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そこのけそこのけ農家が走る  作者: 気紛れ定食
1/3

始まりは夜

別所でも上げたのですが、こちらでも分けて投稿。予定。好きな設定を好きに。

 私、須能間(すのま) 新芽(わかば)は今、2か月ほど前に発売されたVRMMORPG「The dawn(ザ ドゥーン) of (オブ) the era(ジ イラ)」、通称「DOE」を自室のベッドに置き、にらめっこをしている。

 「DOE」とは、今話題のゲームだ。

 よくあるファンタジーの世界観だが、ラグやハリボテ感が殆どない、美しく広大なオープンワールドに、多彩なジョブにスキル、自由度の高い操作なんかがウリらしい。NPCのAIも優秀らしく、独自の思考ルーチンを持ち、突発クエストも起こるとか。

 ゲーム会社側の実験的な要素がふんだんに入っていると風の噂で聞いているが、マァともかく、クラスの中でこのゲームをやっているかいないかで、発売から2か月経った今でも話題の中心になっている位、熱いトレンドの1つだ。

 購入しようにも品薄状態で、お店に行っても入荷待ちがほとんどだ。それがなぜ私の目の前にあるのか?それは、お父さんに原因がある。

 一昨日の夜の事だ。

 その日、お父さんは会社の付き合いでそれなりに大きな飲み会に参加していた。その最中、今時珍しいが、ビンゴ大会が開催されたらしい。そしてお父さんはなんと、最初からリーチになり、且つ最初の玉に書かれていた数字でビンゴになるというミラクルを起こしたのだ。で、景品の中に最新の完全没入型VR専用マシンとセットになって「DOE」があり、交換して来たと言う。

「わかちゃん、最近退屈そうだったし、良い息抜きになるかなって思ってね。それにこれ話題のゲームだろう?だからこれ貰ってきてみたんだ。」

 と、お父さん。そうして私の手にコレが渡って来た訳である。

 事実、というかなんというか、好きな漫画が打ち切りになったとか、好きなラノベがコミカライズしたら原作レイプされてたとか、政治経済の小テストで赤点ギリギリだったとか、好きな漫画の実写がクソ過ぎたとか……、細かい嫌な事が重なった結果、最近まで無気力になっていたのだ。今はもう改善されているけど、それはそれ。

「……うん、どうせだ。楽しむか。」

 2日ほど悩んで、宿題と復習を終えた金曜の夜現在、私はゲームをプレイしてみることを決めた。

 VRゲームはほんの少ししか触ったことが無く、テーブルゲームかコントローラーを握って画面を操作する物、万歩計サイズの簡単な育成ゲームくらいしか経験は無いから少し手を出すか悩んだのだが、私以上にゲームをしたことが無いという従兄がこれをやっていると昨夜聞いたのだ。あの人がやれるなら私も問題無くやれるだろうという、単純な決定。

 さて、明日明後日は休日だ。寝るのが少し遅くなっても問題は無いし、朝もゆっくりで良いとなれば、早速始めてみよう。

 VRマシンの初期設定は貰ったその日のうちに設定だけはしておいたから、電源を入れれば良い状態だ。ゲームカードを差し込んで、枕型の本体に頭と背中の半ばまでを預けたら、後は付属のアイマスク型VRゴーグルを付けてヴァーチャル空間へパスを音声入力してインするだけ。

「パスワード、0822LeeF。」

 余談だが、数字は私の誕生日では無く、ロングセラーゲームのシリーズに登場するモンスターの図鑑ナンバーだったりする。後、リメイクの女の子可愛いよね。パスの話は以上。

 パスが通り、スゥっと意識が沈む感覚の後、私はヴァーチャル空間の簡素なホームに入る。すると、「このゲームを遊びますか?」という文字と共にゲームのタイトルロゴが目の前に出される。それに迷わず「はい」と答えれば、

「「The dawn of the era」を開始します。」

と言う音声と共に、私はゲームの新規データ作成の空間へと光に包まれ飛ばされた。


 反射で瞑っていた目を開けると、窓から光は入ってくるが全体的に暗い、石を積み上げて出来た部屋で、私はその部屋に置かれている簡易ベッドに座った状態でいた。パッと部屋の中を見渡してみる。綺麗にしてあるが、簡素な木で出来たイスとテーブルが部屋の中央にあり、少し古臭いクローゼットと、その横に大きな姿見がベッドの反対側の壁に置かれている。

