オホーツク海戦
「ウラジオ艦隊だと⁉︎」
「洋上艦影21!水中音紋8!明らかに規模が増えています」
「中央は大戦艦ソビエツキー!潜水艦は全艦新鋭のキロⅡ改です!」
このとき、アラスカ条約により全世界において原子力艦の運用は禁止されていたため、全世界で新動力潜水艦の建造が進められていた。
キロⅡはロシア海軍の初代ウォータージェット式潜水艦で、キロⅡ改はその更なる改良艦である。
「直ちに対北方面第二艦隊を出撃させろ!領海に侵入してきたら構わず攻撃だ!」
「了解!旗艦重戦艦こんごうは火器管制を開始!」
その頃 稚内第二艦隊基地
「本部より伝達!出撃許可です」
情報官の報告に、第二艦隊司令の良原大佐は笑みを浮かべた。
「きたか!波動空間支エンジン始動!舫放て!」
艦隊はこんごうの波動空間支エンジンで強制操縦される。
「全艦エンジン始動!出航準備よろしい!」
「通常艦は強制波動装甲展開!出力全開」
『こちらかすみ!本艦先行します!最大戦速!』
先発の軽巡かすみが強制操縦を離脱し、高速で領海の端へ向かった。
「まもなく八八先陣艦隊も合流します!」
しかし、第二艦隊総勢7艦と八八艦隊先陣6艦を合わせても13艦にしかならず、29隻のウラジオ艦隊とは2倍以上の差があった。
「このままでは圧倒的劣勢。だが、勝敗を決すのは火力量ではない。戦略だ」
「観測ミサイル発射用意!敵の出方を見る」
観測ミサイルは、爆薬などの代わりにカメラや手動制御装置を積んだミサイルである。
このミサイルは敵が急速接近飛翔体に対しどのような行動をとるかを知ることができる。
「P-3Cより入電!敵艦隊分散!」
「この動き•••東西3艦ずつ早期警戒艦隊とするようだな」
「これで本隊は23隻か……大して変わらんな」
「とにかく、観測ミサイルで敵の様子を探りましょう。観測ミサイル、発射!」
後方のVLS(ミサイル垂直発射システム)から3発の観測ミサイルが発射された。
「上昇完了。メインエンジンユニット切り離し。敵艦隊防空識別圏へ突入します!」
数十秒後、カメラに小さな点がいくつも映った。
しかしその直後、一つの点が巨大になり映像が途切れた。
「観測ミサイル、全機撃墜されました」
「よぉし、そのまま来い!このまま領海に入れ。既にかすみとじんげいがお前に照準を合わせているんだ」
しかし、その瞬間にレーダー画面に異変が起きた。
敵艦影前方に小さな点が無数に現れたのだ。
「て、敵艦ミサイル発射!10•••20•••30•••計35!」
このとき、超音速でミサイルが迫っていた。
「窒素装甲全開!対火力兵器防御!」
「まもなく、窒素装甲圏に到達します!」
ドガガァァ
「ウワッ!」
全弾誘爆したとはいえ、その衝撃波は凄まじかった。
重戦艦金剛(これより艦名を漢字表記とする)でさえも揺れるほどで、フリゲートの揺れは立っていられないほど。
「窒素装甲、2%喪失!」
「構うな!今のはほんの小手調べだ。主砲、エネルギー貫通弾装填!まずは邪魔な先鋒艦に風穴を開けてやる!」
「主砲塔旋回完了!仰角固定!」
「主砲、撃てッ!」
主砲から放たれた光線は空間を一瞬で飛行し、何の抵抗もなくロシア艦隊の先頭にいたフリゲート艦の装甲を貫いた。
「アドミラル・ゴルシコフ級2隻轟沈!ステレグシュチイ級1隻中破!航行不能と思われます」
「水中に感あり!潜水艦急速接近!」
「全艦回頭!魚雷発射、用意!」
「目標、魚雷発射!」
「マスカー開始!魚雷迎撃!」
迎撃魚雷が発射され、敵の魚雷群中央で接近信管にスイッチが入った。
ボォォォォ
「全弾誘爆!音響不鮮明!」
「敵潜水艦に見つかる前に前進する!青葉、全速航行!」
「ソビエツキーを攻撃する。何、大した奴でもない。総艦、全力攻撃用意!」
第二艦隊の火器管制レーダーはその9割がソビエツキーに向いた。
「全弾、撃てーッ!」
その瞬間、信じられないほど大量のミサイルが発射された。
また、金剛・青葉からはエネルギー貫通弾が連射された。
「着弾5秒前!…4!…3!…2!…1! 着弾!」
全てのミサイルが迎撃されることなく着弾したソビエツキーは爆煙に包まれた。
ロシア海軍 ウラジオストック艦隊旗艦 大戦艦ソビエツキー
「総員、衝撃に備えろ!」
ゴォォォン
「ナノシールド、32%喪失!」
「艦橋2〜3層部に損害発生!」
「機関・兵装に問題なし」
「反撃する!電熱砲撃てッ!」
「目標、損害軽微!」
「向こうも何か特殊な防御兵器を持っているのか」
「ッ!目標に高エネルギー反応!指光兵器です!」
「窒素装甲出力最大!」
ギィィィン
「直撃!窒素装甲第22層まで貫通!」
「全層貫通!直撃します!」
ドゴォォォ
CICの電灯がレッドランプに切り替わった。
「後甲板一部融解!爆発発生!」
「ダメージコントロール!機関停止!全隔壁閉鎖!」
「誘爆だけは防げ!」
「自動消火システム正常作動!」
しかし、後甲板のミサイルは全てお釈迦になってしまい戦闘継続は不可能かと思われた。
ロシア海軍 ウラジオストック艦隊旗艦 大戦艦ソビエツキー
「直撃確認。中破しました」
「やりましたね。やはり酸圧エネルギー砲を搭載して正解でした」
「あぁ。しかし、こんなものか?日本艦隊」
そんな戦場に、日本海から北上してくる艦影があった。