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そこのけそこのけ農家が走る  作者: 気紛れ定食
3/3

情けは人の為ならずとはよく言ったもので

 出発してから大体3時間経ったところで、多分休憩用に整備したのだろう、丸太を縦に半分に切った形のベンチみたいなのが置かれた小さめの広場があったので私達は休憩している。

 出立の際、私はルークさんから餞別で貰った甘藷入り蒸しパンを、満月(みつき)は「良質な従魔用ペレット」と言うのをもしゃもしゃ食べてる。以前聞きかじった程度の知識だけど、馬って一度にたくさん食べれないから分けて食べるとか、消化を良くするために綺麗な水と一緒に与えるとか聞いたけれど、あくまで馬系のモンスターだからそこまで神経質にならなくていいんだとか。ゲームだね。

 それはさておき、ここまでの道中で何度か戦闘をしたので少しレベルも上がったから、ステータスの確認もしたい。諸々の設定いじっていなかったので、そこもいじるつもりだ。

 思考操作で設定画面を呼び出す。……これ学校の授業でも使えたらいいのになぁ。

 満月の食事の邪魔にならない程度に首筋を撫でながら、まずは設定をいじる。忘れそうな所なんでね。

 五感制限は、年齢制限クリアしてるし戦闘中でも問題無かったからそのままMax。補足しておくと、フィールドに出た時に五感制限がMaxになっていると警告は出た。けど、どんなものか感じてみたかったのでそのままにしてたのだ。マ、Maxとは言っても現実の何十分の一とかそんななので、現実へのフィードバックに不安は無い。

 撮影関係は全部オフ&拒否。この辺に他プレイヤーは居ないだろうけど今後どうなるか分からないし、余計なトラブルは避けたいからね。よくある問題らしいし。他は、一部UIの非表示、プレイヤーネーム及び従魔の名前を他プレイヤーに対して非表示、他プレイヤーのネーム非表示、運営とフレンド以外からの通知は全オフ……ほぼ全オフだね。システムメッセージと、現実の時間の表記と従魔のHPくらいか?オンになってるの。視界がスッキリして、よりリアルになった。

 後は、戦闘関係か。モーションアシストは理想の動きになれるんだけど、自分が持つ癖のせいか、違和感が拭えない。ので、無しに。魔術の方は、火なら火、水なら水に対応したマークを描き上げて発動するものだけど、今のところは簡単な形だし、暗記は得意な方なのでこれもオフで良いか。忘れたり、ただ確認したい時にはヘルプやスキル詳細で見れるしね。

 では、お次はステータスの確認をば。設定画面を閉じて、今度はステータス画面を出す。

 で、今はどうなってるかな、と。


■■ステータス■■

プレイヤーネーム:スノー Lv.8

性別:女

メインジョブ:農家

サブジョブ:従魔士

▽従魔

 満月(ダークホース・牝)/ナデシコ(ハニーバット・雌)/-(-)


HP:3071/3071

MP:1247/1247


STR─44

VIT─51

INT─22

MID─39

AGI─24

DEX─44

■■■■■■■■ステータスポイント:0pt


 あまり戦闘はしなかったわりに7もレベル上がったのは、この辺て経験値がちょっとおいしいのかな?それか新規相手のブーストとか?マ、とりあえず、後2回レベルアップしたらステータスポイントもらえるし、そうしたらAGIに振ろうかな。

「ちー?」

「おや、起きたのか?」

「ちぃ!」

 フードに入って寝ていた小さなコウモリ、ナデシコが起きたようだ。

 お分かりいただけるように、3体までしか連れて行けないと言われたが早々に新しい仲間が加わりました。ハイ。


 彼女との出会いは1時間ほど前だ。

 満月と共に動きやスキルの威力や操作確認なんかをしながら進んでいると、手入れはされていないがそれでも大きく立派な花畑を見つけた。

「おー、こりゃすごい。」

「ぶるる。」

「そうだなぁ、ここでご飯食べたら良さそうな、お?」

 花畑を眺めていると道中で何度か遭遇したハチ型のモンスター、名称ワーカービー3体が小さいなにかを襲っている様子が見えた。花に埋もれているようで分かりにくかったけれど、襲われている方も抵抗しているようだった。けれど、ビーに歯が立たないらしく身体をばたつかせるしかできていない様だった。