「はー、話には聞いてたけど、実際に体験してみると不思議な感じだなぁ。」

 大抵は宇宙空間みたいな所や、神殿、なんか不思議な空間などでキャラクリする事が多いが、このゲームだと、とある砦の一室で行われる。

 理由は、まず、このゲームのプレイヤーの設定は「様々な世界を渡り歩く存在」であり、その事から「渡り人」と呼ばれる。ちなみに、様々な世界=他のゲームの事らしい。

 「渡り人」がやって来た今回の世界「ウォアレシア」は、あちこちで争いが長く続いていた世界だ。それが今、一時的に停戦となっていてるが、殆どの国が長く起きていた争いで疲弊している状態。

 そんな中、ある日たくさんの「渡り人」が現れるようになった。各国に残る伝承で、「渡り人」はほぼ不死身と言える体を持ち、この世界の人類と比べて成長やスキルの覚えが早い。さらに、繁栄をもたらす事もあれば、争いを起こす事もある存在とされている。

 そんな存在を見逃すなんてお偉方はしない。国々は良い面だけを求め、「渡り人」を喜んで迎えている。疲弊した国を良くするため、減った戦力のため、他国への牽制のため……理由は色々有るが、自国へ迎え入れようと躍起になっているとか。

 そして、この部屋は新しくやって来た「渡り人」を保護及び国に迎え入れる前に、自身がどんな「渡り人」なのか情報を整理して記入する場所……という設定らしい。by従兄。

 簡潔に言えば、この部屋でアバター作成と初期装備、ジョブの設定など、キャラクリを済ませろと言う話だ。後、所属する事になる国。

 マ、初期は本当の国民や軍属とかになる訳ではないので、所属国は後々変えることも可能らしい。気楽に選んで良い所だね。

 ちなみに、ベッドはアバター作成やジョブやスキル構成に時間をかける人が中には居るから、途中休憩やログアウトをする為にあるそう。正直そこまで時間かけられる人ってすごいと思う。

 感心するのもそこそこにして、まずは何から手を付けようか……。

 テーブルに近付いてみると、その上には本が数冊と羊皮紙が1枚置かれている。本はそれぞれ「ジョブ」「種族」「スキル」が載っていて、羊皮紙はそれらの項目に加えてステータスやプレイヤーネームなどを記入する為のものみたいだ。

 とりあえずプレイヤーネームは「スノー」で決めてるからササっと書いておこう。雪のSnowじゃなく、苗字のふた文字からだったりする。なんにせよ、よくあるネームだけど、名前の被りは気にしなくて良い設定だから、色々考えなくて楽だ。

 お次は、そうだな……ジョブを決めるか。

 ゲームをやる目的は様々だが、私はぶっちゃけ攻略だのPvPだのをする気はない。じゃあ何をするんだと言ったら、ネットマナー及びゲームマナーを守って、自由気ままにのんびり遊ぶだけだ。暇つぶしが一番の理由だしね。

 しかし、フィールド上のモンスターとか、クエスト、イベントなどで回避出来ない戦闘とかあるから、絶対に戦わないと言う事はできない。なンで、ある程度戦えるようにしておけばどんなジョブで選ぼうと問題無いだろう。

 さて、そのジョブだが、メインジョブとサブジョブがある。

 設定する事で色々違いやらなんやらあるそうだけど、レベルアップした時にステータスに大きく影響が出るのがメイン、サブは少し出るって事を分かっていれば良い。

 それを踏まえて、本来なら色々バランスを考えて選ぶ所だが……多いんだよな、ジョブ。ザッと見、100は軽く超えてる。うーん、誰かとやるわけでも無し。どうせだし面白い事になりそうだから、適当にページを開いて、そこにあるジョブを選択しよう。

 面白い組み合わせになるかもだし、早速やってみよ。

 てことで、ステータスへの影響より面白味をとって、パラパラ適当に本を2回開いた結果、メインジョブ「農家」、サブジョブ「従魔士」となりました。……魔獣の畜産?

