APFSDSの貫通弾が弾薬庫を誘爆させたにしては、爆発の勢いが小さすぎる。


120mmではどうしようもないほど無力に感じる。

しかし解決策は左マニュピレーターにある。

左マニュピレーターが保持している口径480mmのバズーカのような形をした砲を発射する。


すると太くて長大な砲身がたわむほどの勢いで砲弾がぶっ飛ばされる。

文句なしの大口径だ。


僚機たちも次々と120mmで有効打を与えられなかった陣地にレーザー兵器による強烈な照射や大口径砲弾、ミサイルを叩き込んでいる。


ビーッ ビーッ ビーッ


不快な音と共に敵弾の反応がレーダーにも現れる。

全ての防護施設を処理しきれなかったせいだろう。


友軍機の中にはスラスターを最大限噴射する機動で逃げ切ろうとするが、そうはうまくいかない。


次々と120mmや152mm、240mm、320mm砲の直撃弾をもらい風で舞う木の葉のように破片の尾を引きながらデブリの仲間入りを果たす。


慰めになるかは分からないがさらにいくつかの敵砲台が火を噴き、打ち上げ花火のように砲塔が打ち上がる。


明確な戦果は兵を昂らせる。

戦列から抜け落ちようとする友軍機は減り、今や20機しかいない大隊は36機いた時よりも遙かに多い砲弾を叩き込んでいる。


次の瞬間コックピットが一瞬真っ赤に照らされる。

スクリーンから漏れた光だ。

しかし、その光は脳が誤って知覚して錯覚かもしれない。


次の瞬間にはスクリーンが真っ黒になったのだ。

同時に機体の表面温度を測る複数のセンサーの中でも機体中央部と頭部に備え付けられたものが異常な熱を感知する。


「レーザー・・・!?」

そう、間違いなくレーザー兵器の照射だ。

機体内にも金属が旋盤で削り出されるような振動と機体内になんとも表現しにくい音が聞こえる。

頭部パーツの溶解に伴い機器が異音を立てているのだろう。


レーザー兵器は目標物に光子密度の高いレーザー光を照射した際に発生する「レーザーアブレーション現象」を利用した兵器。

簡単に説明するのならば、巨大な錆び取り機と言えるのではないだろうか。


「この火力はコロニー防御施設じゃない!!ポッドだ!!」


だが、レーザー兵器がどこから照射されているのかレーダーではイマイチつかめない。


パチッ


光学センサーに変更する。

しかし反応がない。


「くそっ、何かないのか!?」


頭部の赤外線センサーと一緒に焼き切られてしまったのだろう。そうこうしているうちにも機体表面の一部は危険な温度に近づいてきた。


「エミー援護!!」

「了解。」


配下の機体がレーザー攻撃を受けていることに気づいたライアンはエミーに命令を出す。


「こうだ!!」

動体部右上に付いている旧式の赤外線センサーを起動する。


見える見える。

強烈なレーザー光がよく見える。

真っ暗闇な宇宙に緑色で表示されたレーザー光。


120mmの砲身に固定装備されたレーザー距離測定装置もまだ動作する。微弱な目で見ることすら難しいほどのレーザーを発し、反射したレーザー光で距離を測定する装置だ。


120mmに装備された射撃用赤外線センサーはまだ無事だ。旧式赤外線センサーとで大まかな位置を特定し、距離測定装置も動作しているのであれば、やるべきことは一つ。


「反撃してやる。」

言うよりも早く体を競輪選手のように前傾姿勢に変えなおかつ体を捻る。すると自然と右手に握られた右側の操縦桿は限界まで後ろに引かれ左はその逆になる。


機体はほとんど暴走状態、失速手前の右旋回を決めて敵機を捕捉する。かなりの距離だが脅威は脅威排除するしかない。


カチッ


引き金を引き込み120mmAPFSDSを放り込んでいく。敵機に向かう火線は2本。エミー機も撃って命令通り撃ってくれている。


二機からの辛うじて成立している十時砲火を受けた敵機はレーダースクリーンで確認できる量の破片を枝垂れた花のように咲かせてデブリとなる。


「「一機撃墜。」」


彼女のホッとしたような声が聞こえる。

俺も嬉しい。久方ぶりのキルだ。そして自分もエミーも生き残っている。


同時にルーカスの心はどんよりとした感情に伝染病のように侵食させることを抑えることが出来なかった。


あれは命の危機を感じた。早晩自分、あるいはエミーを失うのではないだろうか?


自分は二度と会えない家族に会うために激戦地を転々とする傭兵部隊に身を投じたのではないのか?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「各機射撃やめ!!射撃やめ!!」

大隊長の罵声によって次々と火線は消えていく。


「おそらく敵の防衛施設は破壊できただろう。もしまだ脅威があるとすれば敵ポッドだ。それもレーザー兵器を装備したやつ。」

彼の声は無線を通して雑音混じりで聞こえる。

常に無線は受信のみでこちらから発信することはなかなかない。


「それ以外の脅威はほぼないだろう。それでは各機最大出力で逆噴射をかけるぞ。」

そう言う大隊長。果たしてこの機体は耐えられるのか?そう心配しつつもメインスラスターであるNTRロケットを再度噴射する準備をしていく。


機体各部のスラスターの推進軸方向を揃えるために角度を調節していく。若干背を後ろに倒してのけぞるような体勢にさせる。


3 2 1


そんなカウントダウンと共に一気に推力マックスでぶっ飛ばす。友軍機、相当撃ち減らされて定数の半数18機にまで減ってしまっているがまだエミーもベルもライアンも無事のようだ。


