侵攻
あくまでも平穏な国 日本
しかしそこは能力開発の一大工業地でもあった。
憲法により防衛用兵器以外の攻撃兵器の所有が認められていない日本において、そうした能力者は既に自衛隊を超える威力を持っていた。
当然、諸列強国は警戒を強めた。しかし日本への攻撃を開始する国は無かった。
ギリギリのバランスが取れた境界を保っていたのだ。
しかし国は人によって成る。
その心理バランスが崩れた時、ミサイルは放たれる。
その時が、遂に———
キィィィィィィ
耳を裂くようなジェットエンジンの音。
それは閃光や爆炎とともに始まったNT市への侵攻を知らせる音だった。
9月23日 ロシアは特別作戦団を編成。約2個師団1大隊にもなる大規模兵力でロシアを離陸。
同日23:57 日本に対し宣戦を布告。23:59 日本国政府は特別非常事態宣言を発令。
9月24日0:02 航空自衛隊北方基地のF35戦闘機20機がスクランブル発進
しかしこの2分前、日本時間午前0時00分 日付変更とともにロシア航空宇宙防衛軍スホーイ57戦闘機及びミグ31戦闘機はレーダー波照射。空対地ミサイル計38発が発射された。
NT市の地対空迎撃網により34発のミサイル迎撃に成功。しかし残りの4発は工場へ命中。
この工場が夜間運転停止中で死傷者が1人も出なかったことが不幸中の幸いであった。
能力を使うのに、準備はいらない。この時、たまたま起きていた土垣が反転した戦闘機に対し「空気抵抗」「重力」「戦闘機」より上位にした石粒を投げて撃墜し、第二波攻撃の阻止に成功。
この後、特別作戦団は上陸隊による直接占拠へ移ったが、自衛隊の奮戦もあり、沿岸部での小規模交戦が数回起こっただけだった。
しかし当のNT市ではまた別の問題が発生していた。
「はぁ、財布ふんづけてから節約生活…… カードは3日後まで再発行されないし、今のところは値引き食品を調達するので精一杯だな」
ついでにおまけももらえたらいいなー と、心の中で付け足してから、スーパーを出る。
それにしても建物の多い街だな。いくら最新の防犯装置がついていようとこんな路地の入り組んだところで犯罪が起きても見つからんな。
と、この街の愚痴を言いながら自らもその路地に入って行く。
「そういえば、この間の爆発…… 非常事態宣言も出てたけどなんか関係あるのかねぇ。報道では詳しいこと言わないし、ネット上ではロシアの線が高まってるけどよくわからんな」
そこで奥から小さい爆発音が聞こえた。
攻撃か⁉︎しかしそれにしては音が小さすぎる。何かが壁を弾き飛ばしたような音だ。
急いで奥の方へ駆けて行くと、そこには予想外の光景があった。