 気になるけど、次。スキル選ぶか。

 コレもまた多いけど、選んだジョブのオススメスキルと専用スキルはパッと開ける様になってるな。楽だ。

 スキルを取得する為のスキルポイントは30pt。結構多く感じるけど、スキルレベルが上がると1pt貰えるが、上位スキルやスキルの進化なんかで大量に消費する事があるらしいから、多少は残しておきたい欲。

 救済とはまた少し違うけど、一定数の行動や経験をするとポイントを消費せず手に入れる事も可能だそうだから、それもある程度踏まえて取得しようかな。


■スキル欄■

<緑の手 Lv.1>

─ジョブ:農家専用スキル。アクティブスキル。使用すると植物の品質を少し上げる事がある。

<赤い手 Lv.1>

─ジョブ:農家専用スキル。アクティブスキル。使用すると植物を枯らす事が出来る。

<獣魔術 Lv.1>

─ジョブ:従魔士専用スキル。アクティブスキル。獣魔術を行使できる。

<鎌術 Lv.1>

─アクティブスキル。武器種:鎌を使用した戦闘スキル。

<水魔術 Lv.1>

─アクティブスキル。水の魔術を行使するためのスキル。

<火魔術 Lv.1>

─アクティブスキル。火の魔術を行使するためのスキル。

<無属性魔術 Lv.1>

─アクティブスキル。どの魔術にも当て嵌まらない微力な魔術。別名・生活魔術。

<植物鑑定 Lv.1>

─アクティブスキル。植物の鑑定が出来る。レベルが上がると、より詳細な情報を得られる。

<動物鑑定 Lv.1>

─アクティブスキル。動物の鑑定が出来る。レベルが上がると、より詳細な情報を得られる。

<採取 Lv.1>

─アクティブスキル。採取時に高確率で品質を損なわず採取物を入手出来る。

<農家の心得>

─パッシブスキル。耕作、畜産などの関連スキルの効果の上昇。

■■■■■スキルポイント:5pt


 とりあえず、コレで。

 残りのスキルポイントは4pt。考えてたより多く取っちゃった。武器のスキルで<鎌術>選んだのは、農家って鍬とか鎌のイメージがあるから。耕運機のイメージもあるけど、流石に無いしね。てか、「農家」って付いてるのに<農家の心得>ってジョブ専用じゃ無いのか……。マ、いっか。

 はい、じゃ、ジョブ専用スキルは3個、必要そうなのと使えそうだと思ったスキル8個の計11個を早速記入。そういえば、メインスキルは20個セット出来て、それを超えると控えに自動で行く仕様らしい。増えたら適宜変えなきゃだ。

 次。スキルも決めたし、何にしよ。……そういえば、種族決めて無かったな。アバター作成にも関係するし、ちゃちゃっと決めるか。何があるんかな。

 「種族」と書かれた本を開いてみると、以下の種族が載っていた。


■種族■

ピーヴォル

──ウォアレシアで一番多く、各地に広く住む種族。ステータスは平均的に伸びる。

ピーフェル

──耳が長く、長命で知られる種族。INTとDEXが上がり易く、VITが上がりにくい。

ピーグラン

──小柄だが屈強な身体を持つ種族。STRとVITが上がり易く、INTが上がりにくい。

ピオニル

──猫や犬、魚などの姿を持つ種族の総称。種族ごとに異なるが、基本的にSTRとAGIが上がり易く、MIDが上がりにくい傾向にある。

ピーオート

──基本的に体躯が大きく、角や鋭い牙を有する種族。稀に鱗を持つ者もいる。STRとMIDが上がり易く、DEXが上がりにく。

■■■■


 上からそれぞれ、いわゆる「ヒューマン」「エルフ」「ドワーフ」「獣人」、最後は「オーガ」とか「ドラゴニュート」って言われるヤツかな?説明から多分、その辺。分かり易い呼び方にしないのって、ちょっとひねくれてんのかね。個人的には嫌いじゃないゼ。

 マ、今は関係無いし、置いておこう。

 やって面白そうなのは「ピオニル」かなぁ。獣人だけじゃなくて、人魚やハーピーみたいな鳥人なんかも「ピオニル」に含まれているみたい。てか、デフォルトの姿を確認できるんだけど、その姿が珍しい。よく見かける獣人って普通の人間の身体に獣耳と尻尾なのに、加減は出来るようだけど、殆ど二足歩行の犬とか猫などのまんま。獣度増し増しが好きなケモナーが開発陣に居ると見た。

 こういうの好き……気になる……モグラもあるじゃん……。うーん、しかし……悩ましい、けど、「ピーヴォル」にしよう。

 なぜか?やっては面白そうだが自分だと思うと萌えないから。以上。他の種族もそういう理由で却下。

 ちゃちゃっと種族欄に「ピーヴォル」と記入したら姿見がちょっと光ったようだけど、問題なさそうだから放置。

 羊皮紙の記入欄も後は所属国とステータスか。この2つは最後にしよう。

 次、記入は一旦やめて、アバター作成にしましょうか。てことでさっき光った姿見の前に移動。

「アバター作成を開始しますか?」

「オッ、はい。」

 さっきまで何も無かったのに、突然のガイド音声さんは驚く。心臓弱い人には不親切では?

