秋の風が鳴いている
秋の風が鳴いている。
きっとそれは誰にも見えない空の向こうで。
秋の風が鳴いている。
綺麗な声で鳴いている。
思わず目を閉じてしまうくらい綺麗な声だった。
ぼくはここで鳴いている。
羽を広げ鳴いている。
空を飛ぼうとしたけれど、綺麗な声で思わず止まった。
秋の風が鳴いている。
誰かの声が聞こえている。
ぼくにとってはどちらも違いはないけれど。
誰かがいつも鳴いている。
詰まりながら鳴いている。
ぼくにはその声の意味が分からないけれど。
ぼくはここで鳴いている。
たった一人で鳴いている。
秋の風に身を委ねて、誰かと一緒に鳴いている。