まだ戦える。


逆噴射で血が鼻先とその根本に集中していく。

一瞬鼻先が痒くなる。次の瞬間には目を回すほどの熱を顔中で感じ、脳の前部分が大量の血で溺れて後ろ半分は酸欠状態になる。


頭と体はシートベルトに抑えられているものの、不十分で体中にシートが食い込みルーカスの気分はますます悪化する。


吐きそうだ。吐きたくて吐きたくて仕方がない。


周りを流れていた人工衛星が自分の後ろから現れて前に進んでいき、スクリーンから消えていく。


まるで動画の逆再生のような感覚になる。

しかし、先ほど通り過ぎた時よりも大きく写るコロニー外壁に生まれたクレーターの数々はそのまま。


その姿が世界が逆再生されていないことを証明している。


逆噴射のおかげで大きく速度と高度を失いコロニーとほとんど同じ速度になっていく。。完全に良い的、射撃練習でもないような撃ちやすさだが、敵防衛施設からの発砲はない。


「各機逆噴射やめ!!もう一度噴射。」

大隊長の心臓から捻り出すような声が無線機をとうして脳に届く。


一気にスラスタースロットルを0に戻すとこんどは前に行っていた血が後ろに向かって一斉に流れ出し、視界が狭くなる。

同時に頭は一気に後ろへと放られて、そのままシートの背に勢いよくぶつかる。


しかしコロニーは後ろに行かない。

他の人工衛星と同じようにどんどん相対速度が開き前に消えていきそうになる。


こんどは減速し過ぎたのだ。

しかもこれ以上高度を失うと第一撃で破壊できなかったコロニー裏側の防衛施設にタコ殴りにされてしまう。


相対速度を縮めるためにも大隊長は再度緩い噴射をかけることを決める。


「もう一度噴射をかけるぞ。半分で噴射だ。5


4


3


2


1


0、噴射だ。半速噴射!!」

0に合わせて各機は半速で噴射してコロニーに追いすがる。中破した機体、小破した機体、例えばルーカスの機体も大隊長に続いて噴射を始める。


今度はそこまで顔に血が行かず楽に感じる。

周りの計器をよく見る余裕がある。しかし、一切苦しくないかと言われると?そうではないと答えざるを得ないとルーカスは考える。


やはり少しばかりの苦しさが喉元や頭頂部、腰後ろに残る噴射を継続させる分だけドンよりとした痛みとピリピリとした神経に張り詰める感覚が残る。

眼球が抑え込まれるような感覚もまだ、残り続けている。


だがすぐにその痛みは薄れる。

大隊長の指示で噴射をやめたからだ。


よりクリアな視界と圧迫のない健全な神経を取り戻した彼は眼前に迫りつつあるコロニーを前に次々と必要な操作をこなしていく。


相対速度差は限りなく小さい。機体各部に搭載されたイオン推進サブスラスターでも調整可能だ。

イオンスラスターは同サイズのNTRと比べて30%程度しかない低推力だが、電力のみによって動作するため。推進剤を気にせず吹かせることができるので便利だ。


「各機ドッキング準備!!輸送船から陸戦部隊が降りれるまで援護してやるぞ。ライアン!!B中隊は半壊状態だ、お前のC中隊と俺のA中隊で半分ずつしきする。お前はA~Bブロックを制圧しろ。」

「了解です、少佐。」

大隊長の命令を聞いたライアンは着地地点をマーカーで示して、各機体に追加装備されている連携用端末で情報を共有する。


「知らないやつらも俺の指揮下に入った!!各機は名前と武装を言え!!先頭からだ!!」

そう彼は命令する。最先頭にいるのはベル機。彼女から話始める。中隊が生き残っていたら12人ものパイロットがすばやく名前と主武装を着地前に言い終わるのは不可能だっただろう。

しかし、今や大隊でも20機しかいない。

その戦力を半分に分割して片方を大隊長、片方をライアンで分けて、それぞれ10機の戦力。

着地までの間に言い終わるだろう。


「ベル中尉、120mm。」

「エミー中尉、120mm。」

「ルーカス少尉、120mm。」

いつものライアンが直接指揮している小隊の自己紹介。

その後他の小隊に入っていた面々も言い始める。


「アンセルモ中尉、520mm。」

「ロレンソ中尉、480mm。」

「リサンドロ少尉、120mm。」

「クフシノフ中尉、125mm。」

「グラソフスキー中尉、125mm。」

「マリコフ少尉、130mm。」

各機名乗り上げる。

スペインで採用したパイロットが半分、もう半分は東欧出身者。

ルーカスは思う、ただでさえ人名を記憶するのが苦手な自分がこれだけの名前を覚えれるのだろうか?


いや、どうせ半分も生き残らない。余った半分を覚えればいいだろう。

今一番大事なのは生き延びること、エミーも生き延びさせること。

余裕があれば、ベルとライアンも生き延びさせる。そうすれば名前を忘れることも忘れられることもない。みんな幸せだ。


「みんな自己紹介はすんだな?住んでなくても時間だ。着陸しろよ!!ばらけずにな。」

ライアンは言う。数的にこちらは間違いなく不利で援護してくれる歩兵部隊や戦車部隊、砲兵部隊もいない。対して敵はいる。それにこちらのパイロットは疲弊していた武装も減っている。


「きついな・・・。」

ライアンの弱音をルーカスは聞いた気がした。

気のせいだろうが、ぜひとも作戦前に気分の下がる発言は控えてほしいものだ。


そう思っていると地表が見えてくる。地表といってもコロニー内に作られた人口の地面(コンクリート)が広がる民間貨物専用ドックだが。

専門用語いっぱい出てきたので後日ルビ振ります。

後日っていつ?

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