 さて、姿見を見ると、やっぱりそこには現実世界の私が簡素な服を纏った姿で映っている。さっき光ったのは、種族を決めた事で元のデータに反映されたからかね?ピーヴォルだから変化分からんね。

 余談だが、今の学生は病気療養中などを除いて、現実で登校できない状態でもネット登校できるように、必ず自分の身体データ及びそれを元に出来たアバターのデータを持っている。なので、私も他の人がやっている様に、そのデータをゲームに読み込ませた。学生だと毎年必ずデータの更新出来るから、専門店でデータ取る手間が省けて良いわ。ちなみに、ネット授業に使うVRマシンは学校からの貸与になるからゲームは出来ない仕様。当たり前だわな。

 さて、話は目の前の事に戻して、どうしようかな。

 VRゲームで現実の自分の姿そのままを使用する事はゲーム規約条例で禁止されている。正確に言うと、容姿はそのままでの使用は可能ではある。がしかし、その場合には髪色と目の色、肌の色の3項目は必ず大きく変更しなくちゃならない。面倒だけど、規制が緩かった頃に問題が起きたから出来たモノだ。ある程度の自衛は大事。

 マ、とかなんとか説明したが、私は色々いじる気満々なので気にしない。サクサク行こう。

 3分でクッキングみたいには終わらなかったが、完成。

 身長はそのまま170cm。肌色も変更なし。体つきは、気持ち筋肉質に。細マッチョでは無いのがミソ。

 髪は、肩に付くか付かないかくらいのストレートのミディアムショートに。で、髪色は単一色にしようと思ってたんだけれど、インナーカラー設定できる事に気付いたので、外側は濃紺ぽい色で、インナーカラーをブルーアワーって言う空みたいな色にした。ついでにエフェクトも追加出来たから、控えめな星の瞬きみたいなエフェクトをインナーカラーに付けた。現実じゃ出来ない髪で面白い。

 眼はちょっとつり目気味にして、青みが少し強い月白ぽい目の色にしてみた。

 全体的に青多め。好きな色多めにしちゃうよね。一番初めに青いクレヨンが無くなる子どもです。

「アバター作成を完了しますか?完了されますと、それ以降、アバターの編集•変更はできません。」

「ア、はい。完了します。」

 数分いじらなかったら声かける仕様なのかな?ずっと完成までいじってたから分からん。なんにせよ、完成なので「はい」以外返答の仕様がないからそう返す。

「了承しました。しばらく姿見の前でお待ちください。

 プレイヤー「スノー」の新規作成アバターを1件読み込んでいます。……読み込みが完了しました。続いて、デフォルトプレイヤーアバターから新規作成されたアバターに置換します。……置換作業が完了しました。

 お待たせ致しました。アバターの変更が完了しました。

 作成したアバターに違和感、問題などが生じた場合、GMコールもしくはお客様サポートセンターまでご連絡ください。それでは、「The dawn of the era」を引き続きお楽しみください。」

 一瞬の視界のブレが収まると、視界の端に映る髪が姿見に映る物と同じになっていた。おお、設定通り控えめに星もしっかり瞬いてる。

 少しその場でラジオ体操第一をして動作確認。うん、今のところ問題無いな。

 お次は初期装備選びだ。

 横へ一歩ずれて、クローゼットを開けてみる。と、クローゼットの中身は何も無かった。あれ?と思ったのはほんの少し。すぐに私の目線と同じところに「初期選択可能装備一覧」と言う画面が出て来た。あと、プレビュー画面。まあ、そうか。初期武器も選ぶんだもんね。こン中に武器がみっちり入ってたらそれはそれで怖い。仕方ない。仕方ないけど、ちょっとワクワク感を返して。

 愚痴っても仕方ないのでワクワクさんには不貞寝してもらって、選びましょか。

 防具は、布とか革のかな。それ系列でザーッと探してみたら上衣で「質素なローブ」と「質素な作務衣」というドチャクソ好みの装備発見。ローブは深目のフード付きと言うのがポイント高い。「質素な作務衣」はただ単純に私が作務衣が好き。迷う。ローブがノースリーブだし、作務衣を上に重ね着できないかな……出来たわ。できんだ。

