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日常世界の超科学!  作者: Inu_TT
オホーツク海戦編
10/13

決着 〜総旗艦〜

「目標、復元開始!」

「やはりこの程度の術式では歯が立たんか。しかしこのペースで復元ならあの巨大なエネルギー砲が発射できるまで20分はかかるだろう。……何か霊装の一つでももってくればよかったか」

しかし、その時良原はあるものを視界に捉え ふっと息を吐いた。

「そんな必要、ないみたいだな」


戦略自衛隊中央艦隊旗艦 超戦艦大和

その中央艦橋デッキに、一人の中学生が立っていた。

土垣瑛篤。NT市霧ヶ丘能力研究所附属中学校に在籍するレベル10第1位の絶対能力者(レベルアウト)

「おーおーやってんねぇ。てか、何が『神の右席』ですかァ?あんだけでっけェ十字架立てといてまだ決着ついてねぇのかよ」


「八八艦隊…主力艦隊だ!」

「てか、あの中坊なんかムカつく…お前は倒せんのかよってんだ。奴は限りなく神に近い存在なんだぞ」

『まぁ基本はハリボテ…つーかそのルシフェルを艦に反映させただけなんだろ?大したやつでもねーじゃん』

土垣は自信満々に答えた。


ロシア艦隊

「この後に及び一体誰が⁉︎」

『よォ、色々やってくれちゃってんねェ。あ、そうそう。東側の申し訳程度に配置されていた早期警戒(ピケット)艦隊は丁寧に葬ってやったから感謝しろ』

『と言っても、主砲で一撃蒸発するような艦ばかりでしたから海の藻屑にもならなかったのですがね』

「超戦艦大和!完成していたのか…⁉︎」


「じゃ、遠慮なくやらせてもらいますかねー。『順位変更 大和を上位に、ソビエツキーを下位に』」

その時、空間の何かが変わった。

「最大戦速!突っ込め!」

物凄いスピードでソビエツキーに突っ込んだ大和は、防御魔術を突き破り艦側を擦り付けた。

「全砲門開け!空間歪波砲発射!」

ソビエツキーに放たれる零距離射撃。通常艦であれば重戦艦をも跡形なく吹き飛ばしてしまう攻撃だが、ソビエツキーは未だに耐えていた。

「あァ?何ィなんダァなんですカァ⁉︎ハハッ、面白ェな」

そして空間歪波砲を高速で撃ち出した。

「お片づけだ。10分で終わらせてやる」

『こちらCIC!空間歪波砲では歯が立ちません!例のモノを』

「クッソ面倒臭ェな。サイドキック!90°回頭ォ!」

すると大和は擦りながらも艦首をソビエツキーの土手っ腹に向けた。

しかしその瞬間、ソビエツキーは再びエネルギー砲を撃とうとした。

「チッ!予想より早いじゃねェか。長良・足柄・高雄・伊-400、援護!」

『合点承知!』

ソビエツキーの艦橋に光の束が降り注いだ。

さらに海中では伊-400から発射された電針魚雷が命中した。

「科学を、甘く見るなよ。さァて、スクラップの時間だぜェ!そんじゃ頼むわ、原子崩壊(メルトダウン)


「ラジャ!さーてやりますか。中央砲身展開、電子注入開始」

通常、電子は状況に応じて「粒子」と「波形」の二つの性質を示すが、この中間の状態をキープすることで物体にぶつかってもその場に留まり恐るべき威力で標的に叩きつけられる。

粒機波形高速砲。原子崩壊(メルトダウン)を利用した超戦艦大和の最終決戦兵器である。

これは内部に重要装備が存在しなかった艦前方に搭載された超大型砲であり、その気になれば北海道ほどの質量の物体を一瞬で蒸発させることができる。

通常であれば砲身先端の反射鏡で複雑に反射させることで一撃で艦隊を吹き飛ばす兵器なのだが、今回は逆に一極集中で押し出すことで強敵・ソビエツキーを破壊しようとしているのだ。