「弱肉強食って言えればいいんだけど……。うん。私達が手を出しても、それもまた弱肉強食だよね。」

 という事で、ビー達にバックアタックよろしく私達は襲い掛かり、経験値として美味しく頂いた。ご馳走様でした。

「ありがとう、ビー達。経験値とドロップアイテムは無駄にしない……さて、襲われてた君はっと。」

「ち、ちぃ……。」

 光の粒子となって消えたビー達へ合掌し終わり、襲われていた相手、コウモリ型のモンスターを見ると、あちこち怪我をしていてだいぶ消耗しているようだった。助けたのなら最後まで。そう思い、傷薬と体力回復薬を与えた。初めは怯えて手当てを受けようしなかったけれど、助けようとしている事が分かったようで、少しすれば大人しく手当てを受けてくれるようになった。

「ちぃっ。」

「おっと、よしよし。元気になったね。」

 手当てを終えると、よほど嬉しかったのか私に勢いよく飛びついて来た。可愛い。

「ちぃっ、ちぃっ!」

「ん?この飴玉みたいなのは、お礼?」

「ちぃ!」

 コウモリちゃんは私の膝に降りると、どこから出したのか、琥珀色の飴玉みたいなのを差し出してきた。お礼のつもりなのかと思い訊ねてみると、そうらしい。

「うーん、気持ちだけいただくよ。とてもキレイだし、君にとって大事な物なんじゃない?」

「ちぃ……。」

「ぶるる。」

「ちー……。」

「ヴッ。」

 マスコット的な愛らしさのコウモリちゃんが、悲しそうに大きな目をうるうるさせて見つめてくるのってずるくない??満月も非難するように見つめてくるから余計ずるいと思います!

「えー、あー、うーん……。じゃ、じゃあ、代わりにこうしよう!君、私達の仲間にならない?」

「ぶるるん!」

「ちぃ?」

 物は受け取れないのに、これは卑怯な提案だと思った。けれど、これ以外の良い案が浮かばなかったんだ。付け加えるなら「助けたのなら最後まで」と、さっき思ったのもある。満月も「それは良い!」って感じでいるから、仲間にするのは問題無いだろう。

「どうだろう?無理にとは言えないけれど……。」

「ちぃ!ちぃ!」

「おぉっと、良いって事かな?」

「ちぃっ!」

「ふふ、落ち着きよ。じゃあ、早速契約しよう。<アグリメント>!」

 スキル<獣魔術>にある<アグリメント>。これは獣魔術の基礎術の1つで、使用し成功すると対象モンスターと契約が出来るというものだ。こういうのは定番の<テイム>と思ったけれど、こっちは調教スキルで別らしい。躾けかな。

 満月の時は名付けだけで終わったから、実際にこのスキルを使うのは初めてだ。少し緊張しながらスキルを発動させると、私とコウモリちゃんの間に白金に輝く魔法陣が浮かび上がった。そこへコウモリちゃんが翼で触れると、

<ハニーバットとの契約が成立しました。>

<ハニーバットへ名付けを行ってください。>

システムメッセージが表示された。本来はこうなるのか。

 ふむ。ハニーバットっていう種族なのか。このゲーム特有のモンスターなのかな?マァ、今はそれは横に置いておいて……。名前は何が良いかな。花畑で出会ったのも何かの縁だろうから、花の名前が良い。そういえば、この子の全体の色って前に見た着物の襲色の撫子の配色に似てる。決まった。

「ナデシコ。君の名前は今日からナデシコだ。よろしくね。」

<ハニーバットの名付けが完了しました。>

<「ナデシコ」が従魔に加わりました。連れて歩ける従魔は残り1体です。>

「ちちぃ!」

「ぶるるんっ。」

 こうしてコウモリちゃん改めナデシコと契約したのでした。


 回想終了。

 で、だ。道中で戦闘した際に感じたのは満月がスピードアタッカーで、ナデシコは偵察兼デバッファーと言う所だろうか。ただ、満月が今は特殊状態異常「幼体」だから、これが外れたら少し変わるかもしれない。ちなみに、「幼体」というのは言葉そのままだ。成体では無いため、表記ステータスより半減した能力値になるのに加え、使用可能スキルも制限がかかるそうだ。

 私は私で現状は近・中距離アタッカーと言ったところか。今のところ、お互いに足を引っ張り合う事にはなっていないけれど、連携できるように練習して行こうかな。

「まー、あれこれ予定立てるのは村に着いてからだわね。さ、そろそろ出発しようか。」

「ひひんっ!」

「ちー!」

 元気なお返事にほっこりする。まだ仔馬なのと、小動物だから可愛らしさ増し増しで私は幸せです。残りの道程も張り切っていくぞー!

ナデシコの色は、襲色目(重ね着のかさね色目)で表紅、裏紫の「撫子」に主に入るカラーリングに緑が少し入るイメージ。

体高は20cmに届くか届かないかくらい。

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