 一応、注意が出たのだけど、重ね着した場合は上に着ているもの含めて2つまでしか装備の効果を得られないそうだ。何枚も着て効果出たら着こみそうだもんなぁ。行動にマイナス補正付きそうだが。

 とりあえず、気に入ったこの2つは決定。残りもサクッと決定。選んだのは、「黒革のロンググローブ」、「山袴」、「コンバットブーツ」、「タクティカルバッグ」。

 元は争ってましたよ感が装備にじわっと滲む。ウン。ハイ。武器選びましょうかねー。

 とは言っても、スキルから分かるように決まってる。どんな形の物にするかだけだね。

 で、「()見ずの大鎌」を選びました。後、魔法使う時って杖使うイメージだから、「ストロベリーキャンドルのワンド」と言うのも選んだ。

 ワンドはクローバーの装飾が少しされてて、蓮華みたいに加工された小さめの宝石が先に付いててシンプルな作りながら可愛いかったので。鎌は名前に惹かれて決めました。でも銀色の柄に、艶消しされた黒い刃は、こう、シンプルだけど、疼くモノがあるね。一度発症すると、治らない不治の病め。

 ともかく、プレビューでも良い感じになったし、これで決定。

「おぉ、実物?も良いね。」

 決定すると一瞬で装備が変わった。鎌の刃は鞘に収まった状態のを片腕に抱え、ワンドは腰に差した状態だ。メイン武器になるからかな。不思議な事に余り邪魔には感じないし、このままにしておこ。

 そんでは、記入作業に戻りまして、所属国決めちゃおうかな。

 所属国記入欄に触れると、大まかな地図と国の簡易説明が出て来た。説明するの無いなと思ったらここか。ふむ、選べるのは以下の5か国の内のどこかか。


■■■■

・グランフォレール王国

──王都・グラングラスを中心に、自然の溢れる国。森林資源や農作物が豊かな王政国家。食料や安心して飲める水が安定して入手でき、農業•畜産業が発達している。ファルア大森林とアニ・アルフェス山脈という自然要塞を有している。

・アラ・ヘスト共和国

──首都・エルエスを中心に、加工や装飾などを手掛ける職人が多く住む国。小国が集まり、相互補助をする事で成り立っている国。「アラ・ヘスト」は「偉大なるヘスト」の意。岩山や荒野など、作物を育てるのに適した土地が殆ど無いが、鉱物や貴金属が豊富に採取されている。

・マグラガンデ帝国

──帝都・アマーレを中心に、多くの商人が行き交う、大きな港町を保有する帝政国家。主に海産物や造船技術、他国との貿易で成り立っている。さらに大規模な娯楽都市を有しているため、マグラガンデ帝国へ様々な夢を見てやってくる者が多く居る。

・エッヘルフェーン連合国

──首都・アニアを中心に、海岸を有し、大きな山々に囲まれた、主に林業が盛んな連合国。種々様々な少数民族や力の弱い種族などが集まり出来た国なため、生活様式が場所により大きく異なる。

・神聖ベネン国

──聖都・ハイラベネンを中心に、ベネン教を国教とする排他的な宗教国。他国とは大きな谷と砂漠で隔てているため、詳細な情報は少ない。

■■■■


 なんか、明らかに怪しい国がありますね?設定上可能とはいえ、排他的なのに所属出来るんだ……野暮用でも、他国に移動出来なさそう。

 うーん、消去法というか、農家になったし「グランフォレール王国」が相性良さそう。早速記入。

「所属国が「グランフォレール王国」となりました。初期スポーンの砦を選んでください。」

「ふぁっ!?」

 突然のアナウンスはこの際いい。え、砦?初期スポーンって決まってんじゃないのっ?てっきり首都とか始まりの町の砦だと思ってたのに、えぇ……。あ、首都近くも選べる……。初期スポーンに設定されてる砦とその付近は定期的に兵士が視回ってるから低レベル帯でも安全と。ほう……。施設や物資はやっぱり首都付近が良いんだろうなぁ。でも、人も多いんだろうなぁ……。よし、あえて首都から一番遠い砦にしよう。はい、ポチッとォ!