「まァ、なんつーかさ。こんなモン開発したヤツ、イイ感じに頭のネジ飛んでんなァ。ま、それは良いとしてルシフェル…だったっけか?華々しく散らせてやるから感謝しろォ」

その言葉に、原子崩壊(メルトダウン)は苦笑する。

「敵さんは、感謝したくないでしょうね。レベル10二人に攻撃されれば、勝ち目がないのは事実ですが」

「粒機波形高速砲発射用意!電子、中間値固定!」

砲身の手前にある調整室では粒子状の電子が次々中間値に移され、衝突を繰り返していた。

「原子崩壊開始!臨界突破!発射準備完了」

「第一砲塔接続完了!エネルギー推進弾装填、砲身冷却開始!」

第一主砲塔が調整室から伸びた筒に接続された。

ここから放たれるエネルギー推進弾によって大量の電子が強制的に押し出されるのだ。

『こちら高雄!悪いが、制止しきれん!もう間も無く発射されるぞ』

「チッ!コッチはμm単位の演算やってるッつーのにヨォ」

粒機波形高速砲最大の弱点は、その精密さから大和に搭載された電脳回路をもってしても演算を完了できないため能力者の脳内演算で補わないと発射できないことだ。

大和が全力で防御壁を展開すればエネルギー砲程度は簡単に弾けるが、粒機波形高速砲の発射準備に入れば展開は不能。展開しようとすれば粒機波形高速砲の演算は一からやり直しになる。

大戦艦級が数隻集まれば一撃を防ぐことはできるが、今から最大速で集結しても間に合わないことは明白。この場合被弾覚悟で演算を続けるか一か八か演算に割く回路を減らし、交わすことしかできない。

「最大戦速!艦首固定、後退!」

土垣が選択したのは後退で交わす作戦。

同時に魚雷も発射し、足止めを図った。

「演算終了!最終位置固定完了、いつでも!」

「撃てッー!」

同時にソビエツキーのエネルギー砲も発射された。

空中で二つの光線が衝突した。

その衝撃波は金剛を200mも吹き飛ばし、涼月に至っては宙を飛んだ。

しかしエネルギー砲といえど在粒子の集積体。粒機波形高速砲の電子によって破壊され、一撃でソビエツキーを破壊した。

しかしその代償は大きく、ソビエツキーの残骸を通り越した電子は不幸にも射線上にあった月を直撃。肉眼でも確認できるほど大きなクレーターが形成された。


「目標の消滅を確認!残艦は僚艦が始末してくれたそうです」

「まァ、こんなモンか。前線大艦隊を壊滅させたンだからよォ、そろそろ戦争終結宣言ぐらいしてほしいものだがな」

「しかし、ルシフェルほどの力の持ち主が、これだけで終わるとは思えませんね…」

「あァ?今、目の前で木っ端微塵になっただろォが」

そう言われても、原子崩壊(メルトダウン)は思考を止めない。


ソビエツキー消失地点より北北西200m 水深150m

ルシフェルは部下と共に()()()()()()()()

「脱出用に君を連れてきてよかったよ、シューラ」

「いえ、私にできることは水流操作術式くらいですから」

「しかし、まさか大和が完成していたとは… これも想定内だったというのであるか、ルシフェル」

「まぁねぇ。でもさぁ、いくら僕でも大戦艦を操る程度であの攻撃を防ぎ切れるわけないじゃん?だから、今度はあの作戦をやろうかと考えているんだよねぇ」

フム、とスタニスラフは思い当たることがないか考えた。

が、すぐにルシフェルが実行しようとしていることが分かり、ハッと息を呑んだ。

「まさか…ロシア聖教による直接侵攻を始める気であるか⁉︎正気の沙汰ではないな」

「いやいや、あーゆー危険な奴らは先に排除したほうが身のためだって。僕もそのうち上陸するし」

ルシフェルはケラケラと笑った。

「そちらの方が危険であろう!…仕方あるまい、私が先に乗り込む。一定の安全が確認されてから来るが良い」

「そこまで心配する必要はないんじゃない?『聖人』レベルだったら向こう(科学側)のレベル10に相当するらしいし。それに、使徒十字クローチェディピエトロがこっちの手の内にある限りローマもヘタに手を出せないだろうしね」

「とにかく、私が前衛で出る。奴等の力も見ておきたいモノであるしな」

「ま、ご自由にどうぞ。でもそれ以前に術者を数人、送るからね」

「霊装は使わないのであるか?」

「必要ないでしょ。あっちは能力者がたったの250万人、ミカエルが覚醒でもしない限りこっちの勝利は確定したようなもんじゃん」


「それにしてもさぁ、今回も俺の出番はなかったワケ?」

交戦海域より南3km 後方援護配置艦 重戦艦長門

この物語の主人公・佐久間涼は本編初話以降登場がなかった。

「なんつーか、不幸だよなぁ」

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