第五話
「あ゛あ゛ぁぁー」
「ごめんなさいっ」
「いだぃっ」
サキたち女の子3人の泣き叫ぶ声が庭に響いていた。
ダイキにお尻を鞭で打たれているのだ。
服の上からとはいえ、切り裂くような痛みがお尻を襲う。
当たり前だ。
正座で足を崩した時より強く打たれているのだから。
原因は2人にいじめられたサキが仕返しに押し倒して怪我をさせてしまったからだ。
いじめた2人も怪我をさせたサキも同罪と、共に罰を受けることになった。
何度も手でかばったり、姿勢を崩してしまう3人を怒鳴り付けながら、ダイキは鞭を打ち続けた。
「あ゛あ゛ぁー」
空気を切り裂く音のすぐ後に響く叫び声。
血が服に滲み始めた。
「なんの騒ぎですか?」
宝殊だ。
ダイキは手を止めて説明した。
「座りなさい」
宝殊の言葉で皆がその場に正座した。
傷ついたお尻に踵があたり、悲鳴を上げたくなるぐらい痛かった。
静まり返るなか、3人の嗚咽が響いた。
「私たちは己の力を使って周りの人たちを助けるのが仕事です。
それはここを出ても変わりません。
たとえ仕事にしなくても、その役目は変わりません。
その私たちが人をいじめたり傷つけたりすることは、決して許されません。
いいですか?
次、同じようなことがあれば、もっと辛い罰を与えます」
静かながらも厳しい口調の宝殊。
「はい」
3人は涙を流しながら返事をした。
「ソナ、薬を塗ってあげなさい」
「はい」
3人が部屋に入った後でダイキはため息をついた。
「大丈夫ですか?
ダイキ」
「はい…」
ダイキだって自分よりはるかに幼い子たちに罰を与えるなんてしたくないのだった。
その夜、村のとある家にセジはいた。
男性が居間の布団の上でうなされていた。
「あなた…」
「父上…」
妻や子どもたちが祈るようにセジの診察を見ていた。
「すぐに宝殊を呼んできなさい」
セジのその言葉は危険な状態であることを示していた。
「はいっ」
長男のユナンは慌てて馬に飛び乗って駆け出した。
宝殊の屋敷に着くと、見張りをしていたイレイリの前に土下座した。
「お願いします。
お願いします」
焦って趣旨が説明できない。
「どうしたというんですか?」
優しく尋ねるイレイリ。
「父が…
父が…」
イレイリはそれだけで察した。
「宝殊様!
宝殊様!」
「どうしたのですか?イレイリ」
宝殊の他にダイキとクナンも起きてきた。
「ユナンの父親が危ないみたいです」
「ダイキ、馬を」
イレイリの言葉に即座に宝殊が答えた。
「はい」
ダイキはすぐに馬を用意した。
クナンが宝殊の上着を持ってきて着せる。
「宝殊様、しっかり捕まってて下さい」
そう言って、ダイキは馬の腹を蹴った。
ユナンの家に着くと、宝殊はすぐに父親に力を送った。
金色の光が体を包む。
しかし、宝殊の顔が歪んだ。