「初期スポーン地点が登録されました。登録地域のデータを反映します。」

「っわ、くら、くもない。月キレー。」

 現実逃避と言うなかれ。ほほーん、先に所属国と初期スポーン地点を決めてたら、この世界の時間経過見れたかもなのか。めっちゃくちゃ綺麗な満月を見ながらできたかもしれないのに、惜しい事をした。

 でも、景色がこれだけ綺麗なのを知れて、それだけでも良かったかもしれない。これからこの月だけじゃなくて、森とか山とか、普段見れない風景を見れるんだからね。お父さん、ありがとう。

 うん、気分上がった。最後のステータスに着手しますか。

 ステータスを書く欄は、現在こうなってる。


■■■■

Lv.1

HP:1000/1000

MP:1000/1000


STR─10

VIT─10

INT─10

MID─10

AGI─10

DEX─10

■■■■ステータスポイント:100pt


 特出したのは無いね。ピーヴォルだからかな。でも、ステータスポイントが100もあるから、極振りしたら一点特化にもなれるんだね。しないけど。ピーキーなのに手を出すのは流石にね。

 そういえば、装備分は出てないんだなぁ。……アそっか、あくまでこれは素のステータスを書くところなのね。なるほど把握。

 で、サクッと、こう振りました。


■■■■

Lv.1

HP:1635/1635

MP:1205/1205


STR─30(+20)

VIT─25(+15)

INT─20(+10)

MID─25(+15)

AGI─20(+10)

DEX─40(+30)

■■■■ステータスポイント:0pt


 農家って器用そうなイメージだからDexに多めに振ってみた。後、従魔で長い毛持ってる子を仲間にした時、毛づくろいするのに上手くできるように。

 ちなみに、ステータスポイントはプレイヤーレベルが10上がる毎に5pt貰えるらしい。少なく感じるけど、レベルアップ時にランダムで振られるステータスポイントとジョブで自動的に振られるステータスポイントがあるから、ちょうど良いのかもしれない。他にもクエスト報酬とか特殊な報酬でポイントを得る機会があるとか。

 マ、それは追々。ひとまず、これで記入も完了だ。……完了したけど、これこのまま出ていいのかな?

「ぇあっはいどうぞ!」

 そうぼやっと思っていたら、突然コンコン、と部屋の扉が叩かれた。思わず返事しちゃったけど、え、なに、ホラー展開じゃないよね?

「失礼します。早くから失礼かと思ったんですが、扉の隙間から明かりが見えたもので……。」

 ギッと軽くきしむ音を立て扉が開かれると、古いながらもちゃんと手入れされた鎧を着用した、純朴そうな青年が入室してきた。鎧よりオーバーオールの方が似合いそうだな……。てか、気付いたら空が白けてきてる!満月、キレイって思ってたのに……。朝だったの……。

「すみません、早く書いてしまおうと思ってこんな時間まで……。」

「そうでしたか。真面目な方なんですね。どうです?どこか記入に不安な所はありませんか?」

 決して真面目では無いな!結構、ノリで書いてる所あるよ!むしろ貴方の方が真面目な説。

 しかし、書き終わって、それもそんな質問をしてくるって事は、記入し終わったらやってくるようになってるのかもな。

「自分で確認した限りですが、大丈夫です。ありがとうございます。」

「いえ、仕事の内ですから。ところで、今からあなたの身分証明カードを作りますか?それとも、少しお休みになりますか?」

 身分証明カードがプレイヤーカードなんだろう。今日は初日って言うのもあるけど、夜更かしする気満々なのでこのまま作る。

「そろそろ陽も出る時間みたいですし、直ぐに立てるよう、作っていただいても?」

「分かりました。それでは、カードを作る部屋まで案内いたしますね。」

「はい、お願いします。……あ、そうだ、まだ名乗っていませんでしたね。私はスノーと言います。」

「ッア、これは失礼しましたっ。ワタシの名前は、今回あなたの担当をさせていただきます、ルークと言います。よろしくお願いします。」

 今回っていう事は、人によって担当違うのかな?なんにしろ、まだ会って間もないけど、この人になって良かったと思う自分が居る。わたわたしてる姿にほっこりする。

 青年改めルークの後に続いて部屋を出る。

 まだゲームのスタート地点には立っていないけど、なんだか、だんだんと気分が高揚して来た。こんな感覚、久しぶりだ。お父さんに感謝。

「さあ、こちらです。足元は少し悪いので、気を付けてくださいね。」

「わかりました。」

 まずはスタート地点に立つ最後の準備を終えなくてはね。

 私はそう思いながら、少し雑然とした印象を与える部屋へ入った